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11.図書館へ行こう

 ユイと仲良く手をつないだままガナードの街へと帰還した。

 さっそく冒険者ギルドへ向かおう。


「あの、ご主人様……そろそろ手を離した方がいいかもしれません」


「どうして? 僕ずっとこのままがいいんだけど、ユイは嫌なの?」


「いえ、わたしもこのままがいいです。だけど……奴隷と仲良さそうに手をつないでいると、ご主人様が変な目で見られます」


 たしかにさっき街の入り口にいる兵士っぽい人が怪訝な目で見てきたかも。

 失礼な奴らだなあ。


「僕ね、ユイと仲良くしてるところを街のみんなに見せつけたいよ。だからこのまま行こう」


「はい……」


 なんとなく握っている手が熱くなった。

 ユイか僕か……きっと両方かな。


 冒険者ギルドに到着してさっそく報告だ。

 さすがに手をつないだままでは説明ができないので、ここでいったん離す。

 受付のお姉さんはドラゴンの絵に驚いているようだ。

 魔法陣のこととか、道順についてもしっかり報告する。

 なお、使わなかった荷物はここで返却させてもらえた。


「ありがとうございました。これからこの情報を上の者が精査いたします。まずはこちらの報酬をお受け取りください。また明日にでも追加報酬をお渡ししますので、来ていただけますか」


 渡されたのは2000Gだ。

 昨日と比べたら稼ぎは少ないけど、追加の報酬に期待だ。

 でも精査ってどうするんだろう?

 僕は嘘をついてないけど、嘘の報告をしてお金をもらおうとする冒険者もいるんじゃなかろうか。

 うーん……今日はわからないことが多くて困るな。


「ご主人様、これからどういたしますか?」


「そうだね、今はまだ夕方かあ。半端に時間があるよね」


 地図を広げてユイと一緒に考える。

 ……おや? 図書館というのがある。

 ここに行けばいろいろ調べることができるかもしれない。


 というわけでユイと手をつないで移動中だ。

 手をつないでることに対しておかしな目で見られてはいるが、気にしない。

 街の人を見ていると、男女で歩いている場合はほぼ確実に女性が後ろを歩いているな。

 奴隷はもちろん、そうでない女性もだ。

 亭主関白的な? 変な世界だなあ。

 みんなは女の子と並んで歩く楽しさを知らないようで、ちょっとかわいそうに思う。


 やがて図書館にたどり着いた。

 どうやら入場料として、1人1時間100Gいるらしい。

 結構高額なので、それだけ価値のある場所ってことだな。


「ご主人様、わたしは外で待ってますね。どうせ字も読めませんし……」


「だーめ、一緒に読もうよ。字も教えながらゆっくり読むからさ」


「でもお金が……」


「ユイがいたから稼げたんだよ。 それに僕はユイと一緒にいたいの。さあ行こう」


「はい……」


 だんだんよくなってきてはいるけど、やっぱりこういう時は遠慮しちゃうんだな。

 ユイを1人で放っておくなんて絶対に嫌だ。


 図書館に入り、たくさんの本棚に圧倒される。

 毎日空いた時間はここに入り浸ってもいいかもしれないな。


「ユイ、見てみたい本はあるかな?」


「そうですね……。あ、基本的な剣術という本があります」


「ちょうどいいのがあるね。それ読もうか……ってユイ? 本のタイトルが読めてるの?」


「あれ? おかしいですね……わたし字が読めてます。


 僕を守ろうとして強くなり技や魔法を覚えたユイ、ついに字も読めるようになったのかな。

 さっき街に戻る前、何も知らない僕を支えてねとお願いしたことを思い出す。

 まさかあれがきっかけで?

 ほんとすごい能力を持っている子だ。


「じゃあユイも好きな本を読んでていいよ。あのテーブルに荷物を置いて、あそこで読もうね」


「はい、これで勉強してみます」


 ユイは剣術の基本を読むようだ。

 基本どころじゃない強さになっているユイだけど、必要なんだろうか?

 今は勘で戦っているから、そこに知識が加わるとさらに強くなったりするのかも?

 楽しみにしつつ、僕もなにか本を探すとするか。


 冒険者ギルドについて書かれた本を見つけた。

 歴史や成りたちが書いてあるっぽい。ちょっと流し読みしてみようかな。

 

 昔はモンスターを倒すために兵士たちが働いていたが、増えゆくモンスターに対応するため一般人もモンスター退治に駆りだされた。安い報酬で戦わされることに最初は不満だらけだったが、そのうちにモンスターからの戦利品が役立つものと気づいた。

 その戦利品により戦力は増し、いつしか防衛のためではなく利益を得るためにモンスターを狩るようになった。

 その流れでそれを管理するための冒険者ギルドができたと……。


 この話はわかりやすいけど、モンスターの存在が不思議でならない。

 今日見た限りだと、魔法陣から現れて倒されると戦利品を残して消えていく。

 これだけだと普通の生き物とは思えない。

 これもまた今度調べてみようかな。


 お、冒険者ギルドが信用できる組織として成り立っている理由が書いてある。

 とある強大なモンスターを倒した後に残された知識の書。

 そこに書かれていたのは嘘を見抜く秘術。要は嘘発見器的なものか。

 これがあるから僕の話も疑われず聞いてもらえたようだ。

 嘘をつく気のない僕にとってはいいシステムだな。

 どうやらこれは冒険者ギルドが独占して、使用を報告だけに限定しているらしい。

 これが出回ると争いの種になるからか……。

 冒険者ギルドはこの世界で強い力を持っているんだなあ。


 少しだけ読むつもりが、がっつりと読んでしまった。

 ユイも集中して剣術の本を読んでいる。

 真剣な目がまた魅力的だ。

 話しかけたいけど、邪魔しちゃ悪いので読み終わるのを待とう。


 やがて読み終わったようだ。

 字を読めるようになったばかりの割にはかなり早いペースだと思う。


「ユイ、どうだった?」


「とてもためになりました。今までは思うがままに戦っていましたが、基本は何より大切だそうです。明日から実践してみますね」


「うん、ユイの戦う姿好きだから楽しみにしてるね」


「ご主人様のために頑張ります!」


 本を2人で戻しに行き、大量の本のタイトルを見ていく。

 戦いに関する本はまだまだあるようだ。

 ここに毎日ユイと通うのもいいかもしれない。


「ユイ、他に読みたい本はある?」


「たくさんありますね。本って素晴らしいです。でも……」


「どうしたの?」


 ユイは少し寂しそうな顔になった。

 どうしたんだろう?


「実はその……ご主人様に字を教わりながら本を読んでもらうのが楽しみだったんです。わたしが字を読めるようになって、できなくなったなあと……」


「あ……」


 実は僕もちょっと楽しみにしていた。

 でもユイが字を読めるようになったことの方が嬉しかったから、これでいいやと思っていた。

 でもユイは素晴らしい能力のせいでちょっと寂しくなっていたようだ。


「ごめんなさい、変なことを言ってますよね。ご主人様がこんな素晴らしい力をくれたのに、贅沢を言うと罰が当たります」


「いいや、そんなことはないさ。今からでもやろうよ。僕が本を読むから、ユイは本を見ないで聞いてほしいな」


「あ……いいのですか?」


「もちろん、実は僕もユイに本を読むのを楽しみにしてたんだ」


「そうなのですか……ではお願いします……」


 よし、今日の残り時間は楽しむ時間だ。


「何がいいかな?」


「あの……恥ずかしいのですが、子供向けの本ってありますか?」


「うん、探してみるよ。ユイは座って待っててね」


「はい!」


 子供向けの本か……。

 ユイは小さい時も奴隷だったから、親に本を読んでもらった経験がないんだろう。

 そういったことに憧れているのかもしれない。


 童話の短編集……あれがいいかもしれない。

 中を見ると、『奴隷に恋した王子様』というタイトルがあった。

 ちらっと序盤を見ると、タイトルそのままの展開だ。

 よし、これを読んで聞かせよう。女の子はきっとこういう話が好きなんだと思うし……。


「ユイ、今からちょっとしたお話をするよ」


「はい、楽しみです」


 ユイは目を閉じて僕の言葉を待っている。

 さあ、楽しんでもらうとしよう……。


 恵まれた生活をしている王子様が、ある日城を抜け出した。

 そして、川で働かされている奴隷の少女と出会う。

 その少女の仕事は丸くて綺麗な石を集めること。

 その石はお城の庭に敷き詰めるために集められていたが、王子はそれを知らない。

 少女が気になる王子はそれを手伝うために、城の庭から石を取っては少女に渡しに行く。


 しかしある日、少女は石を盗んだ罪を着せられて捕まってしまう。

 それを少し経ってから知った王子が罪を告白して少女は助け出されたが、拷問をされた少女の心は壊れてしまっていた。


 さて、ここからどうなるのかドキドキだ。

 しかしページをめくると……なぜか黒インクで塗りつぶされていた。

 誰がこんないたずらを?


「……?」


 あ、目を閉じたままのユイがどうしたんだろうという顔になっている。

 ここはなんとか誤魔化そう。


「ごほんごほん……ごめんね、ちょっとほこりが喉に詰まっちゃったよ」


「大丈夫でしょうか?」


「うん、じゃあ続きを読むね。王子様がお世話をしていると少女は元気になり、王子様と結婚して幸せに過ごしました。めでたしめでたし……」


「わあ……素敵なお話でした。実際にはないような話ですが……とても夢があります」


 それっぽい話で誤魔化せたようたが、実際はどんな話だったのだろう?

 黒インクで塗りつぶされた数ページをめくると、なにかが貼り付けてあった。

 そこには手書きで、奴隷の少女は王子様に捨てられた。所詮奴隷は奴隷。と書かれていた。

 なんだこれは……まるで奴隷が幸せになってはいけないとでも言っているかのようだ。


「ご主人様、どうかされましたか?」


「ああいや、ごめん。余韻に浸ってたんだ。ねえユイ、またこの話を読みたくなったらさ……自分では読まずに僕に読ませてね」


「いいのでしょうか……。ぜひお願いしたいです」


「うん、任せて」


 これでいい……ユイの今の笑顔は壊したくない。

 この本は係の人にいたずらされていると伝えるべきだろうか?

 でもユイがいる前ではできないな。

 それに……これが正しい状態です、と言われる可能性があって怖かった……。

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