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17.リリィの能力

 リリィのおかげで、2時間かかるはずの道を30分で移動できた。

 言うなれば、地面が歩くエスカレーターになったようなものかな。

 やろうと思えばもっと早くもできるそうで、大自然の力のすごさに感心した。


「ありがとねリリィ、おかげですごく早く着いたよ」


「ふん……。それよりもう手離そうぜ。ここからは危険なんだろう?」


「そうだね、そうしようか」


 さて、時間に余裕もできた。

 森に入る前に少しリリィの特訓をしようかな。


「リリィ、試しにその弓使ってみてよ」


「うん……いいけどさ……」


 リリィは少し困った顔で弓と矢を手に持った。

 やはり自信がないのだろうか?

 そして矢をつがえ……手をプルプル震わせている。

 鍛えなきゃ無理なのかなあ……。


「リリィさん、ちょっとよろしいですか?」


「ん?」


 ユイがリリィに近づき、なにかを念じている。

 この状況にいい魔法でもあるのかな?

 するとふわっとした光がリリィを包み込んで……消えた。


「な、なんだ? 力が溢れて来るような……」


「肉体強化の魔法をかけました。もう一度やってみてください」


「う、うん……」


 ユイが使える魔法がまた増えている……。

 リリィは弓を構え……今度は手が震えることはないようだ。


「えっと……うん……いいのかな? わかった、やってみる……」


 またなにかと会話しているようだ。

 真剣な表情で森の方角を見つめている。

 やがて矢が放たれ……心地よい音を立てて、1本の木に吸い込まれるように刺さった。


「リリィ、あの木を狙ったの?」


「うん、うまくいったはず……」


「すごいね、やっぱりリリィには弓の才能があるんだよ」


「あたしじゃないさ。まわりの風や空気が教えてくれるんだ。どの向きにどのタイミングで打てば当たるかをさ」


「それはすごいね」


 リリィの弓の才能はBと低かったけど、自然と会話する能力と組み合わせればかなりの使い手になりそうだ。


「とはいえ……そいつが強化の魔法をかけてくれなかったら扱えなかったんだけどな」


「この子の名前はユイだよ。ちゃんと名前を呼んでお礼を言ってほしいな」


「ん……。ありがとよ……ユイ」


 ちょっと困った顔にはなったが、ちゃんとお礼を言ってくれるいい子のようだ。

 ユイはリリィと仲良くなる気満々なわけだし、すぐに仲良くなれるだろうな。


「いえいえ。お礼を言うなら、わたしよりも言うべき相手がいると思いますよ」


「むう……。その、すごい力をくれてありがと……ごしゅ……うう……」


「名前でいいよ」


「ありがと……アル。こんなすごい力を目覚めさせてくれてさ」


「どういたしまして」


 僕が覚醒させた能力を喜んでくれているようだ。

 言えなかったけど、言いたくもないはずの呼び方を言おうとしてくれた。

 ま、おそらくこれから聞くことはないだろう。


「あの……ところでリリィさん?」


「なに?」


「自然の声を聞けるそうですが……矢の突き刺さった木さんは痛がってないのですが?」


「ああ……。ちょっと見に行ってみようぜ」


 そういえばユイの言う通りだ。

 そんなことに気がつくやさしさ……またちょっとユイのことが好きになる。

 さて、木にはなにがあるのだろうか。

 近づくと、リリィは矢を木から抜き取った。

 矢の先になにかが刺さっている。


「こいつは木を食う虫らしいんだよ。痛いから助けてって声を聞いてさ……だから周りの空気や風も協力してくれたんだ」


「なるほど……」


 木を助けるために、リリィと周りの空気や風が協力したか。

 そういった目的がなかったらどうなっていたんだろう?


「常に協力してくれるわけじゃないの?」


「そりゃそうさ。あたしは自然を操れるわけじゃない。会話してお願いして、納得してくれなきゃ無理だよ」


 なるほど。

 すごい力ではあるが、いろいろ制限があるんだな。

 いい関係を築いてくれたらいいけど。


「リリィは自然と仲良くなれそう?」


「うん。思ったんだけどさ……エルフの里から人間のいる場所までの道のりって、すごいモンスターがいたりわりと過酷なんだよ。それが特に問題なくスムーズに来れたんだ。もしかしたら知らない間にあたしを助けてくれてたのかもしれない」


 そうか……自然と会話して力を借りるってのは、自然に好かれてるってことなんだな。生意気なことは言うけど、自然に好かれるんだから根はいい子なんだろう。


「きっとそうだね。それなら、僕が目覚めさせなくても自然の声が聞けるようになってたかもね」


「どうだろうな……。あたしは心を閉ざしてたから、聞こえることに気づかず生きてたんじゃないかな」


「そんなことないよ。リリィは優しい子なんだから」


「な、なに言ってるんだよ。気持ち悪い……」


 リリィはそっぽを向いてしまった。

 ま、さっきの感じなら大丈夫か。


「じゃあ森に入ってみようか。ユイは戦闘をお願い。リリィは僕の後ろにお願いね」


「はい、ご主人様」


「ん……」


 ユイは前衛、リリィは後衛、僕は役立たず。

 とりあえずこの陣形でやってみよう。


「ご主人様、モンスターを避ける結界はどうしましょうか?」


「特に何もなしでいこう。ここには他の冒険者も来てるからね。迷惑がかかっちゃいけない」


「わかりました」


「ユイっていろいろできるんだな……」


 さて、今日はどう調べるかな。

 目的も無しに行動しても時間の無駄だろう。

 リリィはなにかわからないだろうか。


「リリィ、この森の声は聞こえるかな?」


「ん……なにか怖がってる気がする。特に向こうのほう」


「ああ、あっちはドラゴンがいる方向だね。木がなぎ倒されてるんだ」


「そっか……可哀想だな……。ドラゴンって強いんだろうなあ」


 森にとってあのドラゴンは敵か。

 ならば倒すために大自然が協力してくれるかもしれない。


「あ……それとは違う方向に少しおびえた木々がいるかも……」


「よし、そっちに行ってみよう。案内して」


「うん、あっちだよ」


 こういった調査にリリィの能力は最適のようだ。

 僕はメモをしながら歩いて行く。

 時折モンスターが現れるが、ユイの敵ではない。

 僕は見慣れているが、リリィはかなり呆気にとられているようだ。


「ユイはなんでそんな強いんだ?」


「ご主人様を守ることを考えると、力が溢れてくるのですよ」


「そんなにこいつ……アルのことが大切なのか」


「はい!」


「ふーん……まあいいや、それよりあたしも戦ってみたい」


 リリィは積極的になっていて、なんかいい傾向だ。

 本来は前で戦っているユイを弓でサポートするべきだけど、敵がすぐ倒されちゃうんだよなあ。


「そうですね……どう戦っていただきましょうか」


「こうしようよ。次に敵が出たらさ、それを強敵とみなしてユイは防戦一方の振りをしてみて。それをリリィが隙を見て弓で倒すんだ」


「なるほど……やってみましょう、リリィさん」


「うん。ユイに当てないようにしなきゃな……」


 これからに備えて連携の練習だ。

 リリィは少し不安そうだけど、ユイは矢が飛んできても余裕で避ける気がする。

 早く敵でないかなあと思いつつ、森を進んでいく。


「来ました。おそらく狼です。素早いので練習には最適ですね。ではリリィさん、お願いします」


「わ、わかった……」


「2人ともがんばってね。リリィはもう少しリラックスだよ」


「うう……わかってるよ」


「来ますっ!」


 その声と共に、狼が茂みから飛び出してきた。

 そして……なんとなく弱そうな僕を狙っているように見える。

 考えてみると、すぐ倒さずに時間稼ぐのって難しいのかな?


「はああああっ!」

「ガルゥ……」


 ユイが気合を入れるように叫ぶと、狼がユイに向き直った。

 ユイから強い気が発せられているような……闘気とでも言うのかな?

 あれも僕を守るための能力か。

 さて、あとはリリィに期待だ。


「素早い……。ユイはよくあんなのをあっさり斬れるな……」


 リリィは弓を構えてはいるが、射るタイミングをまったくつかめないでいる。

 なにかアドバイスをしてあげるべきか。

 うーん……。あ、ユイはきっとリリィが攻撃しやすいようにしてくれているはずだ。


「リリィ、狼だけじゃなくてユイの動きもよく見て」


「ユイの動き? んと……あ、ずっと同じような避け方を繰り返してるのかな」


 ユイは回避行動にパターンを作っている。

 それに伴い、狼の攻撃もある程度の法則性が生まれているはずだ。

 これ以上は言わずに、リリィが気づいてくれるのを待つかな。


「よし……あとは……みんな力を貸して……。そう、ユイをね……守りたいんだ」


 リリィはユイを守りたいから力を貸してと自然にお願いしてるのかな?

 たしかにこれが本当の強敵であれば、ユイのピンチを救えるのはリリィだけだ。

 うん、やっぱりリリィはいい子だよ。


「よし……いけそうだ。それっ!」


 リリィの手から矢が放たれ……狼の足元に突き刺さった?

 外したのかと思ったけど、狼は驚いたのかバランスを崩した。


「ユイ、今だ! たたっきれ!」


「え? はい!」


 隙だらけの狼にユイの剣が振り下ろされる。

 これは成功なのかな?


「リリィは狼の隙を作ろうとしたの?」


「ああ、そうだ。だってあたしが狼にとどめさすとずるいじゃんか。いいところはユイに譲るよ」


「そっか……」


 状況次第ではとどめをさしたほうがいいけど、今回はそれでいいか。

 見事な連携だった。


「リリィさん、見事な援護でした」


「ああ……でも時間かかりすぎだよな。もっと練習したいからさ……付き合ってくれると嬉しいな」


「はい! いいですか? ご主人様」


「もちろん。たくさん特訓して強くなろうね」


 割と早くリリィがなじんでくれた気がする。

 ユイがいろいろ気を遣ってくれてるからだろうな。

 きっと仲間としてうまくやっていけるはずと思う僕であった。

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