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12.3日目の夜

 この世界について考えながら、図書館から宿屋へと向かった。

 もちろんユイとは手をつないで歩いている。


 まず、この世界には奴隷がいて、かなり乱暴に扱われている。

 そして、その奴隷のほとんどは女性。

 男尊女卑の精神が根付いていると言ったところか。

 はっきり言うと、僕にとってすごく不快な世界だ。

 何とかしてこの世界を変えたいが、僕は無力で何もできない。


「ご主人様、どうかされたのでしょうか? さっきからずっと悩んでいるように見えます」


「ん……どうしたらユイが幸せになるかって思ってね」


「え! あ、あの……わたしはすでに幸せですよ。これ以上ないくらいに幸せな日々です」


 無力ではないか……ユイを幸せにすることはできそうだ。

 うん、できるところからやっていけばいいかな。

 せっかく神様に素敵な能力……人の潜在能力を発揮させる力をもらったんだ

 この力……ユイ以外にも使ってみたいけど、できるのだろうか?

 もしできるのであれば、以前のユイのように虐げられている人に使って活躍できるようにしたい。


 それに、冒険者ギルドで活躍して地位を手に入れた人もいるらしい。

 僕もユイと一緒に活躍して権力を手に入れればあるいは……。

 そのためには今よりもっと戦力がいるな。


「ねえユイ、冒険するにはもっと人数が必要かなって思うんだけど……どうかな?」


「ご主人様がおっしゃることに間違いはないと思います。それに、人数が増えればご主人様を守りやすくなっていいと思いますよ」


 ユイは本気で僕を信じてくれている顔だ。

 もしここに女性が増えたとしても、仲良くしてくれるだろう。

 女性か……ちょっと誓いをしておこうかな。


「ユイ、えっとね……。もし仲間が増えたとしてもさ、僕の1番大切な人はユイだからね」


「は、はい! でもあの、もったいないお言葉です。わたしはご主人様にわずかでも気にかけていただけるなら……順番なんてどこでも構いません」


 相変わらずいい子だなあ。

 僕としては、僕が他の女の子を見ただけで嫉妬してつねってくるくらいでもいいんだけどな。

 いや、それがユイなんだし……おかしなわがままは言うまい。


「じゃあ一緒に行動してくれる仲間を探そう。それで、冒険者ギルドで大活躍して有名になるんだ」


「はい! ご主人様の名前が世の中に知れ渡るのですね。楽しみです」


 ユイは心底嬉しそうに言ってくれる。

 でも名前が響き渡るのはユイ、君の方だよ。

 女性である君が大活躍してさ……女性をバカにしている男どもを見返してやろう。

 今これを言うと混乱するだろうから言わないけどさ。


 決意を新たにしたところで宿屋に到着。

 ここでなんと2人部屋が埋まっていると告げられる……。

 別々の部屋なんてありえないので、1人部屋を借りることとなった。

 部屋に入ると、当然ベッドはひとつだ。


「せまいけど問題ないよね」


「はい、わたしは床で寝させていただきます」


「ユイ、僕と一緒のベッドは嫌かな?」


「えええ!? あの……嫌じゃないですしむしろその……」


 顔を赤らめてもじもじしているユイ。

 僕も普通に言っていたけど、ちょっと恥ずかしくなってしまう。


「じゃあ一緒に寝ようね。床で寝ると疲れ取れないからさ」


「はい、よろしくお願いします……」


 いつも通りご飯を食べ、お互いに体を拭きあう時間だ。

 まずは下着姿となったユイの体を拭こう。

 変な気分になってしまわないように話をと……。


「ユイ、どんな人が仲間になったら戦闘が有利になると思う? ユイは剣で戦うから、後ろでサポートする人の方がいいのかな?」


「そうですね……でもわたしが一番力を発揮できるのはご主人様を守る時です。どなたかが前で戦っていただければ、わたしはサポートする戦い方を勉強します」


「そっか、ユイは何でもできるもんね」


「何でもじゃないですよ。できるのはたったひとつ、ご主人様のためになることだけです」


 そのたったひとつがすごいんだよね。

 でもユイが後衛になる場合、前で戦う人がそれなりに強くないと成り立たないな。


「もし仲間ができたらさ……きっとその人は僕にとって大切な人になるんだ。だから僕だけでなく仲間のことも守ってくれる?」


「もちろんです。ご主人様が悲しむような状況には絶対しません」


「ありがと、期待してるね」

「はい!」


 うん、きっとどんな特技を持った人でもユイはうまくやってくれるだろう。

 ここはやはり性格重視で仲間を探そう。

 ユイを奴隷扱いせず、女性をバカにしたりしない人……。

 いなかった場合、ユイと同じ奴隷を仲間にするのもありかな。

 なんにせよ明日だ、いろいろ探してみよう。

 そしてユイの体も拭き終わり、髪のお手入れも済ませた。


「よし、今日も綺麗になったよユイ」


「ありがとうございます。ではご主人様の体を拭かせてください」


「うん、よろしくね」


 僕も下着姿となり、ユイに体を拭いてもらう。

 ちなみに昨日もだけど、下着姿になると僕の男の部分が大きくなっちゃってるのがわかる……。

 でもユイは特に気にしていないようだ。

 もしかすると性知識がないのかもしれない。


 安心のような残念のような……そういった知識があれば、僕がユイに興奮していることがわかって喜んでくれたのかなと思ったりもする。

 いつかユイとそんなことをする日が来るのかな……ちょっとだけ悶々としながら、僕の体は綺麗になった。


 あとは寝るだけ……下着姿のままベッドで横になる僕たち。

 なんだか緊張して眠れないかも……。


「ご主人様、狭くないですか? もっと端に寄った方がいいでしょうか?」

「大丈夫、そんな端に行くと落ちちゃうよ。ねえ、手握ってていい?」

「は、はい……」


 ユイに近くにいてほしくてそう言ったけど……手のぬくもりのせいでますます緊張が高まる。


「ユイ、なにかお話してくれないかな」

「話……ですか? でもいったい何を話せばいいのか……」

「なんでもいいんだ。僕はユイのことがたくさん知りたい」

「では……わたしの大好きだったお母さんの話をさせてください」

「うん……」


 以前も聞いたように、ユイの母親も奴隷だった。

 しかし、ご主人様は優しい人だったようだ。そういう人もいると聞いて安心する。

 そして……ユイはその優しいご主人様との間にできた子供だったそうだ。


 しかし……幸せな日々は長く続かなかった。

 ユイが生まれた直後、父親が悪徳商人にだまされて多大な借金を背負わされた。

 そして……ユイと母親を残して自殺したらしい。

 その後は幸いなのか不幸なのか……母親が悪徳商人に気に入られ、憎き相手の奴隷となってしまった。


 悪徳商人も鬼でなかったのか、はたまた母親ががんばったからなのか……ユイは7歳まで順調に育ったそうだ。

 しかし……母親は病死してしまう。

 そこからユイにとって地獄の日々が始まったようだ。

 新しい主人である悪徳商人はもちろん、そいつとユイの母親の間にできた娘……つまりはユイの妹もユイをひどい目に合わせた。

 ユイは遊び道具と呼ばれておもちゃにされていたらしい。

 そして15歳となり、まともに働けない体となって捨てられた……。


 これを聞いた僕の中には怒りが渦巻いていた。

 その悪徳商人をなんとしても懲らしめてやりたい。

 それも暴力ではなく正当な方法でだ。


 そして……ユイの話を聞きたいと言ったことを少し申し訳なく思った。

 考えてみると、ずっと奴隷だったユイにはつらい思い出しかないんだ。

 そんなユイから話を聞くなんて、ユイにつらい過去を思い出させる行為だったんだから……。


「ユイ、話してくれてありがとう。でもごめんね……つらいこと思い出させちゃったよね」


「いいえ、ご主人様にはわたしの全てを知ってほしいので構いません。それに……昔お母さんが言ってくれた素敵な言葉を思い出しました」


「なんて言われたの?」


「がんばっていればいつかいいことがあるよ。お母さんがユイのお父さんとめぐり合えたように……いつか素敵な人がユイの前に現われるよ。そう言われたんです。そして……それは本当でした。ご主人様……」


 ユイが顔を僕の方に向けてきた。

 僕もユイの方を見て目が合う。


「ユイは僕のことを素敵な人と思ってくれてるんだ」


「はい、世界で一番素敵な方です。あ、でもお母さんのように結ばれたいなんて贅沢なことは考えていませんので」


 ユイはきっと自分にそんな権利はないと言う意味で言ったんだろう。

 でも、ユイが僕のことをそこまで好きじゃないって意味にも聞こえて……少しだけ悲しくなった。

 

「考えてほしいな……」


「え? ご主人様、今なんと?」


「なんでもない、もう寝ようか。それじゃあおやすみユイ。大好きだよ」


「え!? あ、あの……ご主人様? あれ? も、もう寝ちゃったのですか?」


 ユイが遠慮しない日がいつか来てほしい。

 だから僕から少し積極的に行動しておこう。

 寝たふりをする僕の横で大慌てしているユイが愛おしい。

 僕のせいで寝不足になっちゃったらごめんね。


「ご主人様、寝られてるのですよね? あの……今なら言えそうです。わたしもご主人様のことが大好きです……。お母さんみたいに幸せになりたいです。ほんの少しだけ期待しているわたしを許してくださいね……」


 割と早く本音が聞けてしまった……。

 どきどきして眠れない。

 明日の朝2人そろって寝坊してしまうことになるのは……きっと仕方のないことだろう。

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