早く城関連の敷地内位は自由に歩きたいところです
少年たちに慕われるている領主が、どうやら私の現在の外見のような少年を愛でる性質であることがどういうことか、などと考えている私をクラウス様が呼ぶ。
つまり、当の領主様だ。
「さて、ルカ。そろそろ戻ろう」
その言葉に、兵士見習いであるところの少年たちは、何故私がそう声をかけられたのかと一瞬不思議そうな顔を見せた。
それから少しおいて、そういえば、というようなひそひとそしたやりとりが聞こえた。
「給仕だもんな」
「俺らも、そろそろ朝食だよな」
クラウス様は、そういうわけだとうなずいている。
確かに、食後の飲み物を用意するのも私の仕事だ。
それにしたって、たかが給仕を領主自ら迎えに来て一緒に居館に戻ろうとしたりするものなのかどうか。
という私の疑問と同じものが、少年たちにとっては先ほどの一瞬の間であったのだろう。
微妙な気持ちにさせて申し訳ない気がしたけれど、私の本当の立ち位置をはっきり知ると、さらに複雑な気持ちにさせることになるのだろう。
それはやっぱり、今の気持ち以上に申し訳ない。
とはいえ、私も居館どころか自室とその周辺にばかり閉じこもっているのも、付き合いがクラウス様のごくごく近侍に限られるのも退屈だ。それに、自分のこの世界なり、城なりでの立ち位置が分からないままなのも困る。
ホムンクルスがこの世界でどういう扱いなのか理解したところで、伝聞や本から得た知識では意味がないってことだ。
今のところクラウス様はそれがいいかのように言ってくれるけれど、元は生きた人形をお望みだったわけなのだし。
いざという時、何の経験値もない上に、社会経験も積めそうにないこの立場で、どう生きていくかくらいは備えておきたい。
「それじゃあ、今朝は訓練に混ぜてもらってありがとうございました」
少年たちに頭を下げると、彼らは何の疑問もなく『またな』と口々に返してくれた。
本当にまた混ぜてもらえることになるかどうかは、クラウス様次第な気がするけれど、それをこの場で確かめる必要もない。
クラウス様と並んで、訓練場と居館を繋ぐ塔に向かって歩き出す。
「どうだったかな、訓練に参加してみて」
並んで歩くには、私の歩幅は狭いだろうに、クラウス様は綺麗に横を歩きながらそう聞いてきた。
「そうですね、剣は型を教えてもらっただけですけど、久しぶりになんていうか、体を動かせてよかったですよ」
そう、なんだか少し気分がすっきりしていたのだ。
やっぱり人間、ではない体だが、ある程度は体を動かすことも必要だ。
なんてね。
はは、とクラウス様は笑った。
「そうか、それならもう少し早く連れてきてもよかったかな。……私がいれば、まあ、そう問題はないだろうし」
と、視線を背後に向けて言う。
つられて振り返った私は、振り返らない方がよかったな、と即座に反省した。
ふり返ると同時に、訓練が終わりという声が上がっていた兵士たちの空気が、一変したからだ。
色めき立つ、というのがいいのだろうか。
一気に欲の顕在化する様を目撃してしまった。
どう考えても肉体派である兵士たちの数など、実数は把握しないでおく方が私の精神衛生上いいかもしれない。
いつまた、私がエロいルートに踏み込む可能性としての夢を、ソムニウムに見せられるかわかったものではない。
「……気を付けます」
うかつに振り返ったことも含めて、そう返すと、クラウス様にはまた笑われた。
「そうだな。私も、君を閉じ込めてしまいたいわけでもないし、そうしてくれるとありがたいな」
どこまで何を思っての言葉か分からないのが、この人の不思議なところでもあるよな、と思いながら、私は背後からの視線を意識の外に締め出すことに専念することにした。




