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第7話 生まれます!

またしても問答無用で風の精霊術をぶっ放してくるリーファ。


俺……何かやらかした!?

いや、ヤったと言えば散々ヤったけど……。

と、そんな不謹慎な事を考えながら、俺は吹き飛ばされていった……。


……ようやく身体を起こした俺は、素っ裸で立つ二人を見上げる。

まだまだ昼間のせいか、明るい部屋で見る二人は眩しすぎて、しばし見惚れた。


「きゃっ!!!」

やっと自分が裸であることに気づいたのかリーファはしゃがみ込んで身体を隠す。

……全然隠しきれてなくてむしろエロい。


その隣でマインはもじもじしてる……ん!?

んーーー!!!!!?


「……ようやく気付いたようね!」

リーファは裸が恥ずかしいのか涙目で睨んでくる。


マ、マインのお腹が大きい!!!?

明るい場所で改めてみるマインの裸体は、大きいお腹がむしろ神々しくまであった。

「綺麗だ……」

思わず感動する俺。


「マ、マイン……そのお腹は……」


「はい、わたしも気づいたらこうなってました。てへ♡」

……もう、うっかりさんだなぁ……ってそうじゃない!


「いつから……?」


「はい、森を抜ける間は少し太ったのかなって気になるくらいでしたが、いつの間にかこんなに……」

ふっくらしたお腹を優しく撫でるマイン。

「明るい場所で自分の裸を見るのは久しぶりでしたから……」

艶やかな流し目を俺に向けながら顔を赤らめるマイン。


まあ、確かに森でのイチャイチャは暗がりの中だったからなぁ……。

あ……でも気になることがある。


「えーとマイン、エルフの妊娠から出産って早かったりするの……かな?」

……何となくデリケートな質問だと思って、マインを気遣い優しく聞いてみる。


「いいえ、エルフの出産はおおよそ1年くらいかかります」


「そうなのか。人間はエルフより少し早いくらいだよ……でも、だとすると今のタイミングは早いな……」

俺はブックの情報を総動員し考えながら答えた。

エルフと人間のハーフだから早いのか、俺が本?だから早いのか……。


「とにかくアーツ!どうするのっ!?」

裸のショックから再起動したリーファが会話に参加してくる。

……どうやら俺がいない間に二人でお風呂に入ろうとして、服を脱いだ時に異変に気付いたらしい。


「そうだな……どちらにしても直ぐには動けないし……出産に必要な準備もしないとな」

俺は、落ち着いているマインに少し安心し、出産に必要な物を買いに行く準備をする。


「わ、わたしに弟妹きょうだいができるの!?」

再起動したリーファだったが、再度混乱していた……。


「リーファ、悪いちょっと出かけてくるからマインのことを頼む」

俺は混乱気味のリーファに声をかけ、買い物に出かけた。

そしてタオルやシーツなど清潔用品を買ってきた俺は、宿に戻ると女将さんに少しの間、連泊することを伝え、部屋に戻った。


部屋に戻ると、お風呂を終えた二人が、バルで買ってきたテイクアウトを机に広げ、遅めのランチの準備をしていた。

少し冷めたが濃い味付けで美味しいランチを食べながら、これからの事について話す。

先ほどの驚きで少し緊張していた俺たちも、空腹感が満たされたのか気持ちが楽になってきた。


「マインが心配だから、しばらく連泊して様子を見よう」

俺の言葉にリーファは安心したようだ。


それから俺たちは数日間、穏やかな生活を送った。

穏やかながらも、お風呂タイムやお休みタイムには、マインが普通に迫ってくる……天然すぎるぞマイン。

もちろんリーファが俺とマインの間に立ちはだかり、可愛い小鼻をピクピク興奮させて邪魔してきたが……。

せっかく街に着いたらマインと一緒にお風呂に入ろうと思ってたのに……。


そんな穏やかで賑やかな日が何日か続いたある夜。

その夜は月明かりが美しく、部屋の中までほのかに照らす夜だった。


俺たちの寝方だが、マインがベッドから落ちないように、俺とリーファはマインを真ん中にして、俺たちが両側に寝ることにしている。


そして月明かりの下、寝ていた俺は、自分の手が強く握られていることで目を覚ました。

……頭が少しずつ冴えてくる。

隣を見ると、息を荒くしたマインが目元を赤らめ俺を見つめている。

……額に汗に濡れている……ん?身体も汗まみれじゃないか!


「どうした!?マイン!?」

俺は飛び起き、マインを介抱する。


「アーツ様!お腹が……お腹が熱いです……」

マインは荒い息を続けながら苦しそうだ。


「……お、お母さん!?」

隣での慌ただしさに目を覚ますリーファ。


最初は俺も焦りかけたが、ここで俺の本の力を発揮しなくてどうする!?

「マイン、落ち着いて。俺がこれからする呼吸法を真似するんだ」

マインの手を握りながら、俺はブックから得た知識を当然のように発揮する。


「だ、大丈夫なの?」

泣き出しそうなリーファだったが、俺の確信的な行動と、冷静さが伝わってきたのか、泣き言も言わず、真剣な瞳で俺とマインを見つめる。


地球で古来から受け継がれてきた自然分娩、この方法により今にも生まれようとしている!


『!!!!!』


そしてついにマインが言葉にならない叫び声を上げる!

その瞬間マインのお腹から下半身にかけて大きな光が走った!


……無事に生まれてきた……と思う。

荒い息をつきながらも、穏やかな表情で目を閉じているマイン。


そしてマインから生み出た光は、そのまま淡く光り続けている。

……ん!?これって!?

淡い光の中に、ぼんやりとだが球体が見える。


こ、これはブックには載ってない現象だ!

情報がない俺は、恐る恐る聞いてみた。

「エ、エルフという種族だけど……もしかしてたまごから生まれたりする?」


「んな訳……あるかーーー!!!」

そして俺はまたしても、リーファのぶっ放し風精霊によって、吹っ飛ばされたのであった……。


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