キモチの問題〜モモコ
「いや、むしろ見つかりたくない」と肩をすくめるケイジを、モモコは凝視した。
(そんなに嫌な思いででもあるのかしら…)
そういえばケイジが別れた理由を聞いたことがなかった。
別れたという報告をうけたあと、何度か聞きたいとは思ったが。
ケイジの元彼女が、こちらに気づかず(もしかしたらもう忘れたのだろうか、それとも気づかないフリだろうか?)離れた席に座ったのを確認して、モモコは言った。
「4年もたってるから聞くけどさ、ケイジってどうして彼女と別れたの?」
瞬間的にケイジの顔がこわばるのが見えた。
(しまったなぁ…)
やっぱりなんかされたんだろうか?
例えば浮気とか…
そこまで考えて、モモコは過去の自分を思いだしかけ、いそいでその思い出から離脱した。
取り消したくても口から出た言葉はもう戻らない。
モモコは返事を待った。
「うーん…特に理由はなくて、ちょっぴりわがままだけどきれいでいい子だったんだ。でもなんか、そうだなーマンネリっていうのかな?」
心が沈むのがわかった。
確かにすごく綺麗な女性だった。
もう一度振り返りたい気持ちを必死に押さえる。
「お互いに何かしら感じてたんだと思う。違和感みたいな…決定的になにかあったわけじゃないんだよ。」
話し続けるケイジの声が遠く聞こえた。
モモコは過去の自分に蟻地獄のように飲み込まれる心を感じながら、ケイジに向かって微笑んで見せた。