表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/72

10.森の奥に潜むもの

 次の日となり、予定通り例の森の調査へと出発だ。

 昨日と同じパン屋さんで朝食とお昼を買っておく。

 時間がおしいので食べながら移動した。

 なお、必要な大荷物は昨日買った大きなリュックにおさまっている。

 重いせいで僕の動きがちょっと鈍いのが難点か……。



 2時間ほど歩いたあたりで例の森に到着だ。

 ここでモンスターが大量発生している原因を突き止めるのが今日の仕事だ。


「ユイ、頼りにしてるからね」


「はい、今日は昨日より調子がいいです。がんばりますね」


「それでさ、昨日使ってたモンスターを引き寄せたり近づけないようにするのは使わないでね。普通に歩いてどうなるか調べたいんだ」


「わかりました」


 モンスターが多く現れる方面に向かって行けばいいはずだ。

 戦闘はユイに任せ、僕は簡単に地図を描きつつ木にナイフで目印を付けていく。

 この森はたいした敵もいなくて植物もありふれているため、入っていく冒険者もほとんどいなかったらしい。

 だからこういう作業をして報告すれば報酬が増えると聞いた。

 今は簡単にだけど、異常を見つけたら正確な場所を報告できるようにしよう。

 今日の仕事は僕も役に立てそうだ。


「ご主人様、なんとなくあちらの方角に嫌な気配があります」


「そっか。じゃあゆっくり進んでいこうね。迷子になってもいけないし」


「はい! わたしはどうしたらいいかわからないので、ご主人様にお任せしますね」


「うん、戦闘は任せたからね」


「あ、いました。せえいっ!」


 ユイは隠れている敵をあっさり見つけて倒していく。

 おかげで僕は何も気にせず森の観察に集中できる。

 といっても素人のやることなんで限界はあるけど……。


 そうして2時間ほど歩いた頃だろうか。

 森の奥でちょっとした異常を発見した。

 木々がなぎ倒されている場所があったのだ。

 枯れているわけでもない元気そうな気が乱暴に倒されたような状態。

 高さ10mほどある太い木もあるので、これができるとしたら巨大なモンスター?


「ご主人様……なにか怖いです……」


「ユイが怖がるってことは強力なモンスターがいるのかな。進んでも大丈夫そう?」


「おそらくは……」


「もし危なそうだったらすぐに教えてね。逃げよう」


「はい。あの……モンスターを寄せ付けなくする結界を張っていいでしょうか?」


「そうだね、お願いするよ」


 あれだけの強さを見せてくれたユイが少し震えている。

 僕も少し怖くなってきたぞ。


 少し歩くと……その恐怖の元が見えてきた。

 巨大な何かが森の奥にある広場にいたのだ。

 いや……もとは森だった場所がその巨大な何かにつぶされて広場になったのかもしれない。


「ご主人様……失礼します」

「え?」


 ユイが僕に抱きついてきた。

 心臓が跳びはねそうになるけど、大きな声を出すわけにはいかないので耐えた。


「わたしとご主人様の気配を消します。見つかったら大変なことになる気がしますので……」


「そ、そっか……ありがとね。じゃあこのままあいつの周りを回ってみよう」


 ユイと抱き合った状態で、広場の周りを回っていく。

 そいつの大きさは2階建ての家くらいあるだろうか。

 青い鱗にしっぽに鋭そうな爪に……あれはもしやドラゴンなのではなかろうか。

 街から割と近い森にこんなやつがいるなんて……。


「ユイ、あれは倒せないよね?」


「無理だと思います……。もっと修行しても……わたし1人では無理でしょうね」


「そうか……人数も必要だよね」


 よし、しっかり偵察して帰ろう。

 強い冒険者たちが討伐に来るかもしれない。

 その時はユイも活躍する一人になってほしいけど……。


「ご主人様、あれを見てください」


「ん? あれって魔法陣かな……」


 ギルドで説明されたような模様が地面で光っている。

 しかも複数あるような……あれがモンスター大量発生の原因かな。

 あれがあるとモンスターが湧いてくると聞いたけど……。

 少し見ていると、魔法陣の光が増し……狼のモンスターが現れた。

 しかし……次の瞬間、狼が急に吹っ飛んだ。


「今何が起きたんだろう?」

「あの巨大なモンスターが殴りかかったようです。あ、食べてますね……」

「ほんとだ……」


 あの巨体なのに動きが全く見えなかった。

 ドラゴンが狼を食べているんだけど、ひとつ疑問が浮かんでくる。

 モンスターは倒すと消えていたんだけど、ドラゴンが食べてる途中に消えるのではないかと……。

 まあいいか……。


「あの魔法陣をつぶす道具はあるけど……作業をするのは無理そうだね」


「はい、おそらく見つかってさっきのモンスターのように……」


「よし、これはあきらめよう」


 魔法陣を壊すための杭。

 背負っているこれをまた持って帰るのはきついけど、そんな贅沢は言ってられない。


 というわけで巨大モンスターがいた場合に使う道具を出すとしようか。

 魔法が込められた羊皮紙……これに景色を転写できるらしい。要は写真だ。

 ただ……これを使用した時に光を発するらしい。

 正面から撮りたいけど……気づかれるかなあ。


「ねえユイ、気配を消してくれてるみたいだけど……これを使って光ったら気づかれるかな?」


「はい、おそらくは……。でもわたしが使ってすぐに逃げれば大丈夫と思います。ご主人様には先に離れておいていただく必要がありますが……」


「じゃあお願いできるかな? ユイが怪我したりしないよね?」


「はい、誓えます」


 ユイが自信満々に言うので、任せることにした。

 来た道をある程度戻り、僕はそこで待機する。


「ではいってきますね」


「うん、難しそうだったらしなくていいからちゃんと帰ってきてね」


「はい、わたしの身を守ることを考えますね」


「うん、そうしてほしいな」


 ちょっと不安だけどユイを見送る。

 ついていきたいけど、足手まといになるからなあ。


 さて……待つだけもあれだしこのあたりに目印を作っておくか。

 ギルドへの報告で場所がすぐ分かるようにしておかないと。

 かばんから布とひもを取り出し、目立つ位置に旗のようにとりつけておく。

 そして黒インクで矢印とメモをと……。

 この位置を地図に書き込む……正確かどうかは怪しいけど。


 少しして、ユイが駆け足で戻ってきた。

 満面の笑顔なので、成功したのだろう。


「おかえりユイ、どうだった?」


「はい! これを見てください」


 ユイが差し出してきた羊皮紙を見ると、先ほど見たドラゴンの姿がしっかりと描かれていた。

 写真というよりは精巧な絵って感じだけど、これなら何がいたのかはっきりわかるだろう。


「すごいねユイ、よしよし」


「ひゃうん……」


「それで攻撃とかされなかったの?」


「はい。それが光り輝いた時にこっちを見てきましたが、特に気にされませんでした。単なる雑魚がいると思われたのかもしれません」


「なるほど……無事でよかったよ。じゃあ目印をつけながら帰ろうね」

「はい!」


 強大なドラゴンから見たら、僕たちはそこらの虫けら的な存在なんだろうか?

 もしくは……実はおとなしいドラゴンとか?

 物語の中では、ドラゴンとお話して仲良くなるというパターンもある。

 あ、でも僕を守ろうとするユイが怖がってたんだ……そんなうまい話はないか。


 そして一定間隔で目印をつけながら帰った。

 ユイもそこらの枝を杭のように斬って、地面にたくさん突き立ててくれた。

 布だけでは心もとなかったので助かる。

 これだけ目印があれば大丈夫だろう。


 そして数時間かけて森の外へ脱出した。

 安心したのか……僕とユイのおなかが同時にぐーと鳴った。

 2人で照れながら見つめ合う。

 お昼の時間はだいぶ過ぎ去っていたようだ。


「お昼にしようね。今日はたくさん買ったからたくさん食べよう」


「はい! すごくおなかすきました」


 僕はパンをひとつ、ユイはなんと3つもたいらげた。

 遠慮せずにたくさん食べてくれたことが嬉しい。


「じゃあ早いけど街へ帰ろう。報告もあるしね」

「はい!」


 街へ向けて歩き出す。

 あれ? そういえば街の名前をまだ知らないや。

 ユイのことに夢中で全く気にしてなかったなあ。


「ユイ、あの町の名前知ってる?」


「はい、ガナードの街ですよ。あの……ご主人様はどこか遠くから来られたのでしょうか?」


「うん、そんなところかな」


 街の名前すら知らない僕を、ユイは不思議そうな顔で見てくる。

 この世界について全然知らない僕は、これからもユイをこんな顔にするかもしれないな。

 不安に思っているかもしれないので、先に言っておこう。


「ねえユイ、ちょっと聞いてくれるかな。僕の秘密をユイにだけ知っておいてほしいんだ」


「ご主人様の秘密をわたしにだけ……なんでしょうか?」


 ユイはなんとなく嬉しそうだ。

 秘密って響きに魅力があるのはなんとなくわかる気がする。


「僕ね、実は昔のことをあまり覚えてないんだ。遠くから来たのは間違いないけど、どこから来たかわからないんだ。こんな感じでさ、普通なら知っているようなことを知らなかったりするんだよ」


「そう……だったんですか」


「だからユイ、僕は今君だけが頼りなんだ。僕を支えてね」


「はい! お任せください。わたしは奴隷だったため、知っていることは少ないですけど……ご主人様のために頑張ります」


 ユイがさらに張り切っているのを感じる。

 そういえば、僕を守るために技や魔法を思いついたんだ。

 僕の助けになるために急に賢くなったりもするんじゃなかろうか?

 ちょっと期待してみよう。


「それではご主人様……まずはこうやって支えさせてください」


「え? あ、うん……」


 ユイはその小さな手で僕の手を握ってきた。

 そのまま手をつないで歩きだす僕たち。

 これは支えてることになるのだろうか?

 でも嬉しいからいいや。これからはずっとこうやって歩きたいな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ