奥深くに入り込んだ何かが私に繋がってきます
私を襲う強烈な不快感は、明らかに私以外からもたされていた。
肌を這いずり回り、どこから入ろうかと隙間を探している。そんな感覚。
だというのに、目に見える変化や、何かに触れているという感じもないのだ。
振り払いたい。思い切り。
けれど同時に、感覚ではなく直感で、それをしてはいけないと感じていた。
何がそう思わせたのかは分からない。
オレキエッテの表情だったのかもしれないし、オレキエッテの後ろで私を敵か蛇蝎かのように凝視するカッペッロの目だったのかもしれない。
ともかく私は、振り払いたいという衝動を抑えこむのに必死だった。
自然と息が短く荒いものになっていったが、それさえも、あまり激しくなって見咎められてはいけないように感じた。
意識して大きく呼吸をし、体の揺れを抑えることに集中する。
そうしている内に、私の中に入り込もうとする何かを、こちらから迎え入れる方が楽だと感じた。
探り回られるから気持ち悪いので、いっそ入り込まれてしまえば落ち着く気がしたのだ。
そう思ってからは、早かった。
その何かは、私の奥の奥にまで入り込むと、気持ち悪い動きを止めたのだ。
ただ、奥の奥で私に繋がっている感覚は続いている。
一体何なのだろうか。ヒントはないかと、オレキエッテとカッペッロを見ると、オレキエッテは相変わらず表情が変わらずにいたが、カッペッロは明らかに頬を紅潮させている。
何でだ。
カッペッロの変化に気付いた時が、ここまでで一番動揺してしまった。
どうも姿勢も怪しく、明らかに私に対して欲情している。一方で、何とか自分を保とうとしていることも分かる。
そっとその他に目を向けると、執事長も先生もバルバとやらも、そ知らぬふりを保ちながら、こちらを気にしている様子がある。
これは、早々にやってしまったのか。淫魔確定なのかと背筋が寒くなったが、オレキエッテは声音さえも変えずに言ってのけた。
「さすが、領主様用のホムンクルスですね。お見事な設計ですよ、錬金術師殿。さぞや領主様も満足されるでしょう」
これは、設計の範囲で許されることなのかどうなのか。
この場にいる人たちが私に対して何を見て感じたのか分からないので、判断のしようがないのだが、設計の範囲であるのならありがたいことこの上ないのは、確かだ。
続いてオレキエッテは私に向かって言った。
「……錬金術師殿がその体に持たせたものは、大まかながらすでに聞き及んでいます。その身を使って、あなたは何をします?」
何をするも何も、というのが本音なのだが、それをそのまま言ってもいいものかどうか。
と考えたところで、私の奥に繋がっている何かが、その本音に触れたような気がした。
「……特にこれといって、何かをとは考えていません。私が私として生きていくために必要なことならするでしょうし、……そうでなければ、人の意見や要望でどうするか考えることもあるかもしれません」
本音を長くして説明になるように伝えるなら、こうなるだろう。
私が答え終えても、私に繋がっている何かに、何の様子もない。
「では、人を誘惑すること、誘惑して堕落させることについては、どう思われますか?」
これも、どうも何もないのだが、やはり私に繋がっている何かが、その答えとする私の嗜好に触れている感じがする。
「正直なところ、人の目を惹く容姿をもらったことで、それを楽しんでいるところもあります。けれどだからといって、人を堕落させたいとか、破滅させたいとかいうわけではありません。自分の容姿を理解し、適正にお付き合いしたいとは思いますが」
これもまた、繋がっている何かが何かをするような様子もない。
この調子で、色々と質問をされていった。
前世があると言っているが本当かとか、どんな人生を歩んだのかとか、淫魔の疑いがあるがどうなのかとか。
その度に、私に繋がる何かが私の本心に触れていく。
オレキエッテがそれでは質問は以上で、と言う頃には、その何かが何なのか、大体分かっていた。




