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転生したらホムンクルスだった場合は合法ショタを名乗っていいですか?  作者: 茶色烏賊
少年体ホムンクルスを望む領主と会うまでの三日間・後半
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積極的なアピールとはどういうことなのかと考える暇くらいは欲しいです

 素敵な中年男性、イケオジに目の前で跪かれたら、どうするのがいいのだろう。

 とりあえず、私は無意識に一歩後ずさっていた。


 跪かれることで遠かった顔の位置が近づいて、領主様の顔の良さがよく分かった。その顔で近くから眺められるのは、何というべきか、気恥ずかしさの伴うものだった。

 私のこのホムンクルスとしての顔かたちがどんなに絶世の美少年だろうと、相手の整った顔を間近に見るのも何だか戸惑いがあるし、まじまじと眺められるのも恥ずかしいのだ。


 美女美青年が並び立ってお互いを見る時、どんなことを考えているのかと、どうでもいい想像をしたことがある。

 お互いが美女美青年なら、美形を見慣れていて平気なのかな、なんて考えていた。


 それがないとは、言わない。

 けれど、それは見慣れていればなのだろう。


 生憎、そこまで私は美形を見慣れていない。

 ようやく、これが自分の姿なのだと認識出来てきたところだ。


 他人の顔立ちの良さに惑わされずにいられるような人生経験は、私には生憎ない。

 そんなことを考えている間に、手まで取られていた。


「ようこそわたしの元へ、マイディア」


 にっこりと、大きく唇の両端を釣り上げて向けられた言葉に、思考が止まる。

 マイディア、マイディア、マイディア。

 ええと、なんだっけこの言葉。

 何故か目薬が浮かんでくるが、それではないはずだ。


 マイディア。


『My Dear』


 か?

 なのか?

 そうなのか?


 止まっていた思考が、爆発するかと思った。


 いやいや、マイディアとかそんな、あははははは、と笑って笑い話にしてしまいたい気持ちで一杯だ。


 マイディア。

 そんな言葉を口にする男性に出会った記憶なんか持っていない。

 そもそもそんな言葉が似合う男性に出会った記憶もない。


 だが恐ろしいことにこの領主様、その台詞が似合っている。恥じらいなくその言葉を口にし、その顔で、その表情で、その声で、その仕草でもって口にするのなら、そりゃあ問題なかろうよと受け入れたくなる似合いっぷりだ。


 固まっている私に、領主様はおや、としばし首をかしげると、あらためてにこりと笑って見せ、立ち上がった。

 目の前で見上げる大人の身長は、とても高い。

 きっと、私が以前の身長を持っていたとしても、彼の顔を見るためには上を見上げることになっただろう。


「わたしの名前はクラウス。クラウス・フュルストだ。よろしく、マイディア」


 名乗られると、名乗り返さなくてはいけない気になった。

 といっても、名前はまだないのだけれど。

 上を見上げたままでは辛いので、一歩下がる。下がったところで見上げなければ領主様の顔は見えないが、下がらないままよりはましな気がする。


「はじめまして、領主様。よろしくお願いします」

 

 ぺこりと頭を下げる私を、領主様は腰に両手をあてて見ていたようだ。顔を上げるとその格好のまま私を見ていた。

 少しの沈黙。

 こちらから言うことは思い浮かばず、何か言って欲しいのだけれどそれもない。

 黙ったままでいるには辛くなってくる程度の時間があって、私の体は突然持ち上げられた。


「っふ、あ?」

「ちょっと、叔父様!?」


 間の抜けた私の驚きの声に、ヒルデガルトの叫びが重なって聞こえた。


「うん、なるほど、素晴らしいな。フェリクス先生、素晴らしい技だよ」


 領主様の声はすぐそばで聞こえる。

 見ると、彼の腕に抱えられていた。少年の体とはいえ、そんなに軽いものでもないだろうに、軽々と抱えられている。

 この状況についていけず見回すと、先生は頭を下げているし、ヒルデガルトは憤った顔で領主様を見ていた。


 ヒルデガルトの表情を、まるでお気に入りのぬいぐるみを取られたような、なんて表現するのはためらいがある。何せ、この場合のぬいぐるみは私だ。だが、そう表現したくなるのにぴったりな表情なのは、間違いがなかった。


「叔父様! 彼が叔父様のものになるのは、彼が受け入れたらって言ったでしょ!?」


 ヒルデガルトはお嬢様にあるまじき仕草で足を踏み鳴らすと、もう一声と高く響かせた。

 まあそういうようなことは、彼女が聞いている場で言ったけど、ヒルデガルトと領主の間の話としても成り立っていたのだろうか。いつの間にだか。


 そして可愛い姪っ子に鬼の形相で睨まれている叔父様であるところの領主様は、痛くもなんともない顔でケロリと答えた。


「ああ、言った言った。だからこうして、積極的にわたしをアピールしているんだろう?」


 その言葉を聞いて、私は自分が全く状況について行けていないことをよくよく理解した。

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