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第14話

「――着弾してからの爆発、流石は魔術師殿」


 グランドアーク奪還戦のため、用意した兵団。

 オルブライト防衛隊とウィルドマスター社がそれぞれに集めた兵士たちのすり合わせと、新型に慣れさせるために射撃訓練を行わせていた。

 しかし、1発ごとに的が破壊されていくのは経済的ではないな。


「ああ、爆薬の小型化と量産化には本当に苦労したが、これくらいできなければ防衛隊には永遠に勝てないのでね」

「我々としてもそろそろライテスなしで怪獣退治ができるようにならなければいけないと思っていたんだ」


 感覚として、この爆裂弾があれば数十人で掛かれば5メートル程度の怪獣なら倒せると思う。

 相手の特性にもよるが、水を吐き出してくるような類いでなければなんとかなるだろう。


「それでライテス殿はいつ到着する予定で?」


 爆裂弾の爆ぜる音が聞こえてくる中、魔術師殿が興味津々に聞いてくる。

 ライテスにはなるべくストレスを与えたくないということで、我々よりも遅くギリギリまでミネラスタに留めておいた。

 いつものメンバーではない人間が多い環境に長く置いていたくなかったからだ。


「まもなくさ。悪いね、うちのお姫様が気まぐれで」

「いいや、構わない。それが許される立場だ。それが他にいない存在ということだ」


 怪獣と心を通じさせ、操る技術を持っているのは今のところこの世界でナビアだけだ。

 いや、もしかしたら同じような原住民はいるのかもしれない。

 けれど、少なくともその中でエウタリカに友好的なのはナビアだけ。


「……しかしスペンサー殿、ミネラスタの人々は昔から怪獣と友好的な関係を築いていたのか?」

「そこら辺に関してはウィルドマスター社の方が詳しいんじゃないのか? 前の戦争で戦っていたんだろう? ライテスとも」

「まさか。あれと出くわした部隊は殆ど全滅している。証言も当てにならないと判断していた、当時の担当者はね」


 5メートルもある獣を駆る女の存在なんて信じないか。


「初動を間違えたな。そこで適切に脅威だと認識していれば、メタリアへの無理な侵攻はなかっただろうに」

「ああ、けれどそうなっていれば君の出る幕もなかった。スペンサー殿にとってはこうでなければ今はないよ」


 ……確かにそうだ。歴史とは合理的に進まない。

 だからこそ、私のような人間が現れる余地があるのだ。


「けれど、あのナビア・ミネラスタという人物はどうやって怪獣と心を通わせている?」

「……知らないのだ。聞いているのは彼女はライテスと共に育ったということ。

 人生の全てを使っているからこその関係らしい。そしてライテスのようなミネラスタの獣は、もう既に彼しか残っていない」


 エウタリカとの戦争で失った個体もあると言っていたが、そもそも数が減り過ぎていて放っておいても絶滅していたというのがナビアの言葉だった。

 閉じた停滞を望んだこと自体がミネラスタの過ちだったのだと。


「……再現不可能な存在という訳か。ますます我々の開発を進めなければいけないな」

「ああ、そこについてはよろしく頼みたいのだ。魔術師殿」


 ふと、周囲の会話が聞こえてくる。ウィルドマスター社が用意した見慣れぬガンマンたちの会話が。


「しかし、怪獣を使う女ってのは何者なんだろうな?」

「獣の魔女だろ? 原住民が味方をしてくれるってのも妙な感じだよな」

「当てになるのかねえ、下手したら俺たち皆殺しじゃないか?」


 ――私の視線を把握した魔術師殿が視線を寄こす。


「すまない、こちらの兵士が」

「いいや、気にする必要はない。実戦経験のある荒くれ者だ、これくらいは当然だろう」


 我々の防衛隊とて、私のガンマンたちとナビアの戦士たちが本当の意味でひとつになるのには時間がかかった。

 いや、ひとつになっていると思っているのは私だけかもしれない。

 けれどそれでいいのだ。仕事さえ果たせるのならば、それで。


「ガァアアア!!!!」


 叫び声がこの身体を揺らす。聞きなれた獣の声が。

 到着したのだ、私の切り札が――


「――待たせてすまない。

 オルブライト防衛隊が切り札ライテスと共にナビア・ミネラスタ、今より連合軍に合流させてもらう!」

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