表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/14

ゴブリンの根城(女子限定ゴブ)①

「姉様、こんな依頼を受けるのですか?」

「肩慣らしをしておきたくてね」


 選んだ依頼はゴブリンを駆除して欲しいというもので難易度も低い。

 受注条件が女性に限られるのが不思議だがギルドにあった依頼だ、理由でもあるのだろう。

 伝説の勇者がこんな簡単な依頼を受けるなんて不審がられるかもしれないが……


 現にしてステラが苦虫を噛み潰したような顔をしている。生理的に無理なほどか!

「この依頼にならどなたか同行されてはどうですか?」

「実はもう呼んでるんだ」

「どもども、メイr……メイちゃんでででで~す」

 こいつはまともな挨拶を知らないのだろうか?

 メイラは俺がまともに戦えるか見るためについてくるらしい。


「メイさん?もしかしてあの日、森で倒れていた私と姉様を助けてくれたというあのメイさんですか」

「ふふふ、そうかもしれないしそうじゃないかもしれない。答えは女神様だけが知っていることですよ」

「お前嘘をつく時、敬語になるよな」

「なぁ゛にぃ゛」

「という訳でこいつと行くから大丈夫だ」

「ふふ、お二人は仲がいいのですね」

 え? 絶対違うぞ。

 そんなこんなでメイラ改めメイとテラス(風向)の偽りコンビはゴブリンの根城に向かうことになった。

 町を出てすぐメイラがおかしなことを言いだした。


「剣出してよっ、剣っ!」

 腕を振って精一杯、剣のジェスチャーをしている。アホの子みたいだ。


「これでどうするんだ? しょうもないことなら切っていいか」

「こ、怖いこと言わないでよ。縦に真っ直ぐ剣を振り落としてみて」

 言われた通りに剣を振り下ろしてみる。

 金属の塊であるはずの剣が軽い、テラスの体のおかげだろう、あるいは文化祭とかで使う小道具かもしれない。


「んー?そーじゃないのよね。もっとこう大きく人が入れるように」

「メイラ位の大きさか?」

「そうそう、それと今は冒険者メイだから、呼び方には気をつけなさい」

 いちいち呼び方にこだわるなんてめんどくさいやつだな。

 そういえばメイラは俺のことを風向ともテラスとも呼ばない、あいつにとって人の呼び方にはそれほど大きな意味を持つものなのか。


 頭上から剣をゆっくり地面まで振り落とす。(つるぎ)の奉納をしているみたいだ。

「よし、これで完了だな。で、これで何がしたかったんだ?」

「それは後でのお楽しみ。ここからまっすぐ行ったところに花畑があってその奥に見える廃城がゴブリンたちの住処になってるわ。早く行ってじゃんじゃん倒しましょ」

「冒険者メイ様はお話が通じないようだ。お前ぐらいの大きさで切れば良かったよな」

「ちょちょちょちょ!こっち来ないでぇ、鋭くて、怖いから」


 追いかけまわしてみたら話すかと思ったら意外と話やがらない。

 初めて会った時、裸の理由を聞いても無視し続けたのと一緒だろう驚かせたいのだ。

 ここはひとまず引いてあげよう、大人な対応としてな。メイラの方が長く生きているはずだが。

 そんな一幕がありながら道を歩いて行く。

 騒いでいると風が強く吹いた――とても()()()()がした。

 くどい甘さではなくさっぱりとした植物の甘味のような匂い。

「花畑が近いようね、迂回して進みましょ」

「花畑なんて俺の世界じゃ珍しい、ちょっと寄ってこうぜ」


 無邪気に花畑にいくことを促すとメイラはやれやれといった様子で息を漏らす。

「はぁ~、あんたみたいなやつが居るから毎年被害が出るのよ。花畑に生えているのは毒を持つ花――ネムソウの花なの。死にたいなら行きなさい」

 やべぇ花が咲いている。毎年被害が出るなら焼いてしまえばいいのに。


「そんな危険な花ならどうして駆除しないんだ?」

「ネムソウは生き物を餓死するまで眠らせて土の栄養にするの一凛咲いているだけでも野生動物や虫を養分にしてどんどん増えるわ。駆除してないわけじゃなくて単純に追いつかないの」

「へー、この世界も大変なんだな」

()()()()()()()()()()()()()()()のに何故かあるのよね、むかつくわ」


 そんな生態を持つ植物なんて聞いたことがない、これもアダムが知恵の実を食べなかったことで引き起こされた世界の違いというものだろう。

 魔物といい、ネムソウといい、関係性があるとは思えないが……

「うだうだ考えてないでー、さっさと歩かないと放っておくわよー」

 メイラは俺を置いてだいぶと進んでしまったようだ。ちっさく遠くに見えている。

 俺は手でメガホンを形づくりメイラに向けた呼びかけた。

「女神ならー、もっと落ち着きを見せたほうがー、いいんじゃないかー」

「うるさいわねー、私はこういう性格なの……ってなによあんた達ッ――やめてどこ触ってんのよッ」 

 なにか騒いでいるなんだ?

「ゴブゴブー、女ゴブー、簀巻きにして連れて帰るゴブー」

 4体のゴブリンに連れ去られるメイラが辛うじて見えた。

「あいつッ!」

 急いでメイラのもとに向かったがメイラがいたところはただ土が荒れているだけでゴブリンとメイラの姿は見えなかった。

 見失ってしまった、メイラと離れてしまったのがいけなかった。

 居場所の検討は一つしかない、ゴブリンの根城だ。

 遠くに少しだけ見える廃城の一部にすぐに行くと言ってやった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ