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46.ピクニック

 これからユイとリリィと気分転換のためにデートだ。

 気分転換と言えば、サーシャちゃんも必要であろうということで誘いに行った。

 僕たちがそばにいて守れば安心ということで執事さんも了解してくれた。


 そんなわけで4人で手をつないで、よさげな平原へピクニックしに向かっている。

 並びはリリィ、僕、サーシャちゃん、ユイといった状態だ。

 僕はユイと手をつなげていないけど、サーシャちゃんがユイだけでなく僕とも手をつなぎたそうだったのでこうなった。


「サーシャちゃんご機嫌ですね」


「そうだね、みんなでおでかけするのが嬉しいんだよ。ね?」


 サーシャちゃんは声を出すことなくにっこり頷いてくれる。

 しっかり意思疎通はできるのに、なんで声が出ないのだろうか。

 まあ時間が解決すると言ってたし、今日は楽しんでもらおう。


「そうですね。わたしもみなさんと一緒ですごく楽しいです。後は早く全て解決してサーシャちゃんを安心させましょう。そしたらきっと良くなりますよね」


「うん、あたしもそう思う。ところでユイ、ちょっと自然の声に耳を傾けてくれる?」


「え? はい……」


 おや? なんだろうか。

 最近はリリィがいない時でも僕に大自然の声が聞こえているけど、ユイにもできるのかな?


「あ……声が聞こえました。今のがリリィさんがいつも会話している自然の声ですか?」


「そうだよ、ユイとも仲良くしたいんだってさ」


「わあ……光栄です。よろしくお願いしますね」


 ユイも大自然さんの声が聞けるようになったわけか。

 もしかして、離れていても意思疎通できるかな?


《うむ、緊急時には我らが言葉を伝達しよう。あのような悲劇がまた起こるやもしれぬしな》


 そんな協力をしてもらえるとは……すごく助かります。

 ありがとうございます、大自然さん。

 ああいったことは起きてほしくないけど、またなにかあれば犠牲者を出さないようにしたい。

 この能力はかなり役立つだろう。



 そして4人で楽しく歩いた。

 ユイと一緒にサーシャちゃんを持ち上げるという親子的イベントもやった。

 不思議なことに、サーシャちゃんを持ち上げるのに力が全然いらなかった。

 どうやらユイと直に手をつないでいないこの状態でも、僕はユイの力を借りることができるようだ。

 サーシャちゃん越しにつながっているからかな。


《それが可能ならば空気も同じではないか? 我らをさらに感じ、あの娘とつながるのだ》


 大自然さん、今日はやけに話しかけてくるなあ。

 たしかにそれができれば、僕も役立たずではなくなる。

 別行動できればいろんなことができるぞ。

 ちょっとがんばってみようかな。


 それにしても大自然さん、最近やけに協力的ですね。

 やっぱり僕がリリィと正式に恋人になったからでしょうか?


《うむ、精進し強くなれ。そしてリリィを守り、幸せにするのだぞ》


 わかりました。

 もちろん幸せにしますよ。




 さて、見晴らしのいい丘に到着だ。

 ここに敷き物をひき、4人で座る。


「サーシャちゃん、疲れてないですか? あ……抱っこですね、どうぞ」


 正座しているユイの上にちょこんとのっかるサーシャちゃん。

 仲良しでいいことだ。

 僕はみんなにお茶を入れるべく水筒とコップを取り出す。


「アル、あたしにやらせて」


 リリィがそう言ってきたけど、ここに来る時も大地の力を借りてくれて疲れているはずだ。


「いいよ、このくらい」


「だめだよ、やらせてほしいんだ。いっつもしてもらってばかりだから……あたしも役に立ちたい」


「じゃあお願いしようかな」


「うん! ありがと」


 嬉しそうにお茶をコップに注ぐリリィ。

 僕も嬉しくてにやけて見てしまう。

 あ、でもこれは言っておこう。


「リリィはいつも役に立ってくれてるし、傍にいてくれるだけでも十分だからね」


「ありがと……でももっともっと……もっともっと役に立ちたい。はい、どうぞ……」


「うん、ありがと……」


 顔を赤らめてお茶を渡してくれるリリィ。

 僕も顔が熱くなるのを感じながらそれを受け取る。

 好かれるというのはこうも素敵なことか……。


「はい、サーシャちゃん。……そんでユイの分ね」


「ありがとうございます。それにしてもリリィさん、最近一段と可愛くなってますよね」


「そ、そうかな? なんでだろう……」


 たしかに僕もそう思う。

 リリィを見るたびに前より可愛いなあと思ってしまうんだ。

 あ、もちろんユイに対しても同じように思っている。


「うふふっ、これを言ったらリリィさんが恥ずかしがるから言わないです」


「むう……まあなんとなく予想はつくよ」


 僕に恋をしているから?

 もしこれを言われたらリリィだけでなく僕も恥ずかしがってしまうぞ……。


「あら? サーシャちゃんどうしました? あ、リリィさんの所に行きたいんですね」


「そうなの? じゃあおいで……あはっ、これいいもんだね……」


 地面に足を伸ばして座っているリリィの上に、サーシャちゃんも同じように座った。

 リリィにもなついているようでいいことだ。

 見た目的に2人の歳は近いから、仲良し友達に見える。


「んっ!?」


 ふとリリィが何かに気づいたような反応をした。

 なにか危険が迫っているのかも?


《悪意を持った何者かが接近しているようだな》


 むう……狙いは僕たちかサーシャちゃんか。

 なんにせよ倒さなくては。

 でもサーシャちゃんには戦いを見せたくないな。

 怖がらせると心の傷が悪化するかもしれない。


「ご主人様、ちょっと向こうで運動してきますね」


「あ、ユイ……お願いね」


 大自然さんの声はユイにも聞こえたようだ。

 僕の気持ちを察してか、1人で行ってくれるようだ。

 ただそれを見たサーシャちゃんがユイについて行きたそうだ。


「サーシャちゃん、あたしと遊んでようか。ユイは大事な用事があるんだ。すぐに戻ってくるからさ」


 リリィがサーシャちゃんを引き止めてくれている。

 では僕は、さっき大自然さんに言われたことを実践してみよう。

 周りの空気を通して、遠くへ歩いて行ったユイを感じるんだ。

 目を閉じて集中する……。


 なんとなくだけど……ユイを感じられる気がする。

 ユイ、がんばってね……。


『ご主人様……? 力が溢れてきます……』


 ユイの声が聞こえる……。

 大自然さんが力を貸してくれてるのもあるのだろうけど、これはすごいことかもしれない。

 ユイの周りの状況もかすかにわかる。

 どうやら5人ばかりの人が目の前に現れたようだ。


『おい、そこの女。痛い目にあいたくなければ武器を捨てておとなしくしろ』


『なぜでしょう? 意味がわかりませんが……』


『仕事の邪魔だからだよ。おい、適当に気絶させるぞ』


『はい、適当に気絶させますね』


『のわああああっ!』


 男たちは気絶したようだ。

 ユイがか弱そうな女の子だからって舐めすぎだな。

 じゃあ、目的を聞き出せないかやってみてくれるかな?

 サーシャちゃんを狙っていたのであれば、容赦しないでいいからね。


『よいしょ……起きてくださいね……』


『む? いったいなにが……』


『何をしに来たのか教えてくださいね。わたしたち怒ってますから……』


 丁寧な口調で脅しをかけるユイ。

 これはこれでちょっとかっこいいと思う僕。

 言ってしまえばユイが何であれ好きなんだ。


 あれ? 急に声が聞こえなくなった……。

 どうしたんだろうか?

 ユイのことだから心配はないと思うけど……。


 少し不安になりながらしばし待っていると、足音が聞こえてきた。

 目を開けると、ユイが走って来るのが見える。


「ユイ、おかえりー」


「ご主人様、もどりました!」


 そして戻るなり僕に抱きついてきた。

 唐突過ぎて慌ててしまう。


『ご主人様、あいつらはサーシャちゃんを誘拐しようと狙っていたようです。誰が狙っていたのかは、例によってわかりません……』


 おお……これはテレパシー?

 先ほどより鮮明に聞こえる。

 サーシャちゃんに聞かれたくない話だし、これは便利だ。

 リリィとは以前からできたけど、ユイともできるようになったか。


 それにしても、ずいぶんあっさりと聞き出せたね。

 犯人たちはどうなったの?


『わたしたちがどれだけ怒っているかを伝えたら、すぐに話してくれましたよ。少しおしおきしておきましたので、しばらく悪いことはできないでしょう』


 そ、そっか……おつかれさま。

 サーシャちゃんが寂しがってたからかまってあげてね。


「サーシャちゃん、いきなりいなくなってごめんなさい。わたしとも遊びましょう」


「ほらね、すぐにユイ戻ってきたでしょ。次は3人で遊ぼうか」


 そして楽しくはしゃぎだす女子3名。

 うーん……ユイが何をしてきたかは気にしないことにしようかな。


 なんとなく……将来ユイと夫婦喧嘩とかしたら絶対勝てないような気がした。

 もっとも、僕とユイでは喧嘩になることもないだろうけどね。

 


 この後は平和な時が過ぎ、お昼ご飯を食べてのんびりしつつ帰るのであった。

 かなりいい気分転換になったと思う。

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