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審問官見習いの独り言

 僕の名前はカッペッロ。

 神々に仕える身である僧侶の一人だ。


 といっても、まだ教会に身を置いての年数は少ない。

 本来なら雑用と修行で日々を過ごす身だけれど、審問官の見習いとして扱ってもらっている。


 審問官というのは、僧侶としての階位に関わらず、その職に向いている者が指名され就く職務になる。

 神々が定めたこの世の枠組みを外れると疑わしい者、事象、生物について調べ、相応の処置を行うのが職務だ。


 早くに両親を亡くし、他に頼れる者もなかったために、教会に身を置くしかなかった立場の僕にとって、審問官としての道が拓かれたのは幸運なことだった。


 教会とはいえ、人が集まれば全ての人間が常に高潔であり清廉であることが難しいのは、想像出来なくもないことだろう。

 何の後ろ盾もない僕にとって、教会で僧侶として生きていく場が与えられたこと自体、犯罪に手を染めるよりはましなことのはずだ。

 けれど同時に、後ろ盾がないことは、僧侶としての出世の見込みは全くないことでもある。


 それどころか、場合によっては階位が上の方々の使い捨ての駒にされる可能性も高い。 


 審問官も、そういった面が全くないことはないのだろう。

 けれど、審問官は特殊な才能を必要とするため、望んでなれるものではないし、たとえば一人の審問官を使い潰すなんてことをすれば、同様の才能を持った人間を新しく探すのには酷く手間がかかる。


 なので才能が発揮できるのであれば、階位が上がらなくとも簡単には使い潰しの駒になんかされたりはしないのだ。


 そして僕には、幸いなことにその才能があった。

 といっても、自分で見出したわけでもないし、審問官として売り込んだわけでもない。


 主任審問官でもあるオレキエッテ師に見出していただき、審問官見習いとしてそれまでの雑用から引き抜いていただいたのだ。


 オレキエッテ師は、審問官としても僧侶としてもまだ若手に分類される年齢だけれど、辣腕を振るう審問官として教会では名を知られている。

 曰く、感情と私見だけで物事を判断せず、神々に意志を正しく汲み取る審問官、だとか。


 僕がオレキエッテ師の下で審問官の技を学び、審問に同行するようになってまだ二年に満たないけれど、感情と私見での判断をしないというのは、間違いのないことだと思う。


 審問官という立場がら、時には教会の意向や政治の成り行きによって、不正を求められることが、ないではない。

 けれどオレキエッテ師は、そういったことを全て雑音と言ってのけ、常に事実を積み重ね、神々の意志を尊重される。


 審問官としてあるべき姿だと思う。


 オレキエッテ師とともに審問に出向くのは、僕ともう一人バルバ師だ。

 バルバ師は、大変大柄な方で、初めてお会いした時には僧侶より戦士の方が向いているのではないかと思ってしまった。


 今思うと、大変失礼なことを思ってしたものだし、一方でその印象は正しかった。


 バルバ師は、審問官として必要な戦いの術を身に付けられた方だ。

 ただ剣を振るうのではなく、あらゆる怪異、怪物、異形の特性に合わせた戦いを知る方だ。そしてまた、幅広い知識でもって、神の意志に背く行為を見抜く役目も負われている。


 本来ならオレキエッテ師とバルバ師がいらっしゃれば、審問官としての役目は完璧に真っ当されるだろう。


 そこに見習いとして加えていただいたのが僕だ。


 僕がオレキエッテ師に審問官としての道を開いていただいたのは、一重に法術の才があったためだ。

 法術というのは、神々の御力をお借りしてなす術のことだ。

 世間一般に知られている魔術とは、在り方を区別し、教会でのみ伝えられ学ぶことが出来る術だ。


 まだまだ身に付けられない多くの術があるけれど、嘘感知の法術は実践に用いても問題ないと法術の師にお墨付きをいただいている。


 なのにまさか、あんな目に合うとは、思ってもいなかった。

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