1章転生しません
ホワイト企業から主人公はどこに行くのか、はたまたどこにも行かないのか。どうなることやら分かりません。
今日も17時に帰れる!
そう思い会社を後にした。
5年前の働き方改革とかなんとか云々で世の中の黒ーい企業は白ーくもしくは灰色?に変わってきている。あんなにキツかった残業も今では見る影もない。まあ、世の中変わる時は変わるもんだねぇ、うんうん。
と呑気に駅に向かう背中は喜びに満ち溢れている。今にもスキップしそうだ。
この喜びに満ちた男の名は上越忍28歳就職6年目の会社員だ。ちなみに勤めている会社は5年前の改革の影響により、黒から白に変わっていた。ただ、世の中のイメージというのは簡単に変わるものではない為、一般的に"グレー"と呼ばれている。しかしながら、世のイメージとは裏腹に働いている本人達からすれば盆と正月がエンドレスでやってきている状態なのである。
ホントね、入った時は過労死する気しかしなかったのがこれだよ。残業なしで帰宅かよ。スゲーなw
といつのまにか電車に乗り最寄駅の改札を抜けてビール片手に家に向かうその姿からは喜びが溢れ出ていた。
喜びが溢れていた、そう溢れすぎていたのだろう。あろうことかこの男遂には軽く踊り始めていた。いい年したスーツ姿の男性が道端でビール片手に、だ。
まあ、そんなこんなですれ違う人には軽く変な目で見られながらも無事に自分の家があるマンションに着いた。そして鍵を開けて入るとそこには見知らぬ人が座っていた。
「ようやく来…」
バタン。
いや、座っていたじゃねーよ。誰だよあれ泥棒?だよな、よし通報するか。
「とスマホを取り出し110番しようとした。しかし繋がらなかった」
いや…繋がらなかったじゃねーよ、てかほんとに繋がらねーじゃねーか何ナレーターみたいな話し方してんだよ、マジでやばいやつおるわ…。
「と恐る恐る部屋の中を確認しようとまた少し玄関のドアを開けて様子を見た」
は?開けたじゃねー…えっえ?なんで勝手に?手が?開けてるよ…様子見てるよ…
「そしてゆっくりと中に進みその謎の人物の前に立った」
………。
「やあ、神様だよ☆」
あ、すいません警察ですか?今仕事から帰ってきたら知らない人が家の中に…はい、そうです、全く知らない人です。えーと場所は…
「実はね、神様から忍君にお願いがあ
るんだけど、ちょっと他の世界に転生していってほしいんだ。」
あ、やっぱり救急車を呼んでいただけますか?そうですね、ちょっと精神が不安定みたいなので、病院で診てもらった方がいいかもしれないです。
「大丈夫。とてもアットホームで若いうちから活躍できるいい世界だから」
…なんだそのブラック丸出しの世界は、いかにもじゃねーかよ、ようやく抜け出せたんだ、またブラックな生活になんか戻りたくねーわ。
「さあ、どうだい?転生するかい?」
転生しません…つか、説明しろよ、なんだよさっきの変な喋り方どういうことだよ。
「さっきも言っただろう?僕はこの世界の神様さ。そしてこの世界の物語を進めるためのナレーターをしているのさ。全ては神様のナレーション通りというわけさ」
はあ、まあよくわからんけど実際にあったわけだし…で?転生ってのは?
「お?転生に興味が出てきたかな?いいでしょう、説明しましょう。こことは別の世界、それはこの世界のもう一つの世界かもしれないし、全く違うかもしれない。そんな世界が見つかったんだ。ただ、僕はこの世界で手一杯だし、どうしたもんかと悩んでいたんだよ。そしたら君が僕を召喚する儀式をしていたから、ちょうど良かったし、手伝ってもらおうと思って召喚に応じたんだ」
ちょっと待て、俺はそんな怪しげな召喚の儀式なんぞした覚えはねーぞ、つか応じてんじゃねーよ。
「いやいや、君は確かに儀式をしていたよ。ほら、貢ぎ物片手に踊っていたじゃないか。あの踊りは僕を召喚する際にやる儀式の踊りそのものだったよ。」
あれかよ!あんな小躍りで、召喚されてんじゃねーよ、おかしーだろ絶対っ!
「さあ、説明もしたし、そろそろ転生する気になってくれたかな?」
嘘だろ、もう説明終わりかよ、何一つわかってねーよ、何も良くねーよ
「話を聞き、男は悩み、そして答えを出した」
転生しません…
初めて書いてみたので暖かい目で見ていただければと思います。一応連載作品として更新していければいいなと思っています。