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22.無限に続く大迷宮と残されし者

 あれからしばらく、この魔法陣の中のダンジョンらしきところをさまよい続けた。

 ひたすら同じような部屋が続いている。

 最初に魔法陣のあった部屋と同じ構造……天井に向かって階段のある部屋もあったのだが、そこには魔法陣がなかった。

 あったとしてもどこに出るかわからないので使うのは怖いけど……。


 不思議なのはモンスターかもしれない。

 基本的にはそこらをうろついているだけで、なんとも不気味だ。

 ユイの魔法のおかげで襲われることはないのでじっくり観察してみた。


 驚いたのは何もないところに急に現れるモンスターもいることだ。

 逆にモンスターの足元に突然魔法陣ができて消えることもあった。

 いったいここはなんなんだろうか。


 時々どこかを目指すように歩くモンスターもいるのだが、後をつけてみると僕たちがやってきた魔法陣のある部屋に到着する。

 そして魔法陣から外へ出ようとするのだが、壊れているためあきらめて去っていく。

 それを何度か見ていたんだけど、ある時その魔法陣は消えてしまった。

 どうやら完全に壊れたらしく、あの場に戻ることはできなくなったようだ。


 とりあえずひたすら地図を作りメモを取る。

 無事に戻れたら冒険者ギルドに報告して、学者さんにでも研究してもらおう。

 はあ……なんとか明日のドラゴン討伐に間に合うようにも帰りたいものだ。


 さて……おなかがすいたことに気がついた。


「ユイ、お昼ご飯にしようか。どこかの部屋に隠れてパンを食べよう」


「そうですね……。たしかお昼ご飯のパンはご主人様が全部持ってるんですよね? リリィさん……おなかすかしているかもしれませんね」


 リリィが持っているのは最低限の非常食だけだ。

 一応昨日渡したお金もあるだろうから、それでなんとかしてくれていればいいんだけど。

 こんなことならリリィにも中に入ってもらえばよかっただろうか?

 いや……やはり危険だしギルドに助けを求めてもらうのが正解だっただろう。

 ちゃんと手紙は届いただろうか……。


 お昼ご飯のパンは少なめに食べた。

 まだまだここにいなければいけないかもしれないし……。

 このまま少し休憩しよう。


「ご主人様……ちゃんとここから出ることができますよね?」


「きっと大丈夫だよ。一緒に出ようね」


 根拠はないし、正直僕も不安だ。

 でもユイを不安にさせるわけにはいかない。


「はい……。それでご主人様、リリィさんはきっと不安に思いながら待ってますよ。無事戻れたら抱きしめてあげてくださいね」


「いや、さすがにそれは嫌がると思うよ……」


「そんなことはないと思います。だってご主人様ですよ」


「ユイは僕のことを過大評価しすぎだよ。ユイの方がリリィと仲良くなってるし、ユイが抱きしめてあげて」


「そうでしょうか……。では一緒に抱きしめましょう。3人仲良くです」


 抱きしめるの話はともかく……無事出たら心配かけたことを謝るとしよう。

 リリィ……僕とユイが自力で出られなかったら、君だけが頼りだよ。



   ***



 森の中を1人の少女が走っていた。

 手に紙きれを握りしめ、今にも泣きだしそうな表情だ

 その少女……リリィの頭の中にあるのは、自分を仲間と思ってくれている2人を助けることだ。

 リリィはモンスターのいる場所を避け、人のいる場所へと迷うことなく向かっていた。

 そして森を調査している冒険者たちの元へたどり着く。


「すみません! 助けてください!」


「なんだお前は? まあいい、何があったか話してみろ」


「あの、あたしの……ご、ご主人様が魔法陣の中に引きずりこまれて……」


 リリィは何が起きたかをそこにいた冒険者2人に話した。

 そばには彼らの奴隷と思しき女性も3人ほどいた。


「ふーん、魔法陣に引きずり込まれるなんて話は初めて聞いたな。まあいい、俺はちょうど街へ戻る予定だったんだ。ギルドに報告してやるよ。お前も一緒に来るか?」


「ありがとうございます……。あたしは2人が心配なので魔法陣のところに戻ろうかと」


「じゃあ僕もそこに行ってみようかな。その魔法陣を見てみたいよ」


「わかった。じゃあまた明日のドラゴン討伐でな」


「うん、よろしくね」


 冒険者の1人は街へと戻り、あとにはリリィと冒険者の若い男と2人の女性の奴隷が残った。


「さて、僕の名前はカイル。この2人はミィとキィだ。君と、君の主人の名前は?」


「あたしはリリィ……。ご主人様はアルバートで、奴隷仲間がユイ……です」


「ほお……最近有名なあの2人かい。いつのまにか奴隷を増やしてたんだね。ちょうどいい、助けて恩を売るとしようかな。では案内してもらおうか」


「は、はい……こっちです」


 リリィはカイル達と一緒に魔法陣の元へ移動を開始した。

 来た時と同じようにモンスターのいない場所を選び……やがて到着した。


「ふむ……これが例の魔法陣か。つぶすための手順はちゃんとしているように見えるね。それだけ強力な魔法陣ってことだろうか? これもドラゴンの影響?」


「あの……2人を助けることはできるでしょうか?」


「うーん……正直わからないよ。引きずり込まれたなんて前例がないし、この魔法陣は未だに謎だらけなんだ」


 その後もいろいろと観察していたが、何も分からないまま魔法陣は消えてしまった。


「消えたか……時間差で完全に壊れたみたいだね。これじゃあもうどうしようもないな……」


「そんな……」


「手掛かりが無くなった以上は、彼らが自力で何とかするのを待つしかない。あの2人は強いんだろう? きっとなんとかするさ」


「そうだけど……でも……」


「そんな悲しまないの。明日のドラゴン討伐が無事に終われば皆で調査することになると思うよ。だからそうだね……君もドラゴン討伐に参加しないかい? そのほうが早く助けることができるよ」


 リリィは悩んだ末、カイルの言うことに従うことにした。

 遠回りではあるが、早くこの森を平和にして皆に助けを求めたかったからだ。


 そして一時的にカイルの命令に従い、森の調査を継続する。

 カイル一行はこのまま森で野宿をして明日のドラゴン討伐に備える予定だったため、リリィもそのまま野宿することになった。



   ***



 そして次の日となり、ドラゴン討伐は開始された。

 数十人の冒険者と奴隷がドラゴンを取り囲み、攻撃を開始する。

 リリィに与えられた役目は後方から弓での支援と、状況を分析して皆に伝えることだ。


 リリィは自身の能力について詳細を説明をしていなかった。

 ただエルフの特性として視力と聴力が発達していると伝え、実践してみせた。

 実際には自然の……空気の力を借りて遠くの音も聞こえるのだが、騒音飛び交うであろう乱戦状態ではこの特技はかなり役立つと判断された。

 リリィはこの戦いで活躍し、早く2人を助けにいきたい一心で自信の能力を最大限利用しようとしていたのだった。


 戦いは序盤、楽勝のように思われた。

 ちょっとした建物ほど大きいドラゴンは動きが鈍く、たいした攻撃もしてこなかったためだ。

 時々怪我をする者もいたが、リリィが素早くそれを察知して回復担当に伝えた。

 このままいけば時間はかかるが倒せるだろうといった空気が全体に流れていた。


 だが……それは大きな間違いだった。

 強大な力を持つドラゴンにとっては、虫が周りを飛んでいてうっとおしい程度の認識だったのだ。

 ある程度のダメージを受けたところでドラゴンは人間を敵と認識し、滅ぼすべく活動を開始した。


 その後は一方的な蹂躙だった。

 激しく振り回される尻尾に口から吐かれる炎のブレス。

 ドラゴンの周りには動けなくなった冒険者たちが転がることになる。

 リリィはそれらをすべて把握できたが、何もなす術はなかった。

 回復担当がその場に接近すれば、ドラゴンに即座にやられるだけだろう。


 前衛がすべて倒され、ドラゴンは後衛にも狙いを定めた。

 皆は逃げようとするが、ドラゴンの咆哮により体が動かなくなる。

 リリィも同じように動けなくなり、恐怖に身をすくませることとなる。


 リリィは想う……こんな時にあの人がいてくれたらなんとかなるのではないかと。

 そして願う……あの人を助け、また会うために生き延びたいと。

 その願いが聞き届けられたかはわからないが、リリィの頭に声が響いてきた。

 リリィはその声に従い力を解放する。


 すると……リリィの目の前に魔法陣が現れる。

 その魔法陣は光り輝き、中から2つの人影が飛び出してきた。

 それは……リリィが会いたいと心から思っていた2人の姿だった。

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