72.異世界で出会ったのは奴隷? いいえ、お嫁さんでした
プロポーズしてからしばらくの時が流れた。
今日は僕とユイとリリィの結婚式だ。
僕なりのやり方で計画を立ててセッティングをした。
結婚を見届ける立会人はディーラさんにお願いしてある。
この世界には教会というものはないので、ランバールの街でそれっぽい会場を探して椅子を並べたりした。
僕は今タキシードを着て、前に立って花嫁を待つという状態だ。
このタキシードは、僕のアイデアをサーシャちゃんが絵に描いてくれ、それを元にユイが作りあげてくれた。
なおドレスも同じように作っている。
早く2人が着た姿を見たい。
会場にはお世話になった人達がたくさん来ている。
その中でカイルさんやラルフさんには、この結婚式を見て後に続いてほしい。
ちなみに彼らの奴隷だった女性たちはもう首輪を着けていない。
結構前に奴隷の証を魔法で消すのを手伝ったんだ。
そして式の始まる時間となった。
もうすぐ入口から最愛の花嫁が2人入ってくるはずだ。
本来であれば親が寄り添って来るものだが、2人ともいないのでお互いに寄り添って来るという形にしてみた。
後ろでドレスを持つ役目は、ユイのをタニア、リリィのをサーシャちゃんにお願いしてある。この役目を頼むにあたってタニアの首輪ももうはずしている。
入口を見つめていると、真っ白なドレスに身を包んだ2人が現れた。
ウェディングドレス……綺麗だなあ。
顔はまだヴェールで隠れているため、遠くからでは表情がわからない。
綺麗だと思っているのは僕だけではないようで、周りからも感嘆のため息が聞こえてくる。
僕の2人のお嫁さんが褒められているので嬉しい。
リリィの見た目は若すぎるかなあと考えていたけど、この世界であれば若くして結婚も珍しくないようなので安心した。
2人が近づいてくるにつれ、ヴェールに隠れた表情が見えてきた。
やはり緊張しているかな。
足元の赤い絨毯をしっかり見ながら歩いてきているようだ。
僕は応援しながら待つ。
やがて僕の前にやってきた。
2人がつないでいた手を離し、僕がその間に割り込む。
右手にユイ、左手にリリィ、いつもの形だ。
そのまま前に数歩進み、立会人のディーラさんの前に立つ。
ここでタニアとサーシャちゃんは2人から離れて客席へ移動した。
まずは誓いの言葉だ。
ディーラさんの言葉を待つ。
「夫たる者よ、君はこの2人を妻とし、生涯愛し、尽くし、助けていくことを誓いますか?」
「はい、誓います」
「妻たる者たちよ、君たちはこの者の夫となり、生涯愛し、尽くし、助けていくことを誓いますか?」
「はい、誓います」
ユイとリリィが同時に答え、誓いの言葉は完了だ。
証人はディーラさんを代表とし、ここに参列してくれたすべての人達だ。
「では指輪の交換を」
ここでプロポーズした時と同様に、指輪をそれぞれの指にはめていく。
ユイの指に、リリィの指に、僕の指に指輪が煌めく。
この世界にはない習慣だけど、これを見て流行ったらいいのにな。
「これはこの3人の愛の証です。手を掲げてみなさんに見せてください」
僕たち3人は左手を上にあげて指輪を皆に見せる。
祝福の笑顔に見られる僕たち。
女性たちはうっとりした顔で見ている気がする。
「それでは次に誓いのキスを」
よし、やるぞ……。
僕はまずユイのヴェールをめくった。
化粧をしたユイの顔がドレス以上にまぶしい。
この順番は僕が決めた。
ユイとリリィに順位をつけたくはないけど、今日はユイが先なんだ。
目を閉じたユイにキスをすると、周りから歓声が上がった。
なんとも恥ずかしいな。
唇からユイの体温が上がっているのを感じる。
式ということで、5秒ほどで離れた。
そしてユイに向き直ってヴェールをめくる。
リリィも綺麗だ……。
僕は吸いこまれるようにキスをする。
またも歓声が上がり、僕たちは熱くなる。
ユイと同じ時間キスをして離れる。
これで式の大半は終わりだ。
最後に重要なことが待っている。
ディーラさんが言葉を発し、皆はその声に耳を傾ける。
「ご来場の皆さま、この3人は今日ここで夫婦の誓いをいたしました。この結婚について意義のある方がおられましたら、今ここで申し出てください」
会場はシーンと静まり返る。
そんなのいるはずないよね。
ユイを取られるのが悲しそうだったタニアを見ると、ユイを見て目を輝かせている。
ドレス姿の美しさと嬉しそうな表情に祝福しているのかな。
「それでは次に、この3人を祝福してくださる方は大きな拍手をお願いいたします」
その言葉で、会場内の全員が大きな拍手を僕たちにくれた。
多くの人が祝福してくれる結婚……いいものだなあ。
しばらく拍手を受け、またディーラさんが言葉を発する。
「拍手をありがとうございます。お集まりの皆さんが、この3人が結婚したことの証人です。これからも温かく見守っていきましょう。もう1度盛大な拍手を」
またも盛大な拍手に包まれる。
このタイミングでタニアとサーシャちゃんが、ユイとリリィに小さな花束を渡す。
これからブーケトスをするんだ。
花束は可愛くなるよう、みんなで作った。
もちろんユリアの花もその中にある。
拍手がおさまるのを待って、今度は僕が喋ることにする。
ブーケの説明もしないとね。
「みなさま、本日は僕たちの結婚式にお集まりいただいてありがとうございます。僕たちは3人で一緒に幸せになろうと思います」
ここで3人一緒にお辞儀。
またも拍手に包まれてしまうので、少し待つ。
「この式の最後に、みなさまにも幸せをおわけしたいと思います。今からするのは僕が生まれた遠い場所の風習です。花嫁が手に持っている花束をこれからみなさんの元へ投げます。これを受け取った女性は次に結婚できると言われているんです」
この言葉で、多くの女性が反応しているように思える。
迷信ではあるけど、ユイとリリィの投げる花束ならば本当に効果がありそうな気がする。
「男性の方は手を出さないようにしてくださいね。結婚したいと思っている女性の方はがんばって取っていただきたいです。それでは同時に行きますよ。せーのっ!」
ユイとリリィが左右の客席に向かってブーケを放り投げた。
それはくるくると回転し……手を伸ばす女性の元に届いた。
ユイが放り投げたブーケは、カイルさんと共に来ていたミィさんとキィさんが仲良くつかんでいた。
リリィが投げたブーケは、ラルフさんと来ていたライラさんの手元に届いた。
うまいこと、僕が世話になった人達に届いたようだ。
結婚式には是非呼んでもらおう。
とても幸せな気分のまま結婚式は終了した。
この後は会場を変えてパーティーだ。
僕たちは皆に祝福の言葉をもらったり冷やかされたりした。
ブーケを受け取った2組を冷やかし返したりもした。
それらが終わり、僕はユイとリリィと3人で夜風に当たっていた。
タニアは今日ディーラさんの家に泊る予定だ。
サーシャちゃんと仲良くしているようなので、安心だろう。
「ユイ、リリィ、僕は幸せだよ。2人とも幸せにするからね」
「はい……。でもわたしは今のままで十分幸せですよ」
「あたしも……アルといられればなんだっていいよ」
「じゃあ今よりもっと幸せになってほしいな。そしたら僕も今より幸せになれるから」
ユイとリリィの幸せが僕の幸せ。
それを考えるだけで幸せになれるんだ。
「わかりました。アルの幸せのために幸せになりますね」
「あたしももっと幸せになるね。まずはそうだなあ……アルとユイの子供が見たい」
「子供かあ、たくさん欲しいね。ユイは男の子と女の子どっちが欲しい?」
「どっちも欲しいです。ところで子供ってどうやって作るんですか?」
「アルに教えてもらおう。きっと楽しいことだよ」
「そうですか、楽しみです」
両方の場合は先に女の子が欲しいかなあ。
リリィはもうすぐ大きくなってからとして、まずはユイと子作りか。
ちゃんと教えることができるかな。
楽しみだけど少し緊張するな。
「2人ともたくさん子供も作ろうね。そしてみんなで幸せになろうね」
「はい! あ、明日から赤ちゃんの服縫いますね。忙しくなりそうです」
「気が早いねユイは。あたしの子供の時もお願いするね」
「もちろんです」
今から作り始めるとなると、すごい数になりそうだ。
ユイのお店ラインナップに赤ちゃん用の服も並ぶかもしれないな。
夢は広がる。
さて、そろそろ夜風が冷たくなってきたので2人を抱き寄せよう。
2人とくっつくと自然にこの言葉を言いたくなる。
「ユイ、リリィ、愛してるよ」
「はい、わたしもアルを愛しています」
「あたしも愛してるよ」
「そろそろ戻ろうか。僕たちの家へ」
僕たちは3人寄り添って家へと向かった。
これからお風呂に入って……子作りが始まるのかもしれない。
ユイは子作りの仕方を知っていったいどんな反応をするんだろう。
そしてリリィはその時どうするんだろう?
いろいろと思いがめぐるが、ひとつだけわかっていることがある。
僕もユイもリリィも……きっと幸せになれるんだ。
ずっとずっと……この先何年も何十年もだ。
だってこんなにも素敵なお嫁さんが2人もいるんだからさ……。
最後まで読んでいただきありがとうございました。




