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18.戦ってみた

 移動しながら、襲いかかる敵を倒していく。

 ユイが囮となって敵をひきつけ、リリィが弓矢で倒していくスタイルだ。

 何戦かするうちにリリィも慣れてきて、かなりいい連携をするようになった。

 それは見た僕は大満足……なのだけど、あることに気がついた。

 見てるだけってあれだよね……。


「ねえユイ、僕にも強化魔法かけてくれないかな?」


「えっと……ご主人様には魔法障壁がかかっていますので、防御に関しては問題ないですよ」


「そうじゃなくてね、僕も戦ってみたいんだ」


「え? そんな、ご主人様に戦わせるわけにはいきません。戦いはわたし達にお任せください」


 ユイの返答は、なんとなく予想していた通りだ。

 うーん……説得のためにちょっとずるい言い方をするか。


「ねえユイ、僕が颯爽とモンスターを倒してたらどう思うかな?」


「すごく素敵です!」


「僕も活躍して、ユイにいいところを見せたいんだ。だから協力してほしいな」


「お任せください!」


「なんなんだよこいつらは……」


 リリィは呆れているが、とりあえず気にしない。

 ユイが僕に強化の魔法をかけてくれ、なんだか力がみなぎってきた。


「ではご主人様、この剣をどうぞ」


「ありがと」


 ユイが持つ2本の剣の片方を借りる。

 さて……問題はちょっと強くなったくらいでこれを使いこなせるかだな。

 弱い敵が来ますように……。


 少し進むと、ユイが小さな声で言ってきた。


「ご主人様、あの茂みの中で待ち構えています。おそらくネズミでしょう。ここはご主人様におまかせいたします」


「う、うん……」


 緊張するなあ。

 ネズミは弱いんだろうけど、僕からしたら強敵だ。

 へっぴり腰で剣を構えて茂みへと近づく。

 あ、茂みから黒い塊が飛び出してきた。

 僕はなんとかそれを避ける。


「ご主人様、がんばってくださーい!」


「実力拝見といくかな……」


 にらみ合いつつ剣を振ってみるが、あっさりと避けられる。

 剣ってなかなか難しいんだな……。

 でもなんとなく、ネズミの動きが鈍い気がする。

 これならいけるかもしれない。


 ユイの動きを思い出すんだ。

 真似はできないけど、ユイはモンスターの動きを予想できるかのように動いていた。

 ネズミの動きをよく見て、隙を探そう。


 僕は剣を持ち上げた体制のまま、ネズミに接近して蹴りを食らわせようとしてみた。

 ネズミはそれをあっさりかわし、僕に体当たりをしようとしてくる。

 しかしその動きは読み通り。

 剣を振り下ろすと、ネズミの体当たりの勢いと合わせてネズミを斬り裂けた。

 ふう……初勝利。


「ご主人様、お見事です」


「苦戦してたけど、やるじゃん」


「ありがと。でもあのネズミの動きなんか鈍かったんだ。もしかしてユイが何かした?」


「あ……やはり気がつかれましたか。弱体の魔法をかけていました。勝手なことをして申し訳ありません……」


 強化魔法をもらって、弱体魔法をかけた敵なら倒せる程度の実力ってことか。

 僕はやはり弱いようだ。


「いいんだよ。僕のためにしてくれたんだよね。ありがとう」


「はい……ふにゅう……」


 ユイが落ち込まないように頭をなでなで。

 あ、リリィがふぅ、とため息ついて見てる。

 こういうことは控えようと思ってたのにやっちゃったか。


「じゃ、じゃあ進もうか。次からはユイとリリィの連携の練習ね。あ、一応この剣は借りておくね」


「わかりました。ご主人様」


「わかった、もうすぐ着くと思うよ」


 そしてリリィの言った通り、それから数匹のモンスターを倒したあたりで到着した。

 そこにあったのは魔法陣だ。

 ドラゴンのところで見たのとは違って光っていない。

 少し待ってはみたがモンスターも出てこない。

 とりあえず形と場所をメモしておいて、ギルドで報告するとしよう。


「ここはとりあえず置いておこう。リリィ、他に何か気になる声は聞こえない?」


「森に人が多くて騒がしいって言ってるな。モンスター戦うのはいいけど、木に攻撃が当たらないようにしてほしいってさ」


 ドラゴン関連の調査や偵察でたくさん来てるらしいからなあ。

 今のところ誰とも会ってないのは、ここがドラゴンのいる場所から離れているからだろう。

 ていうか僕……こないだ目印のために木に傷つけまくってたよ……。

 この森に嫌われてしまっただろうか?


 とりあえず今日の調査はこれで終えようかな。

 ゆっくり帰りながら、戦闘練習をするとしよう。


 森を出る頃には、リリィの弓の腕はかなり上達していた。

 動く標的にもかなりの確率で命中させることができている。

 問題はユイに肉体強化してもらわないといけないことか。

 このあたりは筋トレをしてもらうとしよう。


 ちなみに僕はたいして活躍できなかった。

 ユイの強化魔法と指導のおかげで少しはましになったけど、センスはあまりなさそうだ。

 ユイは褒めてくれるけど……僕のためにお世辞を言ってくれてるんだろうな。

 うーん……もっといいところを見せたいなあ。


 森を出たら、帰り道もリリィの力で移動時間を短縮した。

 3人で手を繋ぐのは嫌がっていたが、そこは譲るわけにはいかない。




 というわけで街へ戻って冒険者ギルドへ報告だ。

 僕が見た魔法陣についてこう言われた。


「おそらく自然発生して成長中の魔法陣ですね。この形ですとかなり強力なモンスターが生まれるタイプのようです」


「なるほど。じゃあ壊さなきゃいけませんね」


「はい、明日お願いしてよろしいでしょうか?」


「やってみます」


 というわけで、こないだ返却した魔法陣破壊セットを受け取った。

 また明日の移動は重くなりそうだ。


「強力な魔法陣ほど、生まれてから動き始めるまでに時間がかかります。おそらく大丈夫と思いますが、お気をつけください」


「わかりました」


「ではこちらが今日の報酬と、モンスターの戦利品の代金と、明日の依頼の前金です」


 もらえたのは3200G。

 少なめだが、今日は大したことしてないからこんなものだろう。


「それと、これをまだお渡ししていませんでしたね。冒険者ギルドが発行している小冊子です。ぜひ読んでおくことをお勧めいたします」


「あ、どうも」


 いろいろ知識不足の僕には役立ちそうなので、ありがたく受け取る。

 さて、買い物にでも行こうかな。


「2人とも、なにか必要なものはある?」


「わたしは特にないです」


「えっと……矢の補充かな。ちょっと多めに持っておきたいかも。あとナイフもほしいかも。モンスターに接近されたら必要かなって」


「よし、買いに行こう」


 リリィのリクエストのものを買っておいた。

 おそらく明日も一緒に行動してくれるのだろう。

 逃亡の準備をしているわけではないはず……。


 そして他に何かほしいものはないか聞いたところ、リリィがちょっともじもじした感じで言ってきた。


「あのさ……お小遣いとかもらえないのかな?」


「ああ……そうだね」


 なにか買いたいものでもあるのかな。

 あとはぐれた時のためにもお金を持っておいたほうがいいかもしれない。


「じゃあ2人にお金を渡しておくね。好きに使っていいから」


「ありがと!」


「わたしは不要です」


 リリィは喜び、ユイは予想通り断る。

 でもちゃんと平等に渡しておきたい。


「もしなにかあった時のために持っておくといいからさ。僕とはぐれちゃうとか」


「ご主人様とはぐれないようにしっかりついて行きますので……」


「まったくもう……ユイ、耳かしな」


 なおも断るユイに、リリィが何か耳打ちしている。

 何を言われているのか、ユイが時々コクコクと頷いていて……なんか可愛らしい。

 そして話は終わったらしく、ユイが口を開いた。


「ご主人様、やはりわたしにもお小遣いをいただけますか?」


「うん、もちろんだよ。じゃあ雑貨屋に財布を買いに行こう」


 何を言ったか知らないけど、リリィに感謝。

 でもいくらあげるべきだろうか。

 多すぎても少なすぎてもよろしくない気がする。

 悩んだ末、銀貨を30枚……300Gずつ渡すことにした。

 それぞれ財布に名前を書いてお金を渡す。


「ありがとうございます。大切に使いますね」


「ありがと……。でもあたしもユイと同じだけもらっていいのか?」


「もちろんだよ。同じ仲間なんだからさ」


「ユイはそれでいいのか?」


「もちろんです。おそろいっていいですよね」


「そっか……」


 欲のないユイなので、特別扱いはしなかった。これでなんら問題はない。

 せっかくなので、このあたりで短時間別行動することにしてみた。

 一応見渡せるあたりの店にだけ行くってことで。

 ユイは僕についてくると言うかと思ったが、見たいものがあるのかどこかへ向かったようだ。


 僕はなんとなく、2人にプレゼントするなら何がいいかなあと考えていた。

 ユイには色々思いつくのだか、リリィは何をあげると喜ぶかわからない。

 もう少しわかってからのほうがいいかな。

 今何かをプレゼントすると気持ち悪がられる恐れもある。


 30分後、特に問題なく合流できた。

 2人ともかばんを持っているので、もしなにかを買っていてもわからない。

 では宿屋へ向かうとしようかな。

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