55.野望への道
さて、これから冒険者ギルドの広間にて僕の講義が始まる。
教えるの内容はもちろん、女性を大切にすることがいかに重要かということだ。
ここに来る人たちは女性パートナーを強くする方法を聞くつもりなのだろうけど、強くなってもらうには大切にしなければならないと知ってもらおう。
さて……緊張するけど始めるとしよう。
僕はユイと共に皆の前に立つ。
なおサーシャちゃんはラルフさんとライラさんコンビにお任せしてある。
見えるところにいてくれているようだが、親子に見えて何か面白い。
きっと未来はあんな光景が見られるのだろう。
「みなさん、今日はお集まりいただきありがとうございます。おそらくみなさんは女性パートナーに強くなってもらいたくて、ここへ来ていただけたのだと思っています」
とりあえず周りを見渡して反応を見ると、真剣に聞いている人もいれば、半信半疑な顔をした人もいる。
まずはユイの力を見せつけるべきだろう。
「では最初に僕のパートナーであるユイの強さを見ていただこうと思います。彼女のことを知っている人は少ないと思います。なにせ彼女は少し前までかよわい女の子だったんです。それが今はどれだけ強いかを見ていただきます」
そしてユイと僕はショートソードを持って対峙する。
「お、おい! 模擬戦はわかるが、その武器を使うつもりか? 怪我でもしたらどうするんだ?」
ラルフさんが慌てたように声をかけてきた。
最初は木製の剣を使うの予定だったけど、ユイと楽しく試合をしていたらすぐ折れちゃったんだ。
それにこっちのほうがユイの強さを見せつけやすい。
危険かどうかについては、ユイが僕に負けるわけはないし、ユイが僕を斬るわけもないので問題はない。
「ではみなさん、離れてくださいね。始めます。ユイ、いくよ!」
「はい!」
僕がユイに斬りかかってユイに防がれ、ユイの反撃を僕が防ぐ。
最初は単調に、そして徐々に速度を増していく。
こうやって戦っていると、ユイの動きが全てわかる。
ユイと心が通じ合っているようですごく楽しいな。
「すげえな……」
「ああ……最初はごっこ遊びと思ったが、2人とも達人級じゃねえか……」
「あれがちょっと前までかよわい女の子だったって嘘だろ……」
「というか男の方もすごいじゃねえか。あいつって新米冒険者だろ? なんであの強さで今まで目立つことなかったんだよ」
よし、いい感じに感心してもらえてる。
ここから魅せるための戦いかたをしていこう。
ユイとアイコンタクトをし、2人で後ろに跳んで距離をとる。
そして剣を腰においてかまえる。
2人同時に剣を振り放って衝撃波を飛ばす。
ユイが戦いにおいて最初に見せてくれた技だ。
僕もユイの力を借りることで使えるようになっている。
なお、この技が一般的に使われているものかどうかはよく知らない。
衝撃波は僕とユイの中心でぶつかり大きな音を立てつつ、衝撃の余波が僕らを襲う。
といっても強めに押されている程度なので踏ん張れば耐えることができる。
見ている人達は耐えていたり、軽く転んだりしている。
「な、なんだよ今のは……魔法か?」
「いや、あれは剣の技だな。よほどの達人であれば使えるらしいが……」
「なんなんだよあいつらは……」
簡単に使える技ではなかったようだ。
これならばユイの強さをかなりアピールできているな。
そろそろ決着をつけようか。
体勢を立て直した僕はユイにアイコンタクトをし、大きく跳びかかって斬りかかる。
それをユイが剣でガードするが……その衝撃でユイの剣が折れた。
ユイはそのまま剣を投げ捨てる。
「おお! 剣が折れたってことは勝負ありか?」
いいや、まだ終わらない。
ユイは剣がなくとも僕より強いんだから。
僕は再度ユイに向かって斬りかかる。
「お、おい! まだやる気か?」
「あれじゃあ死んじまうぞ!」
問題ない……僕はユイを信じてユイに剣を振り下ろす。
ユイは僕に向かって微笑み、剣を両手ではさみこむように止めてきた。
真剣白刃取り……間近で見ると惚れぼれするな。
そのままユイは剣を叩き折りつつ僕を蹴り飛ばした。
「うおお! な、なんだ今のは!」
「斬りおろした剣を素手で止めてそのまま折ったぞ」
「すげええええ!」
吹っ飛ばされた僕は床に尻もちをつく。
そこにユイが飛びかかってきて、いつの間に持っていたのか折れた剣の刃を僕の首筋にあてた。
誰が見ても僕の負けだ……やっぱりユイはかっこいいなあ。
そして……僕とユイは観客全員から拍手の嵐を受ける。
さて、ユイの強さもわかってもらえたのでこれから僕の話で洗脳……ではなく女性の素晴らしさを知ってもらおうと思う。
「今の戦いにおいて僕は本気でしたが、ユイは僕にあわせて手加減をしてくれていました。まだユイの本気を見せることができていないのが残念ですが、強さがある程度はわかっていただけたかと思います」
ユイは本気ではなかったとの言葉に皆はざわめく。
さっきは余裕を持った笑顔で僕に勝っていたし、信じてくれていると思う。
ユイの力を魅せることには成功したのだろう。
「さて、ここから本題に入りますね。これだけの強さを見せるユイが特別すごいというわけではないんです。実は女性というのは、みんなこのように何かしらの力を秘めているものなんです」
皆真面目な顔で僕の話を聞いてくれているようだ。
さて、話を円滑に進めるために僕の能力を軽くばらすことにしよう。
「僕はその女性の能力を引き出すきっかけを与えることができます。今日はここにいる女性全員にそのきっかけをプレゼントしようと思います」
その言葉で全員が喜んでくれているように感じる。
なんせ上手くいけばあっさりと強くなって活躍できるわけだものね。
もちろんこれから言うことを聞いてくれたらだ。
「僕が力を貸せるのはあくまできっかけだけです。そこから力を伸ばすには周りの仲間の協力が不可欠です。まずみなさん……女性が男性よりも劣っているとか、男の方が偉いといった考え方を捨てましょう。そんなことはできないって方は、今すぐ出ていっていただけるとありがたいです」
この言葉で、皆は少しざわめいた。
おそらくここにいる男の大半はそんな考えだったのだろう。
少し待つが、出ていこうとする人はいない。
先ほど見せたユイの強さがやはり魅力的だったのだろう。
「では順番に説明していきますね。一番重要なのは信頼関係です。例えば僕とユイの場合ですが、彼女は見ての通り奴隷の身分で、僕と初めて会った時点で奴隷の状態でした。でも僕は彼女のことを奴隷と思ったことはありません。大切な仲間だと考えています。あ、ちなみに今は仲良くなりすぎて恋人です。結婚もする予定です」
一応ノロけておくことも忘れない。
ふと話を聞いている女性を見ると、嬉しそうに目を輝かせている人もちらほらいた。
奴隷の身分でも幸せになれると考えているのかもしれない。
ラルフさんの奴隷であるライラさんは乙女な目でラルフさんを見つめていた。
やはりラルフさんに惚れているんだろうなあ。
「彼女の場合、僕と仲良くなる毎にその強さが増していきました。おそらくは、これからも強くなってくれると思います。これはみなさんも同様です。相手との絆が深まれば深まるほどその力が増していくはずです」
この言葉で、皆はパートナーと見つめ合う。
奴隷の女性と主人である男だったり、女同士で組んでいる冒険者もいるようだな。
男同士で組んでいる人は……がんばってパートナーを見つけてもらおう。
もし男同士で恋人だった場合は……僕にはどうしようもないな。
「みなさん、それで強くなれるなんて信じれないという顔をされていますね。でも以前にこのやり方を伝えたある冒険者は、パートナーの女性が強くなることで大活躍をしていると聞きます。とりあえず騙されたと思ってやってみていただけると幸いです」
ここから各女性の能力を信頼関係という条件付きで引き出していこうと思う。
あ、でも……もうひとつ条件を追加しておかないと危険だな。
「今からみなさんが能力を引き出すきっかけを順番にプレゼントしていきますが、その前にもうひとつお伝えしておきますね。どんなすごい能力を得たとしても、それを悪いことには使わないでくださいね。悪いことに使った時点で、その能力は消えます」
これでいい、悪人が混ざってたら大変だからね。
もしくは言葉巧みに女性を騙して悪事をやらせる男だっているかもしれない。
というわけで、順番に少し話をしながら条件付きで能力を覚醒させていった。
男主人と女奴隷のパートナーであれば、男が相手を大切にすればするほど、女性が男性を信頼すればするほど力が増していく。
女性単体や女性で組んでいる人にはまあ適当に能力を解放しておいた。
時間経過で強くなっていくことだろう。
女性同士で愛し合っていると言われたパターンは、男女の場合と同じ条件で2人とも強くなっていくようにしておいた。
男単体や男だけで組んでいる人には、相手を見つけたらまた来てくださいと言っておく。
男同士で愛し合っている場合……なんか片側の男性が心は女というので試した結果、能力を解放することができた。
僕の能力は割と応用が利くようだ。
そんなこんなで、本日は30名近い女性と1人の男の能力を引き出した。
ここからも少しずつ世界が変わっていくに違いない。
楽しみだなあ……。
今回の投稿で20万文字超えました。
もっと短くまとめるつもりでしたが、難しいものですね。
ここまで読んでくださった方は、もうしばらくおつきあいください。




