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第12話

「――グランドアークを支配する怪獣・デイモンを討伐したいのだ」


 グランドアークの悪夢、メタリア最大の怪獣災害。

 良質な石炭が採掘されていた峡谷から”あの怪獣”が掘り起こされて以来、採掘どころか近辺の通行さえ危うくなった事件。

 通常見受けられる5メートル級の倍、10メートル級の怪獣。それがデイモン。名もなき怪獣に、いつの間にかそんな名前が付けられていた。


「メタリア最強の怪獣を倒したいという訳か。なぜ?」

「防衛隊の活躍で地下資源の採掘は滞りなく進むようになった。

 だからこそ、グランドアークが交易路として使えないのは痛い」


 なるほど、理にかなった話ではある。


「――それをどうしてウィルドマスター社が行おうとしている? 君たちは銃火器の製造販売が仕事だろう?」


 私の思っていた疑問をナビアが聞いてくれる。

 

「鉄道をね、通す計画があるんだ。ウィルドマスターはその計画に出資している」

「……鉄道か。これまた大規模な話だな」

「防衛隊としても流通経路が確立されるのは有益な話だろう?」


 確かに有益な話ではある。

 問題はグランドアークの奪還という困難をやれるかどうか。そちらの話になってくる。


「有益な話ではあるが、困難な話でもある。我々も10メートル級を相手にした経験は殆どない」

「そこに関しては我々の新型である爆裂弾を回す。兵隊も用意する。オルブライト防衛隊とウィルドマスター社の連合軍にしたい」

「……報酬は何を用意するつもりかな?」


 魔術師殿が提示してきた金額。それはそれ単体だとしても申し分ないほどに莫大な金額だった。

 けれど、我々の経営方針としては目先の金だけを追うのは相応しくない。


「グランドアークの採掘権、オルブライト防衛隊で貰い受けると言ったら?」

「良いだろう。それを求められることは予想済みだ。しかしそれ以上の追加報酬は出せないし、鉄道計画に影響のない範囲で頼む」

「構わない。それなら受ける意味が出てくるというものだ」


 ――それからしばらく、魔術師殿を歓待し、彼を宿に案内してやった。

 そうして私室に戻った後、ナビアが口を開いた。


「……今回の報酬は確かに大きいが、リスクに見合うほどのものか?」

「前金、成功報酬、グランドアークの採掘権だけでは不満だと?」

「不満と言えるほど報酬が少ないとは思わないが、相手はあのグランドアークの悪魔だろう?」


 ナビアの不安も当然だ。これまでの怪獣とは毛色の違う相手になる。

 それに我々も大きくなった。既に莫大な富を動かす立場になりつつある。

 そもそも危険を負う必要性があるのかという話もある。


「――グランドアークのデイモンは”石炭を食ってダイヤモンドを吐き出す”と聞いたことがあるか?」

「それがそいつの特性というわけか」

「ああ、ライテスに食わせれば同じ力が手に入る――」


 それにウィルドマスターの爆裂弾とやらにも興味がある。

 ライテスとナビアを使わずとも怪獣を殺せる技術は確立したいところだ。


「私たちの目的は世界征服だろう? ナビア」


 こちらの言葉にニヤリとした笑みを浮かべるナビア。


「正直、そろそろお前も臆病風に吹かれる頃だと思っていたよ。

 得られるものを得た人間には恐れが生まれるからな」

「私がそんな人間なら、エウタリカから出てくることはなかったさ」


 ナビアが私の肩を撫でる。そのしなやかな指先にドキリとする。


「良いだろう。私たちがグランドアークを取り戻す。そうして名誉も富も手に入れてやろうじゃないか」

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