39.3人でずっと一緒に
目の前にいるのは毛布にくるまって顔を赤らめているユイとリリィ。
今日買ったばかりの服を着ているはず。
早く見たい!
僕からせかすのもあれかなと思って、とりあえず床に正座して待つ。
少しするとユイが口を開いた。
「あの……ご主人様、実はですね……」
なにか申し訳なさそうな感じのユイ。
「どうしたの? ユイ」
「お金を多めにいただきましたので、普段着る服のほかに寝る時用の服も買ったんです」
「あたしが言いだしたんだよ。いいよね? 」
そんなことか。
すでに予想していたし、むしろ嬉しいので問題なし。
「もちろんかまわないよ。むしろいろいろ買ってほしかったからね。早く見たいな」
「は、はい……。ではどちらからにしましょうか。リリィさんすごく可愛くなったんですよ。ぜひ見てあげてください」
「そ、それよりユイの方がいいよ。アル絶対驚いて大喜びするよ」
2人とも見せるのが恥ずかしいといった感じだ。
ますます期待が高まるな。
楽しみは後にとっておくタイプなので、リリィが先かな。
「じゃあリリィを先に見せてもらおうかな」
「え!? あたしなの……?」
「リリィさん、ご主人様の指名ですよ。毛布は没収します」
「ひゃうー!」
楽しそうにリリィの毛布を奪い取ろうとするユイ。
女の子同士のじゃれあいは見ていていいものである。
そういえばリリィの髪にはリボンの形の髪止めがつけられている。
あれは服装にあわせているのかな?
やがて毛布の中から現れたリリィはピンク色だった。
薄い桜色のパジャマのようで、首元や裾あたりに白いフリルがあしらわれている。
この上なく可愛いけど、ちょっと子供っぽ過ぎるかも?
でも見た目年齢13歳くらいのリリィにはよく似合っている。
僕は改めてリリィをじっくりと見つめてみた。
緑髪のショートカットに緑色の目。
エルフ特有のとがった耳に、かわいらしいそばかす。
いつもは活発な子なのに、今は恥ずかしいのかしおらしい子に見える。
うん……可愛いな……。
「ご主人様、リリィさんはいかがですか? すごくすごく可愛くなったと思いません?」
「うん、思う……。リリィは可愛いし、この服を選んだユイもすごいよ」
「はい! リリィさんをいかに可愛くするかすごく悩んだんですよ。ご主人様が喜んでくれてよかったです。ね、リリィさん」
「うう……嬉しいけど、これ子供っぽ過ぎないかな? あたし17歳なのにさ……」
やはり子供っぽい格好が恥ずかしいのかな。
でも今までにない姿のおかげでとても可愛く感じる。
「これ言ったら怒るかもしれないけどさ、リリィは見た目が若く見えるからちょうどいいよ」
「むう……もう大人なのにさ。てゆうかそんな見つめないでほしい……」
可愛い子はずっと見ていたくなるものだ。
でもリリィは子供扱いされるのが嫌みたいだ。
なんとフォローするべきだろうかと悩んでいると、ユイがとんでもないことを言いだした。
「リリィさん、ご主人様はリリィさんのような小さくて可愛い子が好きなんですよ。そこは喜ぶべきところですよ」
「な……アルってそんな趣味があったの? 年が離れてる方がいいとか?」
いやいやユイ、その言い方だと僕があやしいロリコンみたいじゃないか。
おそらくリリィを喜ばせるために言ったのだと思うけど……。
リリィは僕を少し怪しい目で見つめてきている。
なんとか自分をフォローせねば。
「いやいや、僕は年下の小さい子が好きなわけじゃないよ。好きになったユイとリリィがたまたま年下だったり小さかったりしただけ……」
「ご主人様……」
「す、好きって……えええ!」
あれ? 僕は仲間として好きと言ったんだけど、少し誤解されている?
いや……最近は女の子としても好きになりかけているけど。
どうしよ……もう成り行きに任せてしまおうか。
「ほらリリィさん、わたしの言ったとおりでしょう? ご主人様はリリィさんのことも好きなんですよ。3人で仲良くしましょう」
「え、えっと……。あ、そうだ! 今の好きってのはきっと仲間としてだよな?」
「そんなことないですってば。じゃあリリィさん、この勢いでさっき言ったことを実行してください」
「え? ほ、ほんとにするのか?」
「約束したじゃないですか」
なんだろう? なにかしてくれるのかな?
とりあえずこのまま見守る僕。
ユイとリリィが楽しそうに話してる姿って何気に好きなんだよね。
「じゃああの……アル、立ち上がってくれる?」
「う、うん……」
僕が立ち上がると、リリィが僕のパジャマの裾を両手でつかんできた。
そして上目づかいに僕を見つめてくる。
なんだろうこの可愛い生物は……リリィってこんな子じゃなかったような……。
僕はドキドキしつつ、緑の瞳をうるうるさせるリリィを見つめ返しながら言葉を待つ。
「あのね……今夜は寂しいから一緒に寝てほしいんだ……」
なにかが僕の心を射抜いた。
なんていうか……リリィが愛おしい。
この自分の気持ちに戸惑って固まってしまう僕。
ユイの時もそうだったけど、僕って惚れっぽいのだろうか?
もう覚悟を決めて2人とつきあっちゃおうかなと思ったりしてしまう。
「ご主人様、お返事をしてあげてください」
「あ、うん……。リリィ……」
「ちょ、ちょっと待って!」
リリィを抱きしめたい気持ちでいっぱいになっていた僕だったが、リリィが慌てたように制してきた。
「あ、あの……ネタばらしするよ。ユイと一緒にお互いの服を選んだついでにさ、お互いにアルが喜ぶようななにかをさせようってことになってさ……。今のはあたしの本心じゃなくてユイの言葉で……」
「もー、リリィさん。恥ずかしいからって言っちゃだめですよー」
なるほど……通りでリリィらしからぬ行動だったか。
演技にしてはやけに上手だったけど……。
少し残念な僕がいる。
「ユイはどうしたら僕が喜ぶかよく知ってるね。今すごくドキドキしたよ。あれが演技だったなんて残念だな」
「そ、そうなの?」
「リリィさん、チャンスですよ。さっきのは演技ではなく本心だと白状しちゃいましょう」
「なな……何言ってるんだよ!」
顔を真っ赤にして慌てるリリィ。
本心がどうなのか聞きだしたいな。
それで僕もはっきりさせたい。
「リリィ、どうなのかな? 教えてほしい」
「そ、そんなこと言われても……」
このリリィの困った顔……ユイの言うことがあっているのかな。
だったら教えてほしい。
でも……もしそうだとしても、リリィはユイと僕に気を遣って本心は言わないだろう。
だとしたら僕から言うべきか。
「ねえリリィ、僕がユイを好きってことは知ってるよね」
「うん……すごいわかりやすいし……」
「じゃあもうひとつ知っておいてほしいな。僕はリリィのことも好きなんだよ」
「え!? あの……仲間として……だよね?」
「いいや、1人の女の子としてだよ」
「え……」
リリィは意外だったのか固まってしまっている。
ふとユイを見ると、わくわくした目で僕を見つめていた。
ユイも応援してくれているし、このまま決めちゃおうか。
「ねえリリィ、僕ってたぶん男としては最低な奴だよね。ユイとリリィの2人を好きになって、2人に好きになってほしいと思ってるんだ。リリィが嫌じゃなかったらさ、僕とユイと3人で仲良くなりたい」
これはまさしく告白だ。
ちょっとおかしな形ではあるけど……。
返事を聞くのがドキドキするな。
りリィは少し考えて、口を開いた。
「あの……あたしはアルのことを好きになってもいいの?」
「もちろん、こんな僕なんかでよければね」
「じゃああの……あたしもアルのことが好き……。さっきアルは自分のこと最低の男だって言ったけど、そんなことないよ。だってあたし、アルともユイとも仲良くしていきたいんだもん。だからアルは最高の男だよ。ね、ユイ?」
「もちろんです!」
「ありがとうリリィ、じゃあこれからも仲良くしようね」
「うん!」
というわけで幸せな三角関係が成立してしまった。
もう引き返せないが、これでいいだろう。
あとは一生をかけて2人を幸せにしていくんだ。
「ご主人様、リリィさんを抱きしめてあげてください。わたしは少し外に出てきます」
「ま、待て! さっき3人で仲良くって言ったろう? まずはユイの服のお披露目が先だよ」
ユイが僕とリリィを2人きりにしようとしたのを慌てて止めるリリィ。
3人で仲良くって言ったわけだし、そんな気を遣わないでいいのに。
「ユイ、あとリリィもだけどさ、気を遣って2人きりにしようとしないでいいからね。出て行かれると寂しいんじゃないかって気になっちゃうんだよ……」
「あ、そう思われちゃうのですね……。ごめんなさいご主人様」
ユイがしゅんとしてしまった。
ううむ……これは三角関係の弊害だろうか?
「アル、たぶん違うよ。ユイはね、自分の格好が恥ずかし過ぎるからあたしらをだしに逃げようとしたんだよ」
「え? そうなの?」
「は、はい……実は。だってリリィさんすごい服選ぶんですよ……」
どうやら僕の不安は間違っていたようで一安心。
そしてユイに対する僕の期待は膨らむ。
さあ、どんな姿を見せてくれるのやら。




