さていよいよホムンクルス作成依頼者=領主様とご対面ですよ
「錬金術師って、便利ですね」
先生の任されている仕事に対して、思ったままを口にしてみたのだが、先生の反応はというと、微妙な苦笑だった。
「まあ、やろうと思えば、出来ることはたくさんあるけどね。それでも、結局個人の力量でその辺りは全然違うからね」
それはどんなことでもそうだろうけれど、と思ったけど少し違うようだ。
「僕はたまたま、やりたいことと身に付けられることと、それを活かさせてくれる場所があったけど、どれか一つでも欠けると錬金術師としては成り立たないからね。特に見合ったお金を出してくれるところがないと、ただの技術者だし」
「技術があれば、生活は出来るでしょうに」
先生の言っていることは分かるけれど、つまりそれは自分たちがただの技術者ではないと言っているようのものではないだろうか。
そんな気持ちがつい私に口を開かせていた。
手に職があるのはいいことだと思うのだけれど。
「そりゃあね。僕だってそういう人生を送っていたかもしれないけど、それは錬金術しじゃないし、錬金術を続けていくだけの環境もお金もなかっただろうし」
先生は肩をすくめる。
どうやら私の一言がお気に召さなかったようだ。
技術職ではなくて、研究職としてイメージした方がいいのかもしれないな、と私は考え直してみる。
手に職があるのはいいことだし、すぐに役立つ知識や技術はとても大切だ。
一方で、すぐに役には立たなくても、技術を発展させるために研究が必要なのも確かなことだ。
先生は、すでに出来上がった技術を繰り返し使っていくだけでは、満足できない方の人間なのかもしれない。
「じゃあ、そういう先生を置いてくれている領主様っていうのは、使えるものは使おうって感じの人なわけですか?」
それとも、自分に錬金術師を雇う度量があるとか、余裕があるとか、そういうところを見せたいタイプだろうか。
どちらでも、どちらでなくとも構わない。
ただ、どんな人か聞いてみたいだけだ。
けれど先生はまた、肩をすくめている。
「どうかな。そりゃ、使える人間がいるのに使わないような人ではないけど、なんでも使うってわけでもないし。反対に使えない人間を切る捨てるわけでもないんじゃないかな。僕にとっては、出会える範囲にここの領主様がいたのは運がよかったわけだけど。それより、何よりさあ」
結局やっぱり、人物像ははっきりしない。どんな人なんだろうと考えている私に、先生がじっとりと座った目を向ける。
「はい?」
「なんだかんだで、領主様お会うの、楽しみにしているんじゃない?」
私はその言葉をただ受け止めた。
「はあ」
何故半目で眺められないといけないのかが分からないのだ。
楽しみに、と言われると少し違う気はする。
会ったことのない、けれどこの体の所有者である人とようやく会うわけだ。どの人がどんな人間かは、私の今後に大きい影響を及ぼすわけだから、気になるのは当然だろう。
ついでのことを考えるなら、まあ、そこそこ良好な関係が築ける相手ならいいとは思っている。
ただどうしたって相性なんてものはあるから、それなりの心の準備も欲しいのだ。
もっとも、執事長にも言われたことだが、結局会ってみないと分からないことなんてたくさんあるのだ。
そう思いつつも気にしてしまうのは、果たして人形を作らせたつもりだった領主様が、自我のある存在を受け入れる気があるのかどうかが今一つよく分からないからだ。
受け入れる気がなくとも、検討する気くらいはあるのか、そうでなくとも検討するくらいの度量がそもそもある人間なのか。
全く余地はない、なんていう印象は受けていないのだけれど、どの程度私という存在を受け入れてくれるのだろう。
そんなことを考えながら、先生と適当なやりとりをしている内に、昼食の時間となり、いよいよ領主様の元に赴く時間がやって来た。
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