つまり権力者は好みの対象をそばにおくことが可能なんじゃないかと思うわけです
先生の部屋なら読む本があるというのは、読もうと目星をつけている本があるということだ。
この部屋の本棚も、近寄って見てみると、興味のわく本があるようだった。
ちなみに私の興味をひいたのは、ぱっと見たところでは歴史の本と教義書。教義書というのはつまり、教会の教えを記した本だ。
今の私にとってはどちらも興味があるもので、知っておいた方がいいだろうものだ。
ぱらぱらとめくってみると、すんなり頭に入ってくるので、恐らくは辞書的な知識としてはある程度持っているものなのだろう。
読むのも苦にならないだろうしと、ひとまずその二冊を選んでベッドに戻ることにする。
テーブルがあるのにベッドを選ぶのは、そういう気分だったからに他ならない。
言われてもそんなつもりはなかったけれど、領主様の言うように疲れていたのかもしれない。
疲れといっても気疲れ、というやつだけれど。
もっとも気力が減っていれば体もだらけるものだ。細かいことは置いておいてベッドに向かう。
その途中で見た窓の外の光景が、私の別の興味を引きだした。
今いる階は三階だが、一階に下りて少し歩くとさらに階段でもって下に下りた場所に平地が広がっている。その平地に、二十人ほどの軽装の少年たちと数人の成人男性の姿が見えた。
手には剣らしき物。
二人一組で向き合い打ち合っているので、剣術の練習といったところなのだろうか。
大人たちは少し離れて声をかけているようだから、指導者なのだろう。
ふむ、と片手には光球を掲げながら、もう片方の手に本を抱えて首を傾ける。
領主の城に、兵士やその見習いがいるのは、そう不思議なことではないだろう。
とはいえ、遠目とはいえ見たところ少年たちは半分は十代半ばから後半といったあたりに見える。なんというか、はっきりと大人だと分かる者たちに比べると、まだまだ発育途中な体型なのだ。
それがいいんだよね。出来上がった大人の体もいいんだけどそれとはまた別の、いや、そいうことはまあいいか。
残り半分の少年はというと、はっきりと少年らしい体型のようだ。
正確な年齢は分からないけれど、成人でなければ城に入れないということもないだろう。
別の見方をすれば、あそこにいるのが未成年だとしたら、兵として将来性があるということでもあるだろう。
もしかしたら、領主により近い立場の人間の子弟かもしれない。
そのあたりがどうであるかは、ともかくとして、私がその光景に興味を持ったのは、この城の敷地内に少年と呼んで差し支えなさそうな男子がいるということだった。
つまり、城の主であり領主であるあの人の、守備範囲内の相手がいてもいいもんなんだなということだ。
それを言ったら、男性権力者のいる場所に女性の使用人はおけないのかという話になるのだけれど、もちろんそういう意図なわけじゃない。
ただ、前に先生から聞いた領主様が過去に何かやらかしたらしいという話の印象があったので、領主のそばに年頃の少年なんかおいておいたらダメなんじゃないかと、勝手に思っていただけだ。
でもそういう訳じゃないのだ。
あの領主様は確かに十才そこそこから十代半ばくらいまでの少年らしい年頃が好みのようなのだけれど、別に片っ端から好みなら手中に収めるなんて真似はしないのだ。
そうでないなら、領主の目に触れる可能性のある場所で、ほいほいと少年が活動したりしないだろう。
それとも、目をつけられることを狙っている可能性も。
なんてことまで考えてみたけれど、それはやっぱりそう高い可能性ではないんではないかなと考えを改めた。領主様に唾をつけられることの利益と被害でいうと、被害の方が多い気がする。
そもそも未成年の年少者を性愛の対象にするのは禁忌とされているのだから、もし本人ではなく当の少年の保護者あたりがそれを目論んで送り込んでいては、大事になるだろう。
それともやっぱり利益があるのだろうか。
私の考えはぐるぐると同じようなところを回り始めてしまった。
仕方がないので、本はベッドの上に放り投げ、私もベッドに寝転んだ。光球は消してしまう。まるきり意識をそちらに向けないまま、かなりの時間維持していたので、それだけでかなり魔術の腕前は上がった気がする。
使える魔術も少しづつ種類を増やしていきたいな。
と、あえて、そう、あえて考えているのは、この少年体としての体が作り出されたことの意味を、改めて考えなくてはいけないような気がしたからだ。
でも、何となく考えたくなかった。
理由はよく分からない。




