小学一年生がマネをしたら
ところが、私の素敵なアイデアは、ディレクターに却下されてしまった。
水増し作戦は反則だという。
「小学一年生がマネをしたら、どうするんですか! コピーするのはダメです!」
だったら、用意していたアサガオを全部枯らすなよ。そのせいで、私は苦労しているのに。
仕方がないな。アサガオのタネを埋めるまでの間に、何かドラマを挿入するとしよう。
えーと、植木鉢を買おうと、お店に行ったことにする。
その途中で、十人のかっこいい王子たちが登場して、私を奪い合う、そんなモテモテ展開はどうだろうか。
でも、問題点が一つある。
私が考えている内容だと、三百ページを超える大作になりそうだ。一日で完結させるのは、絶対に不可能。
かといって、王子の人数は削りたくない。むしろ増やしたいくらいだ。もっとモテたい。
私はため息をつく。さすがに、この恋愛ストーリーは無理だな。
しかし、「想像した内容で不足分のページを補う」というのは、良い方法かもしれない。
これなら、たとえ手元にタネしかなくても、『アサガオの観察日記』を今日中に完成させることができそうだ。花が咲くまでの場面を、順番に想像して描いていけばいい。
試しに頭の中で、軽くシミュレーションしてみる。
む、七ページくらいにしかならない。
これは、私の想像力の方に問題がある?
いっそのこと、花が咲いたあとの場面に力を注ぐのも、ありかもしれない。枯れたアサガオなら、実物が大量にあるのだ。
花が咲くまでを七ページで描いて、そのあとの八ページは枯れた状態が続く。
どうだ、全国の小学一年生たちよ。これが、私の『アサガオの観察日記』だ!