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62.敵の懐へ

 ユイの妹タニアがなにかおかしい。

 でもなにがおかしいのかはよくわからない。

 とりあえずそれはおいておき、病気とやらを確認することにした。


 まずユイがタニア抱きしめ、僕とリリィがユイにくっつく。

 いつものこの形で調べてみよう。


「あの……お姉ちゃん?」


「大丈夫です。お姉ちゃんに任せておいてくださいね、タニア……」


「ん……」


 タニアは不思議そうな顔をしている。

 眠らせてからでもよかったけど、起きている方がいろいろ確認しやすいはずだ。

 なお、ユイがタニア様と呼んでいたのはやめさせた。

 あれを聞いているとタニアのことがますます嫌いになっちゃいそうだったから……。


 ではさっそく3人で念じて病気を調べる。

 主にはリリィの力で大自然の知識を借りるんだけどね。

 数分後……リリィが口を開いた。


「んー? 健康体そのものだね。病気じゃあなさそうだし、呪いがかけられているような不自然さもないよ」


「てことは病気はやっぱりカーダのせいだったのかな?」


 こないだした予想では、カーダがユイに何らかの邪法をかけていて、それを僕とユイの力で跳ね返したことでその邪法がタニアにいってしまったと考えていた。

 その予想通りだったのだろうか?


「うーん……ああいう邪法は術者が死んだとしても消えないらしいんだけど……」


 てことは予想と違う邪法だった?

 うーん、考えていてもわからないな。

 治ったのであればそれでいいか。

 本人にも聞いてみよう。


「タニア、今まで病気だったんだよね?」


「は、はい……昨日まで苦しくて寝込んでいたのですが、今は平気みたいです」


 本人も大丈夫そうか……。

 とりあえずよしとするべきか。


「タニア、もうすぐお父さんの所に帰してあげるからね。それまでもう少し休んでて」


「はい……ありがとうございます」


 そしてタニアのことはユイに任せ、僕とリリィで街の様子を見に行くことにした。

 でもその前に、ヴァルマンの屋敷が燃えて避難しているという情報をディーラさんに伝えるべく手紙を書いて魔法陣に放り込んでおく。

 万が一この手紙がうまく届かなかった時のために、僕たちが関与していることは書かない。

 この状況を活用して商売が成功する方法を考えてもらおう。




 そしてリリィと2人手をつないでガナードの街へ向かう。

 ヴァルマンの屋敷はどうなったのやら。

 聞かれたらまずい会話もあるので、心で会話だ。


『リリィ、昨日見た時点でヴァルマンの屋敷はどうだったの?』


『よく燃えてたし、かなり崩れてたよ。屋敷を支える柱がだめになるように仕掛けてあったんじゃないかな』


『死ぬ瞬間にあんなことをするなんて厄介な奴だよね。でもなんでリリィの魔法陣が通用しなかったんだろう?』


『死ぬ瞬間、自分の命を犠牲にして魔力を強化したんじゃないかな。もしくは……あの時いつの間にか死んでた奴隷の女の人になにかしてたのか……』


 なるほど……カーダ自身か、奴隷の女性か、生贄にできる存在が2人いたのか。

 どちらか一方かもしくは両方か。

 待てよ? 実は気付かないうちに他の魔法も発動してたりしないだろうか。

 警戒しなくては……。



 そしてヴァルマンの屋敷へと到着した。

 見事なまでに崩れているなあ。

 あれでは中にいる死体の確認もできないだろうな。

 地下はどうなってるんだろう?


『地下にあった空間もなくなってるみたいだね。がれきで地下室も洞窟も埋まってるよ』


『だとしたらカーダの死体もつぶれたかな。あれが発見されると、明らかに殺されたってわかる状態だったから』


『大丈夫だと思うよ。悪人を退治したアルが捕まるなんて嫌だしさ』


 それなら安心か。

 でもこういう時って実は生きてたりするという定番もあるのが不安だな。

 間違いなく首を斬ったんだけど、その後急いで逃げたからなあ。


『首を斬られて生きている人間っていると思う?』


『さすがにいないと思うよ。それにアルが斬った瞬間、命の気配が間違いなくひとつ消えたから心配しなくていいよ』


 じゃあ間違いなくカーダは死んだってことでいいかな。

 次はどうしようか。

 崩れた屋敷を見ていてもしょうがないな。

 あ、なにか叫んでいる人がいるぞ。


「ただいま腕の立つ用心棒を募集しています。報酬は存分に用意いたします。冒険者ギルドにも依頼を出しておりますが、急ぎですので直接来ていただいても構いません」


 ヴァルマンが用心棒を募集しているようだ。

 昨日の一件で命を狙われてると思いこんでるからだろうな。

 当のヴァルマン本人はどこかに避難しているのだろう。


『ねえアル、あの募集に乗っかればヴァルマンの隠れ家が簡単にわかるね。それでタニアをどさくさまぎれに帰しちゃうってのはどうかな。もう病気は問題ないみたいだし』


『そうだね、そうしようか。僕が先に行くから、その気配を追ってユイとタニアと一緒に来てくれるかな』


『えと……アルは1人で大丈夫?』


『大丈夫だよ、今日はユイと離れているけど……ユイの力をある程度借りれるみたい。1人でもある程度戦えるよ。そもそもヴァルマンは命を狙われてないしね』


『わかった、じゃあお願いね。あたしは引き受けたのを確認したら戻るよ』


 タニアを帰すのもだし、敵であるヴァルマンを近くで見ておきたい。

 では用心棒を引き受けると伝えに行こうか。

 と思ったら、見たことのある顔……カイルさんたちの姿が見えた。


「やあアルバート君、君も見物かい? いったいなんでこんなことになったんだろうね。用心棒を探してるらしいけど、この惨状を見たら引き受け手は少ないだろうね」


「こんにちはカイルさん。実はちょっと思うところがあって、引き受けようと思ってるんですよ」


「おや、そうなのかい? では僕もお供しようかな。君と一緒だと楽しいことが起きそうだしね」


「そうですか、では一緒に行きましょう」


 これは心強いかもしれない。

 なにも起きないとは思うけど、知ってる人がいるのはありがたい。

 あとカイルさんとミィさんキィさんの3人の仲良しっぷりも見ておきたい。


 そして用心棒を引き受けた。

 僕は今1人だけど、後から仲間が合流するとも伝えておいた。

 そして急いで向かってほしいと言われて馬車に乗り込む。

 リリィはそれを確認して家へと戻ったようだ。


 馬車の中でカイルさんたちとのんびり会話だ。


「それにしても君が1人だけでいるのは珍しいね。常に一緒にいるものだと思っていたよ」


 そう言われると1人で行動って初めてかな。

 もっと寂しいかと思っていたけど、そうでもなかった。


「常に心がつながっているので問題ないんですよ。それにすぐ合流すると思いますし」


「そ、そうなんだ……さすがだね。でも今から向かう場所がどこかも教えてもらってないけど、合流できるのかい」


「はい、離れていてもどこにいるかくらいはわかりますからね」


「あははっ、さすがだね。僕もミィとキィとかなり仲良くなったと思ってたけど、君には敵わないや」


「いえいえ、カイルさんたちもたいしたものですよ」


 なんせ馬車の中でもしっかりくっついてらぶらぶなオーラを出しているもの……。

 なんていうかうらやましい。

 やっぱりユイとリリィに早く会いたいな。


 そして馬車の中でカイルさんの活躍譚を聞きつつ過ごした。

 その話は主に、ミィさんとキィさんがいかに活躍したかだ。

 それを話す時のカイルさんの嬉しそうな顔がなんともいい。

 ユイとリリィのことを話す時の僕もこんな顔なんだろうなと思った。



 そして3時間ほどで到着したようだ。

 ユイとリリィもすでに出発しているかな。

 あの2人であれば馬車より早く移動できるだろうし、すぐにでも合流できると思う。

 近づいている気配も感じるし。


 ヴァルマンの別荘? らしきところは小高い丘にあった。

 見晴らしが良くていい場所だ。

 あの中に引きこもっているようで、出てくることはなかった。

 ま、いちいち護衛に挨拶するような男でもないかな。


 僕たち4人は2人ずつに分かれて見張りをすることになった。

 カイルさんとミィさんが屋敷の東側、僕とキィさんが西側だ。

 カイルさんとキィさんを引き離して何か申し訳ない。


「キィさんすみません。僕がいたせいでカイルさんと離れちゃいましたね」


「いえ、何も問題ないですよ。アルバート様のおかげでわたしとミィはすごく幸せになりましたので、ずっとお礼を言いたかったんです。ありがとうございます」


「そう言っていただけると僕も嬉しいです。キィさん、ちょっと僕の目を見ていただけますか?」


「あ、はい」


 キィさんの槍の才能はどれだけ覚醒しているのか見てみたくなった。

 カイルさんがキィさんを大切にすればするほど強くなる。

 さてさて……。


 確認した結果、7割ほど覚醒しているようだ。

 この短期間でこれだけならば、このままいけばもっと強くなることだろう。

 もっともっと仲良くなってほしい。


「どうやらカイルさんに大切にされているみたいですね」


「はい……もともと優しい方ではありましたが、あれ以来さらに優しくなりました」


「もともと優しかったんですか?」


「はい……奴隷に優しくするなんておかしなことなので、普段は周りを気にしてわたしたちをぞんざいに扱っていましたが、あれ以来それも気にしなくなりまして……」


 なんだ、カイルさんはもともと才能があったわけか。

 ラルフさんもだし、そういう人って多いのかな。

 この世界の常識が邪魔をしているのか……なんとかこの空気を変えたいものだ。

 元凶はどこらにあるんだろうなあ……。


 なんてことをのんびり考えていると、突如森の方から爆音が聞こえてきた。

 ディーラさんやヴァルマンの屋敷が爆発した時と同じ感じだ。

 いったいなにが?

 なんとなくだが、その場所からユイとリリィの気配も感じる気がする。

 僕は猛ダッシュで現場へ向かうのだった。

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