表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/31

アサガオのタネ

 テレビきょくのスタジオで、番組ディレクターが私の手に乗せてきたのは、黒いタネだった。


「アサガオのタネです」


 それを聞くなり、私は自分の目と耳をうたがった。この時点でいやな予感しかしない。


 直後にディレクターが声をり上げる。


「大人が挑戦ちょうせん! 小学生の夏休みの宿題しゅくだい、たった一日で終わらせることができるのか!」


 うん。そういう企画きかくだと、私も聞いていた。


 宿題に忙殺ぼうさつされる子どもたちの姿すがたは、夏休み最終日の風物詩ふうぶつしとして定着している。子ども時代にあれを体験した人は、少なくないはずだ。


 それに大人が挑戦してみよう、という企画である。


 バラエティ番組なので、おかしな要素を何かんでくるとは思っていた。


 しかし、冒頭ぼうとうからいきなり、アサガオのタネだ。


(夏休みの宿題で、アサガオと言えば・・・・・・)


 私の頭には不安しかない。


 とはいえ、さすがにまさか、そんなことはないはず。だって、アサガオの花じゃなくて、「タネ」だよ。


 しかも、今日は「夏休みの最終日」という設定せってい。今回の企画に挑戦できるのは、たった一日しかないのだ。


 このディレクターに一般いっぱん常識じょうしきがあることを、本気で期待きたいしてみる。


 だが、現実は非情ひじょうだ。


「そのタネは、『アサガオの観察かんさつ日記』用です」


 私のねがいは、打ち上げ花火のように爆散ばくさんした。


 夏休みの最終日に手渡てわたされたのは、アサガオの「タネ」。


 無茶むちゃ苦茶くちゃだ。ここからどうやって、たった一日で『アサガオの観察日記』を完成させろというのか。


 動揺どうようかくしきれない私に対して、


「大人が挑戦! 小学生の夏休みの宿題、たった一日で終わらせることができるのか!」


 ディレクターが明るい声でり返してくる。


 そのあとに、今回のルールを説明してきた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ