そして僕は知る。
耳に届いた言葉を理解するのに時間がかかり、理解した瞬間に
「ふざけ」
ふざけるなと言おうとして、名前小出一朗という名前を呼ばれ全てがフラッシュバックした。
僕、小出一朗は17歳になる普通の高校生だ。両親は健在で僕に兄弟はいなくて一人っ子だった。学校は進学校とは言えないが、中学3年生の時に毎日塾に通い、受験勉強をそれなりにしないと入れない学校だった。
そんな学校で成績はテスト1週間前に集中して勉強すれば300人中120位代と良くも悪くもない成績。運動に関して言えば、苦手ではないが得意でもない。陸上部に所属していたが、サッカー部や野球部に体育祭のリレーで抜かれるような感じだった。クラスカーストの上位というわけではないが、真ん中あたりにいて友人も多くはないが、信頼できる友人がクラスに2人はいた。
そんな至って普通の高校生あった。
普通すぎるあまり毎日が退屈でつまらなかったが、実際にはそこまで不満はなかった。いや、ひとつだけあったが…
先ほど言おうとした言葉をつづけた。
「ふざけるな!僕はここにいるじゃないか!?それに死んだ記憶などないぞ!」
「仰っていることや心情なども理解致しております。しかし、事実です。」
櫛田はうっすらと微笑みを浮かべてまるで営業スマイルのような形でこちらの問いに答える。
「まず貴方様の存在ですが、ここは死後の世界とでも申しますか、わかりやすく言うと貴方は霊体。幽霊ですね。」
「幽霊?しかし、体の感触や熱を感じてるぞ?」
身体が暖かいこと指の動き声が出て、その音が耳に聞こえるのがわかる。
「それは脳が感じていることを霊体になった今でもその感覚を再現していると言ったところでしょうか?
夢で見たものが夢の中ではリアルに感じますよね?それと同じです。現実と夢の違いに気がつくことができますでしょうか?」
「む…」
何も言葉を繋げられなかった。ならばこちら現実だとしてもおかしくないと喚くこともできる。
しかし、先ほどまで見た突然、人が現れる現象や受付の遠近感の狂うほどの数を現実と捉えるには無理があることを感じた。
「続きまして死んだ記憶につきまして、あま国案内局規則7条1項を元に消去させて頂いております。」
「消去?なぜ?そんな事を?」
「これは迷い人、ここにいらっしゃる方の総称ですが
迷い人の精神を保つためです。死の瞬間や死の痛みは充分にその実物の精神を崩壊させてる事が可能です。
精神を崩壊した場合、生まれ変わりや転生をした場合に支障をきたす恐れがあるため消去させて頂いてます。」
櫛田の説明してる事は理解できるが、話してる内容があまりに自分から遠すぎて理解できない。
まるでクラスのグループで女子のメイクの話を永遠と聞かされる男子の気分だ。
「うん?生まれ変わり?転生?」
「はい。これから小出一朗様には生まれ変わりをしていただきます。」