人の浸かったお湯を飲むということのありなしについて考えました
朝食後の飲み物を用意すると、私の『仕事』は一旦終わる。
クラウス様は領主として、または侯爵としての仕事に向かうが、内容は大体いつも違う。ようだ。
書類に目を通すこともあれば、人と会うこともあるし、どこかに出向いていくこともある。基本的にそういった仕事の中では、コンラートさんやエレオノーラさん以外の人の出入りが多くなるので、私はそばにいることは少ない。
といっても、お茶を用意してくれと言われれば、そうする。
なので基本的には、午前中は自室にいるか、クラウス様用の居間にいることが多い。
もしくは、本を借りに行くか。
この城にも図書室があったり、クラウス様個人の蔵書というものもあるし、先生が個人で持っている本もあるので、その時々で知りたいことや本で確かめたいことに合わせて本を借りに行っている。
ちなみに魔術に関する本は、先生が一番マニアックな本を持っていると思う。
錬金術師だからか、何なのか。
で、本を読んだり、個人的に魔術の練習をしたりしている。
私がほとんど本からの知識と、先生が与えてくれていた知識の確認で魔術を練習していることを知って、クラウス様が魔術の師を付けることを考えてくれたようだけれど、これまたクラウス様がそれを止めたことを知っている。
近くで呼べるそれなりの魔術師の中に、任せられる候補がいなかった。らしいのだけれど、どういう基準でなのかは、聞いていない。
想像はまあ、つくんだけれど。
大体、こう、私がエロい目に合うか合わないかっていう。
それはともかく、本日の朝食タイムも終わり、仕事に赴くクラウス様とお勉強に向かうヒルデガルトを、やる気になってもらうべく笑顔で見送ると、フリータイムだ。行動制限はあるし、居館内でもうろつく時にはコンラートさんかエレオノーラさんの同行をお願いすることになるけれどもね。
今日は何をしていようかと自室に戻ったところで、お風呂の話を思い出した。
クラウス様に本当にそんな実感があるのかどうか聞いておこうと思ったのに、忘れてしまっていた。
朝食はあの後、ダンスで着る服をどうするかで盛り上がっていたから、他の話が出しにくかったのだ。
ああいう話の時には、クラウス様とヒルデガルトも息が合うというか、趣味が合うというか。不思議なことだ。
そこにエレオノーラさんが加わってしまえば、私が口を挟む余地はない。
本当は、実感として効果があるのか、それとも単に最近調子がいいということを入浴と絡めて言っただけなのか、確かめておけばこの後読む本の選び方にも迷いがなくなっていたのだけれど、仕方がない。
せっかく思い出したことだし、入浴に魔女の力が関係ある可能性があるのかないのか、について調べてみることにした。
魔女の力は、持って生まれた魔力が食べ物なんかにもともと作用する形になっている、というものだけれど、それだけに、はっきりとした法則というものはつかみにくいものらしい。
ということまでは、分かっていて、魔女というものの説明については、大体そう書いてある。
つまり、それ以上の解説は、あまりない。
ので、他の方面から調べていくわけなのだけれど。
少なくとも私にはその魔女の力があって、飲み物、食べ物に関しては効果が発揮されている。
そしてこの城での入浴は、温泉を引き込んだものであるので、そもそも単に湯に入る以外の効果もあるかもしれない。
と考えてみると、その力の作用が、手で触れる必要があるのかどうかと、飲食しないものにも影響するのかということになるのではないだろうか。
問題はそれをどう確かめるか。
うーん、としばらく考えてみたけれど、最初に思いついた方法が、私が入る前のお風呂のお湯と、入った直後のお湯を比べてもらうというものだけれど、ものがものだけに、はっきり確かめるなら、『飲む』ことになるじゃないかと自ら却下した。
ううん。
ある女優がファンたちのために自分の入浴後のお湯をあげた、なんて話を以前、つまり前世で聞いたことがあるけれど、遠慮したい。
と思う一方、創作として美少年が使ったお湯を飲む表現はアリだなと思っている自分がこの場合ちょっと嫌だ。
でも結局、飲み比べるもので触れずに影響を比べてみるのが一番分かりやすいかなと思った。
それで、私が選んだ方法のために、エレオノーラさんを呼ぶことにした。




