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48.新たなる魔法

 僕たちは実に14日ぶりにガナードの街へと来ていた。

 すごくすごく久しぶりな気がする。

 まずはこの街の治療所に行ってみるかな。

 治癒魔法の触媒が余っていたら売ってもらいたい。


 あ、でもその前に……ユイの顔を隠すフード付きマントを買おうかと思っていたんだった。

 どうしようかな……ユイに必要か聞いてみようか。

 でも聞きにくいから少し遠まわしに……。


「ねえユイ、今日も綺麗だね」


「え!? あ、ありがとうございます……。いきなりでびっくりしました……」


「僕はユイを世界で一番綺麗だと思っているからね。それであの……」


 うーん、この先が言いにくいな……。

 ユイの火傷だらけの顔が周りから怖がられるかもしれないから、隠した方がいいかなんて聞きにくい。

 すごく失礼なことを聞こうとしているわけだし……。


「ご主人様? どうかされたのでしょうか……」


「アル、あたしに任せて。ユイ、ちょっとこっちへ……」


「え?」


 リリィがユイを引っ張って、僕から離れて行った。

 僕が何を言おうとしていたのか、リリィはわかったのかな?

 リリィも同じことを考えていたのかもしれない。



 少し待つと2人は戻ってきて、ユイが僕に話しかけてきた。


「あの……ご主人様。失礼なことを聞きますが許して下さいね。わたしと一緒に歩くのはその……恥ずかしかったりするのでしょうか? この顔はまた醜くなってしまいましたし……」


 リリィは僕が何を言おうとしていたかしっかりわかって、伝えてくれたみたいだ。

 ユイは予想通りの受け取り方をして、少し悲しそう。

 ここは少し恥ずかしいけど、ちゃんと本心を言っておこう。


「そんなわけはないよ。僕はユイといつだって一緒に歩きたい。僕が素敵な女の子を連れ歩いてると自慢したいんだ。信じてくれるかな?」


「はい、もちろん信じます。ご主人様がわたしのことを綺麗と言ってくださったのも信じます。今聞いたのは念のため確認したくて……」


「よかった。ごめんね、変なことを気にさせちゃって……」


「いえ、ご主人様はわたしのことを考えてくださったんですよね。でもわたしは大丈夫です。周りにどんな目で見られようと、ご主人様とリリィさんがいれば平気です。それにあの……これはわたしのわがままなんですが、ご主人様の前で顔を隠したくないんです。隠したらご主人様に見ていただけません……」


 僕にずっと顔を見ていてほしいってことか……。

 なんて嬉しいことを言ってくれるんだろうか。

 よし、ユイが気にしないのなら僕も気にしないことにしよう。


「ユイ、僕のわがままも同じだよ。僕もユイの顔をずっと見ていたい。隠す方がユイのためかと思ってたけど、間違ってたみたいだね。ユイ、僕にずっと顔を見せててほしいな」


「はい、もちろんです!」


 ユイが僕に抱きついて顔を見上げてきた。

 顔は火傷だらけだけど、僕には世界一美しく見えている。

 特に僕を見つめるこの綺麗な目……一生見ていたいな。


「ねえねえ……あたしもアルと同じ気持ちだからね……」


 リリィが少し甘えるような声でそう言ってきた。

 僕の考えていたことをわかってくれたリリィだ。

 ユイに対する気持ちも同じなのだろう。


「はい、もちろん知ってます。リリィさんにも!」


「あわわっ!」


 今度はリリィに抱きつくユイ。

 リリィの方が小さいから、抱きかかえる形となっている。

 微笑ましくなる光景だなあ。


 これで懸念していたことがひとつ消えたかな。

 あの火事の救出劇で僕をかばって火傷を増やしたユイだけど、問題なさそうだ。

 僕がちゃんと責任を取って……いや、この言い方だとユイに申し訳ないな。

 これからもユイと楽しく過ごしていこう。それでいいんだ。




 というわけでまた3人仲良く手をつなぎ、治療所へ向かった。

 この状態で周りから変な目で見られるのも慣れっこだ。

 ……と思っていたのだけど、なにか不思議な光景がちらほら見える。

 手をつないで歩いている男女が何組かいたのだ。


 これは……時代が僕に追いついてきたのだろうか?

 なんてことを考えながら治療所へと到着した。


「いらっしゃいませ。おや? あなたはこないだの……ドラゴンの角はまだ使っていないみたいですね。そちらのお嬢さんは火傷が増えているようにもお見受けしますが……治療に来られたのですか?」


 以前もお世話になった治療魔法の使い手だ。

 とりあえず用件を言おうか。


「そうじゃないんです。知り合いの家が火事となって重傷でして……治療の触媒が不足しているんです」


「そうでしたか。しかしここでも最近不足しておりまして……。お譲りできるほどはないのです」


「やはりそうですか……」


 だめか……。

 この街に大量の触媒があるはずなんだけど、知らないのかな。


「この街の商人が治療の触媒を大量に集めているという噂を聞いたのですが……ご存じないですか?」


「そうなのですか? 触媒を集めているのは知りませんが……。あ、そう言えばヴァルマン商会の娘さんが原因不明の病気と聞いたような……」


「そうなんですか……」


 ヴァルマンの娘……ということはユイの母親に産ませた子か。

 ユイの妹ってことになるな。

 だからドラゴンの角を欲しがっていたのだとしたらつじつまがあうな。


 とりあえずここでは触媒が手に入らないとわかった。

 他を探すとしようか。


「それでは他を探してみることにしますね」


「お力になれずすみません……。そちらのお嬢さんの新しい火傷は、急げば消せると思うのですが……高級な触媒がないことが悔やまれます」


「いえ、気になさらないでください」


 ユイの火傷……新しいのはドラゴンの角無しでも消せるのか。

 いいことを聞いたけど、現状だと触媒はディーラさん優先だ。


 治療所を出てどうしようかと3人で考える。

 あとはヴァルマンからなんとか奪うしかないのだろうか。

 しかし、いかに悪人といえどもそれをやっては僕たちが犯罪者になる。


「なにかいい手はないかな……」


「あの……その前にご主人様、ひとつよろしいでしょうか?」


「うん、どうしたの?」


「先ほどわたしの妹が病気という話を聞きましたよね。わたし……なんとかあの子を助けたいのですが……」


 ユイの妹……ヴァルマンと一緒にユイをいじめていたはずだ。

 それなのに助けたいのか。

 僕はユイのお願いを何でも聞きたいけど……。

 悩んでいるとリリィが喋り出した。


「ねえ、ユイのその火傷とか傷……妹にもつけられたんだろ? それなのに助けたいの?」


「はい……だってわたしのお母さんの子供で、わたしのたった1人の家族です。わたしをいじめたのだって、きっと父親の悪影響で……」


「そっか……」


 たった1人の家族か……。

 妹はまだリリィの見た目くらいの歳だったかな。

 今からでも更生は可能だろうか。

 そうするにはヴァルマンをこらしめないとできないけど……。

 とりあえずユイの願いは叶えよう。


「わかったよユイ、もし機会があれば助けよう」


「ご主人様……ありがとうございます」


「アルがそう言うならあたしも協力するよ」


「リリィさんもありがとうございます」


 ドラゴンの角を求めるほどの病気……治せるかはわからないけど、ユイのために努力するとしよう。


 では、話を戻そう。

 触媒探しにいい案はないか皆で思案する。


「触媒になる植物を栽培できたらいいんだけど、どうもこのあたりでは育たないみたいなんだよね。でもいざとなったらやってみてくれるってさ」


 自然の力でちゃちゃっと作ってくれるのも期待したが、そう上手くはいかないか。

 ユイの回復魔法を鍛えて、そこらの治療術師以上の腕にならないものか。

 弱い触媒からでも大きな効果を得られるとか……。


「ユイ、回復魔法の修行ってできると思う?」


「どうでしょうか……怪我をしたのがご主人様であれば、いくらでもひらめきそうですけど……」


 ユイが力を発揮できるのは僕を守る時だからなあ。

 さすがに万能とはいかないか。


「あ、そういえばアルってあたしらをなでるだけですごく回復させてくれるよね。あれはなんで?」


 なんでだろう?

 そういうものだと思っていたけど、触媒が不要ってことはすごい力かもしれない。


「ごめん、よくわからないんだよね」


「そっか……その力をあたしら以外にも使えればいいのにな」


「そうですね……。いつもみたいに3人で協力して魔法を作れないでしょうか? 転移魔法陣を作ったり、お馬さんの怪我の治療だってできました。あ、実はあの時って餌のニンジンが触媒になってたんですよ」


 ニンジンが触媒に……つまりあれは新たな魔法を作っていたってことかな。

 3人で一緒に魔法か……。

 それができたら素敵なことかもしれない。


「よし、できるかわからないけどやってみよう。僕ら3人なら何でもできる気がするよ」


「はい!」


「うん、やろう」


 というわけで、何の根拠もなくできると信じて魔法を作ることにした。

 どんな魔法がいいかを話し合う。




 いろいろ話した結果、次のような魔法がいいなということになった。

 僕たち専用ではなく人に教えることができる魔法。

 現状だと触媒が高価なのでもっと簡単に手に入るものにしたい。

 要は貴重な回復魔法をありふれたものにしたいわけだ。

 そしてもうひとつ……僕のわがままを言わせてもらおう。


「女性にしか使えない魔法が作りたいね」


「え? なんで?」


「この世界ってさ、女性が奴隷にされたりとひどい目にあってるよね。僕はそれが嫌なんだ。女性がそういうことができるようになれば、尊敬されて大事にされるようになると思うんだよ」


「ご主人様……なんだか嬉しいです」


「アルってやっぱり変わってるね……。だから奴隷のあたしらにこんな優しいんだ。うん、アルがそうしたいならそうしよう」


《面白いな……それであれば、我らも助力を惜しまぬぞ》


 お、大自然さんも乗ってくれるようだ。

 これならば成功する可能性が大きく上がるぞ。


「みんなありがとう。じゃあそういうことでよろしく」


 よし、絶対にこの魔法を作りあげよう。

 そして僕の望む世界にまた1歩近づくんだ。

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