23.覚醒
何が起きたのだろうか?
ユイと2人で迷宮をさまよっていると、目の前に魔法陣が現れた。
そのまま光に包まれてどこかに出た。
目の前にいるのは驚いた顔のリリィ?
「リリィ? ここってもしかして……外に出られたの?」
「ご主人様! 後ろにドラゴンがいますっ!」
振り返ると、ドラゴンがこちらに向けて大きく口を開けていた。
そしてその口から赤い炎が……。
「リリィさんっ! ご主人様に抱きついてくださいっ!」
「え? あ、うん!」
ユイが僕の正面から抱きついてきた。
背中にもやわらかい感触……これはリリィだろう。
そして僕たちは光に包まれ、ドラゴンの吐いた炎に吹き飛ばされた。
僕たちはドラゴンから遠く離れた地面に落下した。
痛みが全くないのはユイの魔法のおかげだろうか。
しかし……僕らをかばってドラゴンの攻撃を受けたであろうユイは苦しそうに地面に倒れこんだ。
「ユイ、大丈夫? 早く逃げよう。回復魔法は使えないかな?」
「うう……あれはまだ集中しないと使えなくて……わたしをおいて……お逃げください」
「そんなのできるわけないよ! リリィも手を貸して。ユイを連れてここから離れよう」
「う、うん……。あの……ドラゴンを倒すのって無理かな? このままじゃたくさんの人が死んじゃうし、森も壊されちゃう」
あの強そうなドラゴンを倒す?
そういえば今ってちょうどドラゴン討伐の時間だったのか。
リリィも参加していたのだろうか?
ここにリリィが無事にいるってことは、だれか優しい人が助けてくれたのかもしれない。
助けたいけど……ユイもこんな状態だし、僕にはどうしようもない。
「そうしたいけど、今は僕らが生き延びることを考えよう。ユイがこの状態じゃ戦うこともできないよ」
「そっか……そうだよね」
「あの……ご主人様……。顔をわたしの近くに……」
「ユイ?」
よくわからないけど、ユイの言う通りにしてみよう。
ユイはつらそうな顔で僕を見つめている。
「わたしに……命令してください。ドラゴンを倒せと……」
「え? さすがにそんな無理はさせられないよ。僕はユイに怪我してほしくないんだ」
「なんとなくですが……逃げきれない気がするんです。リリィさん……感じませんか?」
「え? えっと……ああああ! なにかでかい結界みたいのが周りにあるよ。ほんとに逃げられないのかも……」
結界? てことはドラゴンを倒さないと逃げられない?
ユイに無理をさせるしかないのだろうか。
「じゃあユイ……君にもう少し頑張ってもらいたいんだ。でも僕も一緒に戦うからね。一緒にドラゴンを倒そう……できるかな?」
「はい……ご主人様に活躍していただきたいです……。あ……なにかがわたしに……」
「ユイ、どうしたの? 苦しいのかな?」
「いいえ……ご主人様に神託があります。失礼しますね……」
え? 今何が起きているんだろう……口になにかやわらかな感触がくる。
ユイの唇が僕の唇に重なっている? これは……キス?
そして……僕の頭の中になにかが流れ込んできた。
これは僕の力の使い方? 神託ってことは神様からの言葉?
よし、やってみよう。
「ユイ、ありがとう。やってみるから見ててほしいな。まずはユイを元気にしようか」
ユイは気絶しているのか、返事をしてくれない。
僕の力……指揮することでユイの力を増すことができるが、ユイが僕を慕ってくれている場合……僕はその力を自分の物として使うことができる。
だからユイを抱きしめて念じればできるはずだ。
「ユイに癒しを……回復魔法!」
ユイの体にある魔力が僕の体を通して、魔法が発動した。
温かな光に包まれるユイ……成功だろうか?
「ご主人様……あたたかいです」
「あ、気づいたんだね。よし、他のみんなも助けよう。立ち上がれるかな?」
「はい、元気いっぱいです! ご指示をください」
「じゃあそのまま僕の腕に抱きついててね。そしてリリィ……嫌じゃなければ僕の左腕に……」
「わ、わかった……」
僕の左右にユイとリリィが抱きついた状態。
別にいちゃつこうとしているわけではない。
これから僕なりの戦いを始めるんだ。
「リリィ、僕の声を周りにいるみんなに届けてほしい。そしてみんなの状況も僕に教えてほしい。できるかな?」
「大丈夫。いちいち聞かなくても命令してくれればなんでもするよ」
「ありがとうリリィ、じゃあ任せたよ」
これからここにいる人達に僕が指揮を出す。
それでドラゴンを倒せればいのだけど……。
「アル、みんな気絶してるみたいだ。でもなんとか生きてるよ。ドラゴンは動かなくなったやつに興味はないみたいで、とどめをさす気はないみたいだ」
「わかった。じゃあユイ、また君の力を借りて回復魔法をみんなにかけるよ」
「はい! わたしの力のすべてはご主人様のものです。お使いください」
あとはリリィに倒れた人の場所を教えてもらって……と思ったが、僕の頭の中に今の状況についての情報が流れ込んでくる?
これはリリィの力? この力を僕が扱えるってことは、リリィも僕を慕ってくれているのかな。
「アル、みんなの場所をどう教えたらいいかな?」
「そのまま思っててくれればいいよ。そして僕に力を貸すよう念じててね」
「う、うん……」
リリィは周りの空気や森の木々に情報をもらって、今の状況を知ることができる。
その能力を僕も使えるのであれば話が早い。
全員に向けて回復魔法を放つ。
「みんなに癒しを! 全体回復魔法!」
これでみんな動けるようになるはずだ。
しかし、そのまま動いてもドラゴンにやられるだけだろう。
「みなさん、動けるようになったとは思いますが、まだ動かないでくださいね。これからドラゴンを倒すための指揮をさせて頂きます。僕の名前はアルバート。いきなり何を言い出すんだと思われるでしょうが、宜しくお願い致します」
聞こえているだろうか?
リリィをちらりと見ると、頷いてくれた。おそらく大丈夫だ。
まずは全員に強化魔法をかけよう。
ユイの力をこの身に感じて……さらにリリィの力を上乗せする。
「みんなに大地と魔法の加護を……肉体強化!」
これも成功のようだ。倒れている人たちの体が光に包まれる。
ドラゴンは不思議そうな顔をしつつ、遠くにいる僕たちに気づいたようだ。
よし、僕を囮にして一斉攻撃をしてもらおう。
「これからドラゴンに隙を作ります。合図をしたら攻撃してください」
ドラゴンはこちらを見ているだけでまだ動かない。
こちらから接近しつつ挑発するとしよう。
さらには大地にお願いをしよう……森の脅威となるドラゴン討伐に力を貸してください……。
「ユイ、リリィ、走るよ! はあああああっ!」
僕は体に闘気を纏ってドラゴンに向かった。
ドラゴンも僕の敵意を感じて向かってくる。
今だ!
「大地の怒りを!」
僕の叫びとともに地面が割れ、埋まっていた岩が姿を現す。
その岩に突進してきたドラゴンが衝突した。
「今です! 一斉攻撃を!」
その叫びに合わせ、倒れていた人たちが一斉にドラゴンへの攻撃を開始した。
僕は少し後退して各個に指示を出していくとしよう。
安全な場所でないと、僕の左右にいる2人が心配だ。
「ユイ、リリィ、かなり力を借りたけど大丈夫かな?」
「わたしはなんとか……あの……なでなでしてほしいです」
「うう……ちょっとつらいかも……」
ユイの頭をなでてあげると回復していくのを感じる。
しかしリリィにはこれが効かないだろうし、このままでは倒れてしまうかもしれない。
大自然の力さん、リリィに力をわけてあげてくれないだろうか?
《力を貸してやらんこともない。その娘を抱きしめ、別の娘にしているのと同じことをしてやれ》
今のは大自然の声?
リリィを抱きしめて頭をなでろってことかな。
嫌がられたりしないだろうか?
まあやってみよう。
「リリィ、おいで」
「え? なななななにを……ひゃううっ! ううっ……あれ? なんか楽になっていく……気持ちいい……」
約束通り大自然は力を貸してくれているようだ。
ただこれ、抱きしめて回復してると誤解されそうな……。
っと、そんなことよりドラゴンだ。
戦況を確認すると、女性陣は元気で男性陣は膝をついている人もいれば倒れている人もいる。
やはり僕の指揮で女性にだけ力がみなぎっているのだろう。
このまま個別に指揮を出してもっと活躍してもらおう。
戦闘の才能を見抜き、一時的に引き出す!
ここにいる女性陣の活躍をとくとご覧あれ。




