探りあい〜ケイジ
ほっとしていた。
モモコが急に彼女と別れた理由を聞いてきたときはびっくりしたけれど、こわばっていた表情が戻ってにっこりしてくれたときには全身から力が抜けたようだった。
今になって汗が噴出してきた気がして、モモコにさとられないように手のひらの汗をぬぐう。
(過去のことなんだから・・・今はモモコがすきなんだけどなあ)
思いをこめてモモコを見つめるが、モモコは笑顔を浮かべたままテーブルを見つめていた。
その肩が、震えたように見えてケイジは目をこらしたが、特に変わった様子はない。
見間違いだったのだろう。
そこまで考えて、ケイジは今日の告白についての思いをめぐらした。
(うーん・・・さっきまではいい雰囲気だったけど・・・)
モモコはまだ顔を上げない。
(やっぱり元彼女と会った後に告白するってのもなあ・・・)
これからだってチャンスはめぐってくるだろう。
せっかく4年もかけて作り上げた関係だ。
ちょっとでもマイナスの要素があった今日は取りやめるべきかもしれない。
でも、とケイジは思う。
(こんなことがあった今日だから告白したほうがいいだろうか?)
モモコも自分のことを好きでいてくれるとしたら、今日はちょっとショックを受けているかもしれない。
そんなことないよ、モモコが好きだよ、と
こういうときこそ言ってあげるべきなのかもしれない。
モモコはかたくなにメニューを見つめている。
デザートのページを見ているから、食事が終わってすぐにさよなら、というつもりではないらしい。
さっきまで浮かんでいたはずの笑顔がもう消えているのにふと気づき、ケイジはあわててモモコに話しかけた。
「モモコ」
モモコは最初、焦点が定まらないような目つきでケイジを見た。
その目に恐れを見たような気がした。
(おびえてる・・・?)
ケイジがいぶかしげな表情になったのだろう、モモコははっとしたように
「デザートも食べようかな!!」
と明るく話し始めた。
「あーこのパスタもよかったねー、これも、これもおいしそう!!今度は車でこないでお酒飲むのもいいね!!」
空元気、という言葉がぴったりなその様子を見て、ケイジは思い出した。
モモコの過去の恋愛を。
自分はモモコに「どうして彼女と別れたの?」
ときかれ、なんと答えただろう・・・・・・?
取り繕うことに必死で、何も考えていなかった。
胸の中でシャボン玉がはじけたようだった。
今日の告白は中止、と、ケイジの心で判断が下された。




