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欠乏症

作者: 福宮薫

私はただただ、目を見開いた。

「うそ…でしょ」

震える声でそう呟く。

スマホを持つ手が震えている。

なぜって、なぜかって、それは。

「ブロック…されてる」

カツンと、床に落ちたスマホが音をたてた。







目をうろうろと泳がせながら、私はスマホをそっと拾った。

しかし、何回見たってその事実は変わらない。

君の投稿が見れなくなっているのは、

私が送った言葉が未読のままなのは、

紛れもなく私の目の前にある。

「そっか…そう、だよね」

分かっていたことだ。

君に必要とされていないことなんて。

君が私のことをなんとも思ってないことなんて。

私に好意がないことなんて。

けれど。

「今まで…拒絶されたことって、なかったよね」

色々と言いながらも、私たちは一緒にいられていた。

私の脳裏に浮かぶのは、私たちの繋がりだったゲーセンの記憶。

私が一緒にゲームをやろうと誘えば、彼は無言のまま応じてくれた。

何回も、何回も。

言葉はなくても、私と君の焦点は確かに合っていた。

繋がりは細くてもそこにある。

私はそう信じこんでいた。

でも、

「そんなこと、なかったんだ」

あの笑顔はただの気紛れだった。

私と遊んでくれたのは、きっとただ暇だったから。

私に返信をくれたのは何となく。

私をブロックしたのは…私がめんどくさくなったから。

いらない。

いらない。

私は、いない。

彼の中に、いない。

何かが私の頬を伝った。

私は知らない。

知らない。

もう何もしない。

何もできない。

彼には、会えない。

「ふっ…あっ………は、はははっ…!」

乾いた笑みと共に、冷たいものはポタポタと落ちる。

私の中から、彼は消えた。

いない。

いないんだ。

私が好きだった彼は、いない。

けれど、私の心は彼を求めている。

彼が欠乏していると訴えている。

私の手の中では、私が彼に送った、

彼に届くことのなかったメッセージが、映し出されていた。




『お誕生日おめでとう!!』

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