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63.違和感の正体

 爆発音が聞こえた森に向かって僕とキィさんは走っていた。

 ユイとリリィになにかあったのかもしれないので僕は焦っていた。

 大自然さん、なにかわかりませんか?


《あのタニアという娘がなにかしたようだ。リリィもユイも怪我はしているが無事だ。急げ》


 タニアが? そんな力があったのだろうか。

 とりあえずユイとリリィを助けなくては。


 森に入って少し進むと、フードをかぶった2人が倒れているのが見えた。

 タニアを連れて行動ということで顔を隠しているのだろう。

 でもそのタニアはいないようだ。


 すでにユイとリリィだとわかってはいるけど、キィさんもいるので近づいて顔を確認する。


「これは……ユイ、リリィ、大丈夫!?」


 反応がないから気絶しているのだろうか?

 大自然さんは無事と言っていたけど、怪我を治療しないと。


「アルバート様のお仲間様でしたか。すぐ回復魔法をかけますね。お2人は触媒となるものを持たれていますか?」


「あ、何も持ってないはず……」


「では用意しますね」


 回復魔法は使われる側が触媒を用意しておくのが普通のようだけど、この2人は必要ないと思って用意してないんだ。

 ふと周りを見渡すと、ユリアの花がちらほら見えた。

 まだそんな日もたっていないのに、さすがは成長の早い花だ。

 あれを使おう。


「キィさん、ちょっと待ってください。そこにいいものがあるので」


「え? あの花ですか? なんだか見たことがない物のような……」


「最近見つかった新種で、あれで回復魔法の触媒になるんです。せっかくなので教えますね」


 というか男の僕では使えないので、キィさんに使ってもらう必要があるわけだけど……。

 僕はユリアの花をユイとリリィの周りに並べた。

 生えてるぶんだけでは足りないので、かばんからもいくつか取りだす。

 そしてさらに呪文を書いたメモを取り出してキィさんに渡す。


「これを一緒に唱えてください。僕の手に手を重ねていただけますか?」


「はい、でもわたしに使えるのでしょうか?」


「大丈夫です、僕を信じてください」


「はい……」


 そして一緒に呪文を唱え始める。

 キィさんは力を覚醒させた僕のことをある程度信頼してくれているようなので、少し力を借りることができるはず。

 キィさんの魔力と、僕のユイとリリィへの想い……これを合わせればそれなりの効果のある魔法になるはずだ。


 そして魔法は発動し、ユイとリリィは光に包まれた。

 傷が癒えていくのを感じる。


「すごい……こんな簡単に使えて効果のある魔法だなんて……」


「キィさんありがとうございます。また今度詳しくお教えしますね」


「え? いいのですか?」


「はい、実はこの魔法を広めようと思ってるんですよ」


 ユリアの花が咲き誇れば、誰かれ構わず伝えようとしていた魔法だ。

 知り合いであれば、なおさら使えるようになってほしい。


 さて、ユイとリリィは気絶したままか……。

 僕が2人を抱きかかえようかな……ユイ、力を貸してね。

 2人を片手ずつで持ち上げると、2人とも僕の腕にしがみついてきた。

 気絶した状態でもくっつこうとしてくれるとは嬉しい限り。


「アルバート様……力持ちなのですね。そんな軽々と2人も持ち上げるなんて」


「大切な2人だから持ち上げられるんですよ」


「そ、そうですか……」


 僕の言葉をのろけと受け取ったのか、少し顔を赤くするキィさん。

 今度カイルさんに僕と同じようなことを挑戦してほしいものだ。

 さすがに無理か……。


「ではいったん戻りましょうか。ここを調べる必要もあるでしょうけど、まず2人をどこかで休ませたいんです」


「わかりました」


 森を出て少し歩くと、カイルさんとミィさんがやってくるのが見えた。

 ミィさんは小さな女の子……タニアと手をつないでいる。

 警戒せねば。あと僕は初対面のはずなので知らない振りをしよう。


「アルバート君、なにがあったんだい?」


「僕の仲間が何者かに襲われて倒れていましたが無事です……。その子は?」


「そこを走っているところを保護したんだ。どうもヴァルマンの娘さんらしい」


「なんで……」


 タニアがぼそっと小声でつぶやいた。

 本来なら聞こえないような声だが、周りの空気が力を貸してくれたらしい。

 今の言葉は……なんでユイとリリィが無事なのかって意味だろうか?

 やはりタニアがなにかした?


《その娘が地下の隠れ家に来てからの記憶はまだ消していない。どうする?》


 うーん……消すと今さっき自分が何をしたかも忘れてしまうのかな。

 でもこのままだとやっかいなことになりそうだ。

 お願いします。


「んっ……!」


「あれれ? どうしたの?」


 タニアが急に倒れ、慌てて抱き起こすミィさん。

 これで記憶は消えたのだろうか。


《そのはずだ。そしてこの反動で数時間は眠ったままとなる》


 それなら安心。

 タニアが何をしたのかについては、ユイとリリィが目覚めたら事情を聞くとしよう。

 ひとまずカイルさんと事情を話しあってと……。


「では僕とキィが現場を見に行ってくるよ。アルバート君は状況を報告しておいてくれ。ミィはその子をちゃんと送り届けてね」


「はい、ではお願いしますね」


「わかりました」


 というわけで今度はミィさんと一緒に行動だ。

 ヴァルマンの別荘へと向かうと、護衛らしき人が警戒をしていた。

 先ほどの爆発音のせいだろう。


 事情を話すと、タニアが別荘へと連れて行かれた。

 ヴァルマンはさぞかし喜ぶことだろう。

 敵を喜ばせるのは悔しいが、あんな小さな子が死ぬよりはましと思っておこう。


 そして僕はユイとリリィを敷物の上に寝かせた。

 ゆっくり寝かせてあげたいけど、今はわりと緊急事態だ。

 起きてもらおう。


「ユイ、リリィ、起きて」


「ん……ご主人様?」


「うーん……?」


 声をかけたらあっさり起きてくれてなにか嬉しい。

 まずは体に問題がないか確認しなくては。


「2人とも大丈夫?」


「はい……なんとか。いったい何が起きたのでしょう?」


「なんかね、カーダの魔法陣で攻撃されたみたいなんだ」


 え? カーダは間違いなく死んだはずだ。

 あっさりすぎてたから、実は生きていたというよくあるパターン?


「カーダが生きていたの?」


「わかんない……でもあれは間違いなくカーダの魔法陣だよ。あたしとユイは防御用の魔法陣を体に描いてあったから無事だったんだ。あれがなかったら死んでたよ」


 カーダは2人を殺すつもりで魔法陣を使ったと……。

 そうすると、さっき2人が無事で驚いた感じだったタニアが怪しい。


「タニアはその時どうしてた?」


「わかんない……近くにいなかった?」


「タニアが魔法陣を使って攻撃してきたってことはない?」


「タニアはわたしが抱っこして運んでいたんです。そいうえばなにかぶつぶつ言っていたような……」


 タニアが魔法陣を使ったと考えるほうが自然かな。

 いや、使えること自体がおかしいわけだけど……。

 ん……カーダが乗り移ってたとか?

 それでいろいろと不自然だった点が納得いく気がする。


「ねえ、カーダがタニアに乗り移ってたなんてことはないかな?」


「あ……それだとわたしのことがわからなかったのも納得いきますね。カーダはわたしのことがわかりませんでしたし……」


「それならあの不自然さも納得がいくね。体と中身が別人だったわけだし……」


「そうだね、あの時死んでいた奴隷の女性はその邪法を使うために生贄にされたんだろうね」


「タニア……今朝した会話は嘘だったのですね……」


 ユイはタニアにお姉ちゃんと呼ばれて、少し嬉しそうに過ごしていたんだ。

 あれはタニアの意思ではなくカーダの演技だったということになるな。

 またもあいつはユイに悲しい思いをさせた。

 なんとか倒さないと……。


「なんとかしてカーダを倒そう。でも体はユイの妹なわけだし、あのまま殺すわけにもいかない。なんとか追い出さないとね」


「もっと早く気付けばよかったね……あの隠れ家で気づいていれば、追い出す魔法も作れたかもしれない……」


「魔法作れそう?」


「うん、不自然なことを自然にするのはそう難しいことじゃないよ。あ、今あの子はどこにいるの」


「あ、言ってなかったね。ついさっき記憶を消してもらって、今はヴァルマンの別荘の中にいるよ」


「そっか、厄介だね……」


 さっきの大自然さんの説明だと、タニアはあと数時間眠ったままとなるはずだ。

 なんとかこの間にカーダを追い出してしまいたい。

 病気を治すとか言って近づけないだろうか……。

 いや、僕らがそれを言っても信じてもらえないだろうな。


 うーん……いい方法はないものか。

 カイルさんたちに協力してもらうのもありだな。

 よし、ちょっと一芝居うってもらおうか。


「ユイとリリィはここで休んでてね。カイルさんの様子を見てくるよ」


 そう告げて、僕はカイルさんのいる森へと向かうのであった。

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