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勇者ではない人間として

「待たせてすまないね、もう少しで店閉めるから待っていてくれるかな」

 バーのカウンターに座って待っているとマスターからグラス一杯のミルク出された。サービスらしい。

 大人の雰囲気というのは未成年にはつらい。

 昨日話しかけてきた冒険者の筋肉マッチョもここでは大人しくお酒を嗜んでいる。

 こちらに気が付くとカランとグラスを揺らしながら視線であいさつをして来た。

 キザな真似しやがって裸のくせに。変態紳士か。


「ミルクぅ~おっ子様~」

 メイは相も変わらず空気を気にせず傍若無人(ぼうじゃくぶじん)だ。

「バカにするな。ミルクはうまい。牛の血液だからな! 自分が吸血鬼になったと思って飲むと中二心が爆発するぞ」

「心底、理解しがたいわね」

 軽く引いていたメイの前に注文していたカルーアミルクなるものが置かれる。

「結局ミルクってバカにしときながら自分だってコーヒー牛乳じゃないか」

「コーヒー牛乳じゃないわ、カルーアミルクよ。お酒が入っているかどうかの違いだけどね」

「お酒かどうかの違いだけで名前が全く変わるのか」

「たとえ似たものでも線引きによって大きく変わる、そんなもんじゃない何事も」

 線引きによって変わるか……

 分ける基準さえ超えてしまえば一緒なのかもしれないな。


 そんなとりとめのない話をしているとお客さんがみんな帰ったらしくマスターがグラスをふきながら声をかけてきた。

 シネマ――通称マスターと呼ばれている――はギルドのマスターとバーのマスターを兼業している。

 今回はギルドのマスターとして、魔王の件の催促だろう。


「待たせてすまなかった。今日はおかげ様で大繁盛だ」

 メイと話しているときとは口調を切り替えテラスとして対応する。

「いつもはこんなに入らないのかい?」

 昼間に酒場で飲んでいるような冒険者が騒がずに飲んでいるだけのように見えたが、良くも悪くも常連という感じだ。


「浮かれているのさ、財布のひもも緩む。だって君が魔王を倒しただろう、それからまだ10日もたっていない。――そう、10日もたっていないのだよ」

 マスターの威圧感が増す。

 グラスを1つ拭き終わり、また新しいグラスを手にする。

 一連の動作には無駄な動きはない、慣れた手つきで作業をしながらマスターは話を続けた。

「魔王討伐の依頼をしたときはステラ君の手前、追及することはしなかったが今聞かせてもらうよ。どうして嘘をついた?」

「嘘というと……」

「魔王を倒した時ほどの力が無いという点だ。それほど時間が経過していないのに力が弱くなったとは考えにくいのでな、少し調べさせてもらった。結果、力は1つとして衰えていなかった――戦うか戦わないか今決めてもらえるかな」


魔王の件は差し迫った問題だ。マスターが手回しをしてまでことを急がせる必要があったのだろう。

 魔物の活動が活発になったとも言っていたし、確認されてはないが魔王が復活したかもしれないとあっては用心もする。

 魔王の復活に関してはゴブリンキングが言っている――

『魔王は生きているぞ』

 ――根拠のない話ではないだろう。

 ならば死ぬ意味がない。


 魔王はいる。


 不確かであった存在が形を持って立ちはだかる。

 勇者パーティーを壊滅させ、テラス以外の全員が命を落とす結果となった戦い。

 テラスを名乗るまがい物にとっては戦いに挑むことは死を意味する。


「悪気があるわけじゃないのよ! ただ時間が必要なだけで――」

 空気に耐えられなくなったのかメイが口をはさむ。

 俺はそれを手で制する。メイに代弁させるのは失礼であると思ったから。


 これは答えじゃないかもしれない、ただ言葉にしておきたかった。


()は自信を無くしていました、何かをすればそれが裏目に出るのではないかと思ってしまって自分からは何もできなくなった。でも最近、ちょっと気になる女の子が居て、その子は言うんですよ、こんな俺にだってできるって、自信満々に自分ができたからって、だからやりたいことがあるんです」


 初めての戦いを経験した俺は理解した。

 テラスは魔物と戦うために割り切っている。人間じゃないから――魔物だから倒してもいいと。

 そうしないと壊れてしまう。自己防衛のためには仕方がないこと。

 勇者と呼ばれるには共謀や命乞いの声に耳を傾けてはいけない、魔物に心など動かしてはいけないのだ。

 周囲の期待を受けて答えることは負担になるだろう。

 人間ではない勇者として生きなければいけない。

 悲しい生き方だと思う。


 俺にはそんなことできない、魔物にも事情があると知ってしまった。

 いつぞやメイに言われたっけ、俺は埋め合わせ、物語の裏側に過ぎないと。

 主人公でないのなら大層なことはしなくていい。

 テラスのように戦うことができないならば――

「魔王と話に行きます」

 ――カザムキとして別の道を選ぶことにした。

すっごい時間かかりました!

予定にないステラの掘り下げエピソードを追加したので引き続き更新は遅くなります。

ペースを速めたい……

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