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51.魔法の完成

 花を育てる作業は次の日の夜に終わった。

 なんていうか……昨晩に絆が深まったおかげか、異様な効率のよさで作業が進んだ。

 目の前の花壇には大量の花が咲き誇っている。


 もちろん種を外にもまいた。

 花の種は風に乗り、世界中に広がっていくことだろう。

 1週間もあれば育つ植物らしいので、そのうちどこでもユリアの花を見ることができるようになるはずだ。


 そして魔法もほぼ完成した。

 予定通り女性にしか使えない魔法となっている。

 術者が対象者のことを想っていれば想っているほど効果が上がる。

 さらには、対象者が術者を大切に想っている場合も効果が上がる。

 この魔法で女性が尊敬される存在になってほしいという、僕のわがままがふんだんに詰め込まれた魔法だ。


 まだ試してはいないが、このユリアの花さえあれば女性は誰でもこの魔法を使えるようになるはずだ。

 花が咲き誇り、事件が落ち着いたら教えて回ろうと思う。

 教本を出すのもいいかもしれないな。

 なお、女性にだけ使えるのは黙っておく。

 すぐに誰かが気づくだろうから、それを待ちたいんだ。


 明日はディーラさんの治療に向かおうと思う。

 でもその前に、今夜はユイの治療を優先しよう。

 大量の花を用いれば効果が上がるかの実験も兼ねている。

 というのは建前で、僕がユイを早く治したいだけだけど……。


 裸のユイをベッドに寝かせ、周りを花で囲む。

 これは昔からある体の傷も治せないか試すためだ。

 なお、僕はリリィに目隠しをされているのでユイの体が見えないという残念な状態。

 リリィの誘導でユイの横に寝かされて抱きつく。

 

 最後にリリィが僕とユイの上に乗っかって準備完了だ。

 若干いやらしい気分にもなるが、そこは許してほしい。


「じゃあはじめるね。ユイの火傷は絶対に治すよ」


「もちろん、綺麗なユイを綺麗なユイに戻すんだ」


「ご主人様ってば……。2人ともよろしくお願いします」


 相変わらずおかしなことを僕は言っているが、他に言いようもない。

 だってユイの顔は火傷してようと綺麗なわけだし……。


 そしてユイとリリィが呪文を唱えて念じ始める。

 ちなみに、呪文は声に出さなくとも念じるだけでいいはずだ。

 声に出しているのは2人の息を揃えるためだ。

 僕は男でこの魔法が使えないので、2人に力を貸すだけの状態。


 あたたかな光が僕たちを包み、魔法は完了した。

 さてどうなったのか……目隠しをされた僕は見えないのでリリィの言葉待ちだ。


「すごい……完全には消えてないけど、以前より少しだけよくなってるよ。もしかしたら、続けていけば全部消せるかも?」


 それは朗報だ。

 ユリアの花がどこでも取れるようになれば、毎日だってこの魔法を使える。

 ユイが傷一つない体に戻るのも可能かもしれない。


「えっと……ユイの体を見たいんだけど……」


「だ、だめだよ。乙女の肌だぞ!」


「かまいません、ご主人様に見られたいです」


「ユイ、はしたないからだめだってば! 常に見せてると飽きられちゃうかもしれないし、そういう時まで取っておくんだ」


「今がそういう時ですよー」


「今じゃないー!」


 見たい僕と見られたいユイと、なにか真面目なリリィ。

 たぶんだけど、裸をしょっちゅう見て見慣れるのは良くないと言っているんだと思う。

 一緒にお風呂に入っている夫婦は仲が冷えやすいとも聞いたことがあるし、滅多に見れない方が価値が上がるのだろう。

 リリィの不思議な気遣いがなにか楽しいこのやり取りである。


「よし、ユイはまず服を着よう」


「ご主人様に見せたいです……」


「じゃあ下着姿ならいいから、そこは譲らないよ」


「はい……じゃあリリィさんも一緒に下着姿になりませんか?」


「や、やだよ! なんでそうなるのさ」


 下着姿か……ユイもリリィも見たいなあ。

 おかしな流れだけど、ユイを応援してしまう僕であった。


「リリィさんが脱いでくれなきゃわたしは服を着ません!」


「意味がわからないってば……。はあ……じゃあアルに少しだけユイを見せてあげるよ。それでいいね?」


「はい、ありがとうございます」


 ユイの謎の説得により、ユイの裸体を見ていいことになったらしい。

 いや、裸体を見るのではなく少し消えた火傷痕を確認したいんだ、うん。


「目隠し取るよ」


「うん……」


 僕の目隠しが取られると、目の前には裸のユイが寝ていた。

 相変わらず美しい……火傷や傷跡だらけだけど気にならない。

 以前より良くなったかどうかはよくわからないな……。

 リリィはちょくちょく見ていたから気づいたのだろう。


「はい、これで終わり。ユイ、早く服を着なよ」


「もうですか……」


 僕の目はリリィの手によって塞がれているようだ。

 だーれだ、といちゃついている感じでなにか楽しい。

 短い時間だったけど、ユイの綺麗な体をしっかり目に焼き付けたぞ。


「もう充分だろ。ほら早く服着てよ」


「あ、いいことを思いつきました」


「え? な、なにする気だ……。や、やめてー!」


「うふふふふっ、リリィさん隙だらけですー」


「ひゃはああんっ、わ、脇の下くすぐるなー! ひゃああっ!」


 どうやらユイがリリィをくすぐっているようだ。

 リリィはユイの裸体を僕の視線から守ろうとしているのに、リリィは恩をあだで返された感じだ。

 リリィには申し訳ないけど、なんだか楽しい。

 ユイとリリィが仲良く遊んでるのってすごく好きなんだ。

 ま、今回のはリリィは楽しくないかもだけど。


「リリィさんが手を離したらやめてあげますよー」


「それはだめー!」


「じゃあそのまま持っててくださいね。リリィさんの服を脱がしてあげますー」


「きゃあー! ちょ、調子に乗るなー」


「ひゃああっ!」


 僕の顔からリリィの手が離れていった。

 何が起きたのかと思い、急いで振り向く。

 決して急いで裸を見ようとしたわけではない……。


「ご主人様……こんなになっちゃいました……」


 ユイの体は、たくさんの葉っぱに覆われていた。

 大自然の驚異の前にはユイも勝てなかったか……。


「勝負はユイの負けみたいだね……」


「こら、アルも何がっかりしてるのさ。アルがエッチだからユイも見せたがっちゃうんだよ」


「ごめんね、でも僕も男だから仕方ないんだよ」


「むう……」


 リリィがちょっと悲しそうだな。

 せっかく僕とユイのことを考えてくれてるし、ここはリリィの好意を大切にするか。


「あ、でも積極的に見せられるよりは、恥ずかしがって滅多に見せてもらえない方がいいかも……」


「そうなのですか……。じゃあ見せないですっ!」


「ユイって単純……」


 ということでこの件は解決……と思う。

 しばらくユイの裸を見ることはないのだろう。

 おそらくは、僕が欲望に負けてユイに迫るその日まで……。

 まあ今のこの状態で十分幸せなので、当分後だと思う……たぶん。


「よし、魔法は無事完成したし、明日はディーラさんを治しに行こうね。そのために、今夜はサーシャちゃんの家に戻って寝ようと思う。転移したら疲れちゃうからそのまま寝よう」


「はい。早く落ち着いたらここにずっと住みたいですね」


「えっと……ここよりサーシャちゃんの家の方がいいと思うけど……」


 リリィが申し訳なさそうにそう言ってきた。

 あ、サーシャちゃんの家をみんなで褒めて気に入ってたから、それを気にしてるのか。

 そうだった、リリィのおかげで手に入れたこの家も褒め倒そうと思ってたんだ。


「僕はここが一番好きだよ。3人で過ごせて、誰にも邪魔されない場所なんだからさ」


「わたしもですよ。わたしが一番安らげる場所はご主人様の隣ですが、この家だったら1人でお留守番してても寂しくなさそうです」


「そっか、よかった……。2人が嘘言ってないってなぜか判るし……嬉しいよ」


 リリィの安心そうな顔に、僕もユイも嬉しくなる。

 よし、では2番目に好きなサーシャちゃんの家に転移だ。

 すぐに使わない荷物はもうここに置いておくとして、出かける準備をする。

 向こうで何かあった時のために、パジャマではなく普段着になっておこう。


 そして3人でくっついて玄関から転移を開始する。

 転移自体はあっさりと終わるのだが、異様なまでの疲労感が体を襲う。


「2人とも大丈夫?」


「はい……なんとか」


「この魔法陣も疲れないように改良できないものかな……」


「できるものならしたいね……」


 とりあえず危険な気配もないことに安心する。

 すぐにベッドで寝たいところだが、寝る前に一仕事だ。

 ユリアの花の種をこの街付近にも飛ばさなくちゃね。


 外に出て綿毛のような種をまくと、風に乗って四方八方へ飛んでいった。

 たくさん咲き誇って、人々を癒す触媒になってね。


 それを無事終えて、部屋に戻って3人仲良く一緒に寝た。

 もちろん2人に愛の言葉をささやいて……。

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