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その2

  きょうは、くもりぞら。

 ぼくは、そらにはなしかけるんだ。

 するとそらは、おおきくのびをしてこたえたんだ。

 「まもなく、おおかぜが、くるよ」

 「おおかぜ?」

 「おおかぜさ。おおかぜはね、みなみのあたたかいおそらが、グルグルまわりながらやってくるのさ」

 そらは、ゆううつなひょうじょうをしていたんだ。

 「だからね、ぼくはおおかぜにおしながされて、すこしずつ、きたのそらにながされてゆくのさ」

 「おおかぜは、ぼくはきらいだ。」

 ぼくは、そらにいったんだ。

 するとそらもいったんだ。

 「オイラだってきらいさ。だから、もうすぐ、オイラはひなんしなきゃね。

 でんちゅうどの、あんたも、ひなんしなさいな、

 わるいことはいわんよ。こんどの、おおかぜどのはちょっとばかりきょうぼうだからね。

 じゃあ、ごきげんよう。おいらは、ちょっとばかし、シベリアのおそらに、かくれるさ」

 ヒュルリとおとがして、それから、ポタポタ、アメがふってきたんだ。

くもりぞらは、まっかななつの、たいようのあつさを、うすめてくれる、いいやつだけど、

 ちょっときまぐれで、

 いつもぼくや、イシコロくんや、エノコログサちゃんが、のぞんでいるときは、

 ちっとも、いてくれないんだ。

 おや?

 まだ、たいようは、ぼくのまうえにぼんやりと、くものなかでうかんでいる、じかんなのに

 どうして、きみがあるいているのだろう・・・

 ああ、それから、いたずらっこの、ケンジがきたんだ。

 ネコのミーちゃんは、はやく、かくれなきゃ!

 さいわい、ミーちゃんはどこかに、でかけているようで、すがたがみえなかった。

 いたずらっこのケンジも、きみも、パラソルをひろげているから、かおはよくみえない。

 それから、あのこも、みずいろのパラソルをひろげて、やってきたんだ。

 だんだん、あめつぶと、かぜが、つよくなってきた。

 おおかぜが、すこしずつ、ぼくたちのところへ、ちかづいているのだろう。



 ・・・冷蔵庫をあけると数日前からのコーラの1・5リットル入りのペットボトルにまだ半分くらい液体が残っていたので、コップに

注ぐと、ぐいっと一気に飲み干した。気は抜けてしまっていたけれども、おいしかった。

 何だか得した気分なのは、台風が近づいているから、授業が午前中で終って早退になったからだ。

 「いいか、今日は特別に課題を多く出したんだから、自宅でしっかり勉強するんだぞ」。

 まあ先生は自宅学習だとクギをさしたんだけど、やっぱりこんな機会は滅多にないから、何かして遊ばなきゃもったいない。

 といっても、とりたてて何もすることがないから、リビングのテレビをつけたら、台風情報を流していた。

 今回の台風はかなり大型で今夜夜半すぎに、最大接近、場合によっては上陸する可能性もあるとのこと、なるほど、まだ午後一時前だ

というのにもうすでに風雨が騒ぎだしている。

 ブンチョウのナオヒコが忙しなく羽根をばたつかせながら、僕に注意を向かせようと策略する。

 ナオヒコは家族のなかでは、いちばん僕になついている。

 ちなみにナオヒコとは、兄の直彦からとった名前で、けっこう凶暴な性格なのがお互いよく似ていると思ったので僕が勝手に付けた名前

なんだけど、もちろん、家族には内緒だ。姉には一度ナオヒコって名前で呼びかけているのがバレたんだけれども、そのときは大爆笑にな

ってしまった。   

 もっともナオヒコ自身もこの名前を気に入っているようなかんじだ。

 ぼくは鳥篭のなかから呼びかけながら、ナオヒコをそっと取り出した。

 ナオヒコは、僕の手のなかで、ゆったりとしている。そっと、頭から羽根先までを撫でてあげると、尾っぽをブルブルと振るわせた。

 ここまで懐いているのは家族のなかでは僕だけだ。それが、ちょっと誇らしい気持ちになる。

 僕はリビングのソファーの上で、テレビを見ながらナオヒコと遊んでいた。

 やがて姉の唯も学校から戻ってきた。

 そうだ、お腹が空いたから、姉に何かつくってもらおう。

 先日のゲームのアイテムをわけてあげたんだから、それを強調すればいいんだ。

 まあでも、たぶん即席ラーメンになるんだろうけれども・・・

 姉がリビングに入ってくるなり、

 「お腹ペコペコ。何にもないよねえ。」

 「ねえ、お姉ちゃん。ラーメンつくってよお」

 「ヒロつくってよ」。

 姉がいたずらっぽい笑顔を浮かべている。

 「エー、でもさあ、お姉ちゃんがつくったほうが、きっとおいしいさ」

 「ヒロだって、この前上手につくったじゃん。うん、ヒロのほうが、おいしくつくれるよ」

 何だか姉は今日は、金輪際動きたくないらしい、僕の横にどかっと座り込むとふかぶかとソファーのなかにクッションを抱きしめてしっ

かりと体を丸めこんだ。

 「ねえ、ジャンケンで決めようよ」

 もう僕はすっかり姉のマイペースな雰囲気に飲み込まれていってだんだん逆らえなくなってゆくのは、お腹がすいているせいもあるから

にちがいない。

 「ジャンケーン、ポン!!」

 やっぱり・・・

 僕は、なぜか姉とジャンケンするといつも負けるんだ。

 

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