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59.攻撃開始

 夜になり、僕たちはヴァルマン邸の近くへとやってきていた。

 これまでしっかり休んで作戦も立てた。

 今から少し動いてみようと思う。


「リリィ、どうかな? 中の気配を読みとったりできそう?」


「うーん……難しそうだね。外部からの魔力を乱すような結界が貼られているみたい」


「そうか、用心深いみたいだね」


 ライバルとなりえるディーラさんの屋敷を燃やすくらいだ。

 逆に同じようなことをされることを考えて対策しているのかもしれない。


「たぶんこれもあいつの魔法陣だよ。今朝作った魔法陣をあの屋敷全体に描いてみようか。きっと効果を消せるはずだよ」


「そんな大きな魔法陣作れそう?」


「うん、地中に時間をかけて描いてみようよ。また疲れるだろうけど、発動させるのは休んでからでもいいしさ」


「よし、やってみよう」


 というわけで、夜中にデートしていちゃついてるカップルを装いつつ魔法陣を作る作業を開始した。

 とはいえ、いつまでもここにいるわけにはいかない。

 ある程度魔法陣を作ったら、地下の隠れ家に戻った。


 隠れ家でも魔法陣作り作業は続行だ。

 魔法陣は地中に作っているので、ここからでも作業ができるという便利な状態だ。

 そして僕らは疲れ切って眠りにつく……。



   ***



 次の日も魔法陣作りは継続したが、休憩も必要だ。

 昼過ぎに街を散歩しようということになった。

 そしてふと思いついたことがあって、奴隷管理ギルドへと来ていた。

 

 例の男が邪法を使うための生贄としてユイに酷いことをしていたんだ。

 他の奴隷にも酷いことをしているのは間違いない。

 ユイのようにぼろぼろにされて捨てられた奴隷はいないか確認したいんだ。


 聞いた結果、捨てられた奴隷はいなかった。

 ついでに奴隷を過度に痛めつけることは禁止されているのか確認すると、一応禁止されているとのことだった。

 しかし、それを確認することもなければ罰則があるわけではない。

 あってないような決まりのようだ。

 将来的にはこの奴隷ギルドもつぶしてしまいたいなあ……。


 なんて考えながら奴隷管理ギルドを後にした。

 すると、出口でフードをかぶった人とすれ違った。

 リリィが何か言いたそうに僕を見るので、少し移動してから話を聞いてみた。


「アル、さっきすれ違ったやつだよ。魔法陣作ってるやつ」


「あいつが……もしかして奴隷を買いに来たのかな。ちょっと何を話してるか確認してみようか」


 僕たちは近くの路地で休んでいる風を装い、リリィに奴隷管理ギルド内の声を拾ってもらった。


『これはカーダ様、本日も奴隷をお探しですか?』


『ああ……生きのいいのが入荷してないか?』


『肉体労働向けでしょうか?』


『いや、心が強い奴隷がいい。なにをされてもめげないような……』


 カーダという名前が判明した。

 どうやら奴隷を探しに来たようだ。

 心が強い奴隷か……。


「アル、たぶんだけどね……例の邪法は希望を持った人を絶望させると効果が上がるんだと思う……」


「そっか……ひどい魔法だね……」


 僕は最初にあった時のユイの目を思い出していた。

 体がぼろぼろになって絶望的な状況だったにもかかわらず……生きようとしている綺麗な目だった。

 僕あの目に惚れたんだ。

 だからユイはあいつが魔法を使うのに適していたんだろう。

 僕がユイを助けて、あいつの魔法を消せたのは幸運だった。


「あの……ご主人様? 嬉しいですけど……少し痛いです」


「え? あ、ごめん……」


 無意識のうちにユイを抱きしめる手に力が入っていたようだ。

 あの時ユイに会えていなかったらと思うと、少し怖くなったみたいだ。

 おっと、意識を集中しなくては……。


『この女などいかがでしょうか?』


『悪くはない。だがあの女ほどの逸材はそうそう見つからないか……』


 あの女……やはりユイのことだろうか。

 いったいユイを使って最後に何をしようとしていたのやら……。


『おいお前、よく見るとなかなか美しい顔をしているな』


『え?』


『俺と一緒に来ないか? 奴隷ではあるがつらい思いはさせないぞ。美しいお前に私の身の回りのお世話をさせたいのだ』


『は、はい……。わたしなんかでよろしければ……』


『よし、決まりだ。こいつを買うぞ』


 買う奴隷を決めたようだ。

 台詞だけ聞けばいい話のようだが、なにか気持ち悪さを感じた。


「ご主人様……少し思い出しました。わたしもああやって優しい言葉をかけられたことがあります。そして、安心したところで裏切られるんです」


「希望を持たせておいて絶望させるってことかな。なんて奴だ……」


「酷い目にあわされる前に助けられるものなら助けたいね。魔法陣は今夜発動できそうだから、その時にあの奴隷の様子も見よう」


「そうしようか。とりあえずあいつが今から屋敷に戻るかだけ確認しよう」


 今すぐ助けるためにカーダをここで捕まえて、証拠と共に冒険者ギルドへ突きだす手もあるのだが、失敗した際のリスクが大きい。

 下手したら僕たちが犯罪者となってしまう。

 弱気ではあるが、今は昼だし慎重にいきたい。


「あいつの魔力の気配なら離れてても尾行できるよ。ところでさ……あいつがユイを見たら捕まえようとするんじゃない? ユイの顔は隠した方がいいんじゃないかな」


 ユイを探している感じはなかったけど、ユイを見たらまた利用しようとするのだろうか。

 そうだとしても、このままでいこう。


「いや、このままでいいよ。もしユイが狙われたとしても、抵抗できない被害者が出るよりその方がいい。ユイは僕が絶対に守るから」


「ご主人様……わたしもそれがいいです。被害者が増えるよりはわたしを狙ってほしい」


「そっか……そう言う気もしてたよ。あ、もちろんあたしもユイを守るからね」


「はい、リリィさんもありがとうございます」


 優しいユイは自分の代わりに他の誰かが犠牲になるのが嫌なんだ。

 だからこれでいい。

 いや、いっそのことユイを見せて反応を見ようか。


「いっそユイの姿を見せてみるのはどうかな?」


「いいかもしれませんね。わたしを狙って攻撃でもしてくれれば、話が早いです」


「うーん……いい手かもしれないけど、それで悪いこと起きないかな。例えばさっき買われた奴隷、さっきの感じだとしばらくは大事にするっぽかったよね。でもユイを捕まえるために、その奴隷を死ぬほどの目にあわせてなにか魔法を作りあげるかも……」


 なるほど……その可能性は考えていなかった。

 どちらの方法が被害を少なめにできるかわからないな。

 では予定通りに慎重にいこう。


「よし、どうなるか予想できないしもともとの予定でいこうか。ユイはそれでいいかな?」


「はい、かまいません」


 この後は、カーダが奴隷の女性と一緒にヴァルマンの屋敷に戻るところを確認した。

 そして僕たちも地下の隠れ家に戻った。


 そのまま魔法陣作りの作業をし、夜まで仮眠をとった。



   ***



 そして深夜、僕たちはまたヴァルマンの屋敷の近くへ来ていた。

 これからカーダの魔法陣を弱める魔法陣を展開する。

 いったいどんな反応を見せるのか。


「リリィ、お願い。魔法陣を発動させてみて」


「わかった、いくよ。そのまま中の気配を探るからね」


 リリィと一緒に集中して魔法陣を発動させる。

 次に屋敷内部の調査をして、声が聞こえる場所を探る

 お、どうやら見つけたようだ。


『カーダ様……こんなにも気持ちいい思いができるなんて、あなた様に買われてよかったです』


『ああ、幸せにしてやるからな』


『はい……』


『む? お前は寝ていろ。俺は少しやることができた』


『はい、おやすみなさいませ』


 なにか楽しいことをしていたようだ。

 とりあえず今は大切にしている段階のようで一安心。

 できれば今の幸せな気分のまま解放してあげたいところだ。


「どうやら結界を消されたことに気づいたようだね。動く気配を追うよ。あ……別の場所でも気配が……」


『ヴァルマン様! タニア様が急に苦しみ始めました!』


『なんだと!? すぐに向かう。おい、すぐにカーダを探して呼んで来い!』


 ヴァルマンと使用人の声かな?

 タニアというのはもしかして……。


「タニアはわたしの妹の名前です。なにかあったのでしょうか……」


「あ、もしかしたらなにかしらの魔法陣で病気の進行を抑えていたのかも……。それを消しちゃったから……」


「そんな……」


 そんな弊害が出てしまったか……。

 この魔法陣の発動は中止するべきなんだろうか。


「リリィ、魔法陣って今から止められるかな?」


「いや、もう無理かな……」


「そうですか……。ご主人様、続けましょう。わたしのわがままで予定が狂ってはいけません」


「ユイ……」


 妹を助けたいと言ってたけど、私情よりはあいつらを倒すことを優先してくれるようだ。

 ユイの気持ちを大事にしようか。

 震えるユイを抱きしめつつ、集中を続ける。


『おいタニア、しっかりしろ!』


『パパ……苦しいよお……』


『いったいなにが……お? 来たかカーダよ。早くこの子をなんとかしてくれ』


『ヴァルマン様、俺の魔法陣が一斉に解除されました。何者かから攻撃を受けているのかもしれません』


『なに!? いったいだれが……』


『心当たりはいくらでもあるでしょう。さらに俺の魔法陣が発動しにくくなっています。敵は強大のようです』


 対抗するために作ったリリィの魔法陣ってそんなすごいのか。

 これは思ったより楽勝なのかな。

 このままなにかしら攻撃を仕掛けたいところだ。

 さあどうするか……。

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