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転生したらホムンクルスだった場合は合法ショタを名乗っていいですか?  作者: 茶色烏賊
少年体ホムンクルスを望む領主と会うまでの三日間・後半
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夢は何ものかの介入を受けていたわけです

 それは夢のようだったが、夢というには少し様子が違っていた。

 夢と呼ぶには、あまりにも現実味が強すぎたのだ。

 だが現実ではない。それは私自身がよく分かっている。

 それが現実であるのなら、目の前で起きていることの次に何が起こるかなど、私に分かるわけがなかったからだ。

 けれど私は、今目の前で起きていることの意味を知っていて、その後どうなるのかもよく分かっていた。

 そして、その通りに物事が進んで行く。


 夢のような荒唐無稽さなど何一つなく、出来事を変えることも出来ない。

 現実ではない、すでに最初から最後までが確定された出来事。

 

 つまり私が体験しているのは、すでにあった現実である過去。もう少し加えるのならば、かつて私が全うした人生。

 その再体験と呼ぶにふさわしいものだった。


(こんなこともあったなあ……)

 

 意識だけは、ぼんやりと今の自分として浮かんでいる。おかげで、これは確かに過去の記憶で、自分はすでに別の存在として生まれ変わったのだと確認することが出来た。

 しかしそれがいいことなのかどうか、よく分からない。

 生まれ変わる以前の人生を、記憶として持っているだけではなく、改めて再体験することの意味があるのだろうか。

 

 出来れば、忘れておきたかった出来事にまで触れて、それを避けも忘れも出来ないなんて、どうしたらいいのやら。


 懐かしい出来事も忘れていた他愛のない出来事も、忘れておきたかった出来事も、何もかもを再体験していく。

 といっても、他人にとってはくだらない、どうでもいいような人生であることだろう。

 ドラマティックなことがあったわけではないし、特別な環境で生きてきたわけでもない。


 どこにでもあるような、そしてさして物語になるわけでもなければ、ニュースで取り上げられるようなこともない人生だ。


 あえて特徴を上げるのなら、その人生には恋愛だの結婚だのというエピソードがなかったわけだが、それだって別に特別なことではないはずだ。


 そこに愛でられる少年が好きだったとか、観賞対象としては異性は好きだったとか、細かい好みを明らかにすると、平均値からはずれるかもしれない。

 まあでも、そんな好みの人々は、私の知っている範囲ではたくさんいたのだから、これも別にとやかく言って取り上げるようなことではないと思う。


 そんな人生を、何故今改めて再体験しているのかと思っている間に、私の、前世であるところの人生の幕は下りようとしていた。

 一人きり、けれど病院のベッドの上というのは、まあ、運はいい方だろう。


 特に思い残しもなく、とうによくは見えない視界が、さらに暗くなっていく体験をしながら、もしかしてこれは走馬燈というやつなのかと思い、心臓がぎくりと跳び跳ねた。


 もしそうなら、逐一人生を再体験するのも分からないではない。

 けれどそうすると、私が美少年ホムンクルスに生まれ変わって、しかも苦労なく暮らしていけそうな上に大事にしてくれそうな素敵な中年領主の元で暮らすことになるなんてことは、都合のいい夢だったということになってしまう。


 確かに夢かもしれないとは何度も思ったけれど、こうなると惜しいような気もするし、最後に楽しい夢を覚えていけるのなら、それはそれでいいような気もするけれど、やはりちょっとよろしくはない。

 なんというか、これからまた、明日のことを考えて過ごす日々を繰り返していけると思っていたところに終わりが告げられるというのは、心構えが間に合わないわけだ。


 そんなわけで、体の意識はもうすっかり閉ざされつつあるのに、『私』という意識は慌てふためくというよく分からない状況になっていた。


 そうしてしばらくして、私の意識は、ぼんやりとただ漂っている状態にあることを知った。


『やあ、君のかつての人生を振り返ってみて、どうだった?』 

 唐突に響いた声には、覚えがある。

 誰かに組み敷かれるホムンクルスである私の夢を見た時と、同じく私であるところのホムンクルスが教会で崇められている夢を見た時に響いた声だ。

 ならばこれは、ホムンクルスである私が見ている夢なのだろうか。


「どうもこうも……。同じ人生を二度体験するなんて、思わなかった」

『ああ、まあそうだね。珍しいかもね。ただちょっと、はっきり自覚してもらおうと思ってさ。終わった人生だよって』


 声だけの存在だというのに、相手が肩をすくめるのが感じられた。


「自覚?」

『そう。君が少年の体を持って生まれたホムンクルスのルカだってことをね』


 私は何だか頭が痛くなるような気がした。

 だったら、改めてかつての人生の再体験なんかさせてくれない方がいいと思うのだけれど。

 そんな気持ちを言葉にしたつもりはなかったのだけれど、声は私に響いてきた。


『そう? これからする話にも関係あるから、大事なことではあったんだよ。ということで、姿を見せてもいいだろうか?』


 人の夢には勝手に関わって来るくせに、そこは許可を取るのかと不思議だったが、私は少し投げやりな気持ちでうなずいた。

 断っても、状況は変わらなさそうだったからだ。

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