夢の中の私は教会らしきところで着飾って、あれ?
審問官が立ち去ってしばらくたっても、疲れは抜けず、結局夕食を食べた後は体を拭いてすぐにベッドに入ってしまった。
夕食を運ぶメイド長と共にやって来た執事長は入浴も勧めてくれたけど、回廊を通ってあの浴室まで行って戻ってくるのも面倒なくらい疲れていたのだ。
本当は一日の終わりにお風呂に入りたいのだけれど、メイド長がお湯とタオルを運んでくれたので、体を拭いて着替えることで満足することにした。
執事長も、明日の朝食前に浴室が使えるよう来てくれるそうだ。
温泉がある館なんて、なんて素晴らしいのだろう。
明日の入浴にわくわくしながらも、審問官をやり過ごすことが出来た安堵で、ベッドに入った私はするりと眠りにおちいったのだろう。
枕もとの明かりを消して以降の記憶はほとんどない。
これで何もなければ、朝まで何を思うこともなく時間が過ぎたのだろう。
けれど私は、夢を見ていた。
眠りの中で、おや、と思っている自分に気が付いた。
これは夢だ。夢だと分かって見る夢ともまた違う、けれど夢。
一昨日見た夢と同じだと思ったのは、別に同じ光景を見ていたからではない。
いや大雑把にくくれば、同じなのだろうか。
夢の中で、私は私の姿を見ていた。
美少年姿のホムンクルスであるところの私は、やたら荘厳な場所で着飾らされて、祭壇の一番上に座らされていた。
ただ黙って、それこそ人形のように座っている。
そんな私をそこに集まった人が仰ぎ見、両手を組み合わせ、跪き、涙を流しながら祈りの言葉を口にしている。
なんだこれ。
一昨日の夢の方が、まだ、分かりやすいものだった。
あの夢は、私が望まれている本来の役割そのもので、夢に見る理由も分かりやすかった。
けれどこの夢は何だろう。
まるで、神様でもあるかのような扱われようをしている夢の中の私に、疑問しか湧いてこない。
いやまあ、こんな美少年が恍惚の表情で荘厳な場所で着飾って腰掛けていたら、感動で涙を流しはするかもしれない。
もしフェロモンのコントロールが効かずに垂れ流しだったら、その場に崩れ落ちるかもしれない。
荘厳としかいいようのない、計算されつくした配色の中に置かれた美しい少年には、それくらいの力はあるだろう。
だからといって、何故私はこんな夢を見ているのか。
私だったらこの状況には、神の宿る体として祀られることになった少年の幼馴染が、少年を取り戻すために乗り込んで来るなんていうシチュエーションくらいついてこないと、物足りないのだけど。
『いや、別にこれ、君が見たい光景ってわけじゃないから』
笑いを含んだ声がした。
この声も、一昨日の夢で聞いた覚えがある声だ。
私は周囲を見回したつもりだったが、声の主は分からない。
夢で聞こえた声にどれくらいの意味があるのだろうと思いながら、私は声に向かって尋ねる。
「じゃあ、何?」
私の質問に、声が笑った。
何処が笑うところだったのか、全く分からないのだけれど。
『いやあ、ごめんごめん。ほんと、ずいぶん、状況の受け入れがいいと思って』
人の夢の中で『思う』なんて一体どういうことなんだかと思うと、自分の表情が歪んだ気がした。
そんな私の内心は、声の主に伝わるのだろうか。これが夢なら声の主だって私なのだろうけれど、とても自分だとは思えない。
「何か用なの?」
ついむっとした聞き返しをしてしまったが、私は悪くないと思う。
『いや、ほんとごめん。用はこの夢そのものだよ』
何のことか分からないと伝えようとしたら、声はすぐさま続きを届けてきた。
『この夢は、君、もしくはホムンクルスの可能性ってやつだね。君が教会のホムンクルスとして育てられていたら、こんなこともあったかっていうね』
「……ん?」
教会がホムンクルスを育成することなんてあるのか。
そう問いたかったのだけれど、私が疑問を持った時には、夢は覚めていた。




