結局何を言われたかっていうとなんですが。
笑顔を見せながら、本心はそうではないらしいという目を、クラウス様はすっと伏せた。
その仕草は、何かを考え込んでいるようだ。
余計なことを言っただろうか。
そう思い返して分かるのなら、話は簡単なわけで、生憎自分ではそれが余計なことだったのかどうかよく分からない。
ただまあ、この様子を見ていると、余計なことだったのだろう。
では、理由は。
と考えてみても、それだって分かるわけではない。
困ったものだ。
なんて思っているのは、単にこの状況にどう対応したらいいか分からないからだけれど。
気に障ったか、と聞いた方がいいのか、どうなのか。
こういうことは、タイミングを逃せばいっそう聞きづらくなってしまうし、私はすでにタイミングを逃してしまっている。
ほんとう、困ったものだ。
身動きが取れないでいた私の頭に、クラウス様の手が伸ばされた。
そして、ふわりと髪に触れ、ゆっくりとその手の重みを乗せられた。
なんだろう。
頭に乗せられた手の重みで、顎が上げられず、目だけをクラウス様に向けると、腕の向こうにその表情が半分だけ見えた。
困っているような、笑っているような、戸惑っているような。
それが確かにそうなのか確かめるより前に、私は頭をぐりんぐりんと回されて、クラウス様の顔に目を向けていられなくなった。
頭を撫でられているというには、首ごと回されている。
かといって、乱暴すぎるわけではない。
ひとしきり、ぐりんぐりんに回されて、ようやく離れた手に思わず息を吐くと、クラウス様が苦笑しながら 言った。
「君は少し、自分のことをわが身のこととして考えた方がいいな。……それとも、考えるのは嫌かな?」
「はあ……」
とりあえずうなずいたにすぎない私の声に、クラウス様が口の端を上げる。
今度は、目じりも下がっているけれど、面白がっているとか楽しんでいるという様子はない。むしろ、多分、逆だ。
その理由も、言われたことの意味もよく分からず、私にはとりあえずのうなずき以上のものが返せないわけだ。
どうも、会話が上手くつなげない。
もっとも、もともとそう会話上手というわけではないのだけれど。
それでも、一応社会に出たことのある人間として、そこそこの会話は出来ているつもりだったのだけれど、まあ、苦手な場面というのはあるし人生経験が豊富なわけでもないし、と現状に対してあがこうとすることを放棄する。
大体、何か上手く言おうとして、上手くいくというものでもない。
この場合、その判断がよかったのかどうか。
フム、とため息交じりのような咳払いのような音をもらして、クラウス様は私のまえにしゃがみこんだ。
大人と子どもの身長差が、一気に小さくなり、目の前に、彼の顔を見ることになる。
「つまりだ」
口を開いたクラウスさまの声音も、表情も、きわめて真剣な、加えて心配しているらしいものだった。
「君という存在の体を造らせたことに異論はないが、その理由も目的も、君自身が体験することになるものだということだよ?」
「はあ……」
それが分かっているから、どうにか上手いこと逃れながら庇護だけ受けていられないだろうかなんて考えているのだけれど。
「無理強いをする気は一切ないが、私が望んでいるのは君だということをよく理解して欲しい」
そう言って、クラウス様は私の耳元に顔を寄せた。
そして。
何があったかだけ述べておこう。
無茶苦茶エロいことを言われた。




