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私のマニは此処にある  作者: 山鳥
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(何でこうなったのかしら?)


ブライダルサロン……もといオーダーメイドドレスサロンからの帰り道

納得いかない顔を隠す事無く本日の主役だったはずの笠井愛華(かさいまなか)は不貞腐れていた


先程まで隣に居たはずの夫の雅也(まさや)は仕事が残っていると言って早々に解散したので現在自宅まで独りで帰っている

こういう日は、タクシーを捕まえたくても捕まらなかったりするので2重にイライラする


(大体……こんな日に雅也(まさや)さんはコソコソと何をしているのかしら?まぁ……私も言えない事があるから今は見極めの時期だけどね)


笠井愛華(かさいまなか)は正直言って可愛い

その容姿、行動、話し方まで全てが愛され要素満載の女性である

年齢も若く、現在23歳

思ったより早く母親になる事となってしまったが

会社の先輩で御曹司の相川雅也(あいかわまさや)は自分の相手に相応しいと早々に狙いをつけていた


夫の雅也(まさや)には7年付き合っていた女性がいた

夫の同期が話していたが

可もなく不可もなくといった感じの大人しいタイプだったらしい

コッソリ夫の書斎で写真を見たが言葉通りの感じだったと記憶している

まぁ、最終的に選んだのが自分だったので記憶に残す必要を感じなかったので正直な所よく覚えていない


(地味な女だから簡単に捨てられるのよ)


フンと一息ついてもう一度高く手を挙げるとやっと1台のタクシーが目の前に止まった

イライラしながら目的地である自宅の住所を告げると座席に深く腰掛ける


そもそもこの結婚はまだ公になっていない

正確には、入籍もまだしていない

現在、愛華(まなか)は夫……雅也(まさや)の家に転がり込んでいる状態なのだ

理由は簡単で、彼の母親が反対しているため


(あの義母さんも難儀な性格よねぇ……子供を産むなら若い方が断然良いに決まっているじゃない)


愛華(まなか)は今までの人生で大きな挫折をしたことも無ければ

大きな拒絶を受けた事も無かった

皆、愛華(まなか)が微笑めばイチコロだったのだ

それは男でも女でも関係なく

全てが簡単で苦労したことが無かった


親も兄妹も親戚も学校の友達も先生も先輩も……


人生ってチョロいとすら思いながら生きてきたのだ

そして、夫となる雅也(まさや)も例外ではなかった


最初こそ「彼女に悪いから」と言いながら断っていたが

飲み会の帰りに勢いでホテルに1度行ったら簡単に此方側へ来た

長い春などやはり継続が難しかったのだろう

〈純愛など無い〉が信条の愛華(まなか)にとって雅也(まさや)の攻略は過去一番に簡単だった


そこへ来て、彼の母親だ

雅也(まさや)と会社帰りに歩いていたら突如現れて強引に家へ連れていかれた

その後は2人の関係から

その他諸々聞き出された

雅也(まさや)は顔面蒼白で、彼の兄や父はその様子を苦い顔をしながら見つめていた

結局、雅也(まさや)の母親が「結婚なんて以ての外」と言った事が切っ掛けでその後の予定は立ち消えになり、愛華(まなか)は益々意地になった

何としてでもこの男が欲しくなったのだ

その直後、運命の悪戯と言うのだろうか……愛華(まなか)の妊娠が判明した


そこからの愛華(まなか)の行動は早かった

雅也(まさや)の家に転がり込み同棲を強行

彼の生活の全てを把握するべく、彼の仕事中に書斎に忍び込み

件の7年愛の彼女に結婚を知らせる葉書を送った

そして、今回の影の協力者である彼の同期で大学時代からの友人の会社の先輩に根回しをし

彼女からの連絡が来た時の対応をお願いした

勿論、謝礼付きで

最初は受け取りを渋っていたが、コッソリ鞄に忍び込ませたのが返ってきていないので

受け取ったのだと思う

お金の力はやはり偉大だ

因みに、協力者の存在を雅也(まさや)は知らない

彼があの日、ホテルまで一緒に運んだことも知らないのだ


そうこうしている内に、同棲しているマンションへ着いた

ここ数日、このマンションで雅也(まさや)と一緒に過ごした記憶がない

正確に言えば、押しかけた日の2日後にはすれ違いが始まった気がする

恐らく雅也はどこか別の場所に部屋を借りているかホテルで暮らしているはずだ

以前、どうしても居場所が知りたくて彼の兄に相談したらヒントをくれた

それ以来、連絡先を交換して雅也(まさや)の兄とやり取りしているが

最近、誘いがしつこくて煩わしいと思っているのが本音だ


雅也(まさや)とは会社でも会う事が難しくなってきていて

強硬手段として今回、件のオーダーメイドドレスサロンへ行ったのだ

実はこのサロンの予約の話は、雅也(まさや)の兄からの情報で

義母が予約していた理由やそこのサロンのドレスの逸話など

つまり全て雅也(まさや)の兄情報

彼は優秀な弟と比べられて自尊心が低いらしく、ちょっと煽てただけでペラペラと情報をくれる

良い歳なのに独身なのも頷ける男なのだ


午前中の予約が駄目になったのは雅也(まさや)が渋ったからで

何とかやりくりして午後に予約を入れて来てもらった感じだったのだ

恐らく、ウエディングドレスのカタログに彼はやっと本腰を上げる気になってくれたと思われる

だって隣に座りながら「どれも似合いそう」と言ってくれていたから間違いない

やっぱり自分は誰からも愛される存在なのだと確信した瞬間でもあった


「はぁ……パパはナカナカの照れ屋で困っちゃいますねぇ?」


膨らんだお腹に話しかける

返事は無いが心なしか反応してくれた気がする

この子だけは何が何でも守らないと……

そう心に決めながらお腹を撫でる愛華(まなか)の姿は美しさが際立っていたのは言うまでもない


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