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35.大自然のいたずら

 これからリリィと一緒に死体を埋めに行く。

 大自然の力を借りることができれば、すぐに終わるはずだ。


 なお僕は人を殺したショックが残っているのか、体が震えてしまっているようだ。

 それを心配したリリィが僕と手をつないでくれている状況である。


「アル、ほんとに大丈夫? いくら悪い奴らだからって、人を殺すのってきついよね」


「少し辛いけど大丈夫だよ。ユイやリリィにこんな気持ちにさせるわけにもいかないし、こういうのは男の役目だよ」


「そっか……アルって変わり者だね。でも……」


「ん?」


「あ、いや……なんでもない」


 すごく心配されちゃってるな。

 でも嬉しい……。

 あ、もうすぐ着くけど、リリィには死体を見せたくないな。


「リリィ、作業は僕がやるから力を借りていいかな? できれば目を閉じて僕に抱きついててくれたら……」


「うん……あたしに死体を見せないようにしてくれてるんだ。優しいなアルってば……じゃあ任せたよ」


 リリィは僕の背中に抱きついてきた。

 少し歩きにくいけど、このまま死体のところへ向かおう。


 では大自然さん……この死体を土に埋めさせてください。

 穴を掘っていただけるとありがたいです。


《その作業は引き受けよう。しかしだな、抱きしめる時はやはり正面からではないか?》


 はい?

 えっと……? やはりあなたは僕とリリィをくっつけようとしてますよね?

 もう隠す気も無くなったようにあからさまだ。


《うむ、その通り。しかし安心せよ。あのユイという少女のことも我らは気に入っている。2人と付き合っていけば問題なかろう?》


 大自然さんってこんなフランクな感じだっただろうか……。

 とりあえず善処します……。


《うむ、では実行せよ》


 うーむ……やるしかないか。


「リリィ、目を閉じたまま少し離れてくれる?」


「え? うん……」


 ではリリィを正面から優しく抱きしめて……。


「ひゃああっ!? な、なに? なんで?」


「落ち着いて、リリィの力を引き出すために必要なことらしいから」


「そ、そっか……。でもなんかおかしい気がするよ……。なんで力を引き出すのにしょっちゅうこんな恥ずかしいことを……」


 僕とリリィをくっつけようと大自然が企ててるから……。

 リリィがこれを聞いたら怒るのか……はたまた喜ぶのか。

 うーむ……ユイもいいと言ってるし、もしリリィがそういう関係になりたいと言いだしたら僕は断れない気がする。


「ありがとねリリィ、いつも助かってる。でももし嫌だったら、無理せず離れていいからね」


「別に嫌じゃないし……我慢できる……」


「我慢しなくてもいいよ」


「別に我慢してないし……」


 リリィは僕の胸に顔を埋めていて、どんな顔をしているかわからない。

 とりあえず離れる気もないようだ。

 僕はこの状況に幸せを感じてしまっている……。

 困ったな……僕がリリィと深い仲になるのに何も障害がないぞ。

 このままでは流されてしまう……。


《作業が終わったぞ。いい光景を見ることができて我らも満足だ》


 え? いつの間に?

 あたりを見回すと、死体はすべて消え、一箇所土が山なりになっている箇所がある。

 地下に住居作ってくれるくらいだし、この程度ならすぐなのかな。


 これで盗賊の問題はすべて解決か。

 あ、人を殺したことでの震えが少しおさまっている。

 大自然がおかしなことを言うから緊張がほぐれたのだろうか?

 そうしようとしてくれたわけではないだろうけど、少し感謝だ。


「リリィ、終わったから帰ろうか」


「あ、もう終わっちゃったんだ……。あの……ユイに言われたし帰りも手をつなごう」


「うん、ありがと」


 なんだろう? リリィがやけに可愛く見える。

 まるで僕に手をつないでと甘えてきてるようにも見える。

 これは僕の妄想なのだろうか……。

 少し顔が熱くなるのを感じながら馬車へと戻った。


 きっと戻ったらユイが笑顔で歓迎してくれるのだろう。

 そして食事と寝る準備の再会だ。




 襲撃前と同じように、たき火を囲んでクラリスさんが料理を作ってくれている。

 僕は精神的に疲弊しているので、少し休ませてもらっている。

 左右はユイとリリィが僕を癒そうとするかのように抱きついている状態だ。

 リリィは最初嫌がっていたけど、ユイの説得でしてくれた。

 今の僕にはありがたい。


 サーシャちゃんはディーラさんに抱っこしてもらっているようだ。

 ユイと遊びたかっただろうに、僕がユイをとっちゃったからなあ。

 悪いけど今は我慢してね。


「ねえねえパパ、お兄ちゃんはどうして元気ないのかなあ?」


「彼はね、私達を悪いやつらから守ってくれたんだ。だから疲れてしまってるんだよ」


「そっかぁ、お兄ちゃんはすごいんだね。それで、なんでお姉ちゃんたちはお兄ちゃんにくっついてるの?」


「そうだな……。魅力のある男性に女性は惹きつけられるとでも言おうか」


「お兄ちゃんがかっこいいってことかな? じゃあサーシャも引っ張られてみるー」


 サーシャちゃんが僕の背中に抱きついてきた。

 3人の女の子が僕に惹きつけられているか……。

 モテモテな気分だ。


「お兄ちゃんはがんばったから疲れてるんだよね? 疲れが取れるおまじないしてあげるー」


 サーシャちゃんは僕の頭をなでなでしてくれているようだ。

 これは可愛いおまじないだ。


「お兄ちゃんはがんばったもんね。えらいえらいだよー」


「ふふっ、ありがとねサーシャちゃん。元気が出たよ」


「えへへー、お母さんがよくやってくれるおまじないなんだ。ねえねえ、お姉ちゃんたちもやろうよー」


 それはユイも僕の頭をなでてくれるということだろうか?

 サーシャちゃんナイスだ。


「えっと……ではご主人様、失礼します。あの……えらいえらい……です」


「ん……ユイの手も気持ちいいや」


「そ、そうですか……よかったです」


 ユイは失礼だからと断るかなと思ったけど、ちゃんとやってくれた。

 そういえば以前もお願いしてやってもらったし、僕もされるのが好きって覚えててくれたのかな?


「ユイお姉ちゃんのおまじないも効いたねー。じゃあ次はリリィお姉ちゃんの番だよー」


「え! あ、あたしはいいよ……」


「だめだよー、しないとお兄ちゃんが元気にならないよー。ね、お兄ちゃん?」


 リリィが僕の頭をなでるか……。

 ちょっとやってみてほしいかもしれない。

 言葉にするのは恥ずかしいので、頷いてみた。


「ほらほらー、してほしいって言ってるよー」


「そ、そうなのか? じゃあちょっとだけ……アル……えらいえらい……」


「ん……ありがとねリリィ……」


 遠慮しがちに触れてくるリリィの手。

 これも気持ちがいいな。

 このおまじないはよく効きそうだ。

 なんせ3人もやってくれたんだし……。


「ふふっ、アルバート君はモテモテだな」


 自分の世界に入りかけてた僕だが、ディーラさんの声で我に帰った。

 これ見られるのって恥ずかしいな。


「すみません、情けない姿をお見せして……」


「かまわんよ。それに君は情けなくなどない。その顔……一皮むけて男らしくなった顔だ」


「そ、そうですか……? ありがとうございます」


 僕が人を殺す決意をしたのは、ディーラさんの言葉によってだ。

 ここでの経験、きっとこれからの冒険に役立つだろう。

 ディーラさんとこうして出会えたことは、本当によかったかもしれない。

 ちょっと……父親みたいだなと思ってしまった。


 あ、父親といえば……もしユイとの間に子供ができるなら、サーシャちゃんみたいに可愛い女の子がいいなと思うのであった。あと……。


《ではリリィとの子は男だな》


 んな!?

 大自然さん、唐突に何を……。

 というか僕の心を読んでるんですか?

 まさかリリィにくっついてる時は常に読まれてる?


《常にではないので安心せよ。お主がリリィについて考えた時のみ思考が少し漏れるのだ》


 えっと……僕ってリリィのこと考えてたっけ?

 ユイとの子供のことを考えてて……そして……。

 無意識のうちにリリィのことも考えてたのかな?

 なんか体が熱くなってきた……。

 とりあえず……しばらく寝た振りでもしていようかな……。

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