裏世界へようこそ
「お母さん。早くして」
新品の制服を着たつばさは、玄関からお母さんを呼ぶ。
今日は、私立桜城学院中等部の入学式がある。 1つ上の兄つかさもここに入学していて兄妹そろって特待生なのだ。
桜城学院は、日本でも知らない人はいない超有名校である。
「はーい。これから自己紹介をしてもらいます。えーっと・・ じゃあ隣の人としてください。」
1年A組 つばさの担任になったのは、田島 未子というまだ新人の若い先生だった。
「オレ、山城 聖希ってんだ。 よろしくな。」
隣の子が声をかけてきた。
「あっ 私は 宮野 つばさってゆうのよろしく」
少し早口になってっしまったつばさに聖希は微笑んでくれた。
「ただいま!」
つばさは家に帰ると早速聖希のことを報告した。
「お母さん。今日ね友達ができたんだよ しかもちょーイケメンでモテモテ男子なの」
そう、聖希は授業が始まる前にキャーキャー叫ばれていた イケメン男子なのだ。
~次の日~
チリチリチリチリ
「ん~」
目覚まし時計の音でつばさは目が覚めた。
「ふぁ~ っと さっ起きよ」
布団から出たつばさは、机に何かおいてあるのに気付いた。
「あれなんだろ」
机のほうに行ってみると、青いかぎのようなものとメモが置いてあった。
「かぎ? なんのかぎ?」
つばさは小さくつぶやいた。
メモには、
[アナタハブルーキーノモチヌシニエラバレタ。 キョウノゴゴ6ジ チュウオウホールニコラレタシ。]
と、書いてあった。
「おにいちゃーん」
つばさはおおきく手を振った。
「入りずらいよな」
つばさの横に来たつかさはそういった。
「6時まであと5分だし入ろっか」
「そうだな」
二人は中央ホールの中に入った。
実は今日の朝、兄 つかさもカギが置かれていたのだった。
中にはすでに16人の人がいた。
みんな歳はばらばらそうに見えた。
「12人 全員揃いましたね」
舞台の上にいた若い男性が言った。
みんながその人のことを見た。
「それではかぎをお持ちのみなさん。 舞台に上がってください」
つばさたちは舞台の上に上がった。
「みなさん かぎの色と同じテープのところに立ってください」
そしてみんなが輪になった。
「それじゃ みんなかぎ出して」
みんながいっせいにかぎを出した。
だされた鍵は、12色でみんな違う色だった。
「よし。自己紹介をしよう じゃあ僕から。 僕は、これから行く世界の案内人 ヤマトです。 よろしく」
「じゃあ次は俺。」
ヤマトの隣の人が言った。
「俺は、崎坂高校に通ってる北山 直樹。 17歳の高2。かぎの色は紫。よろしくな」
崎坂高校は、この近くの比較的頭のいい都立高校なのだ。
「私は、桜城学院大学2年の多木 瑞穂。20歳かぎの色は緑 よろしくね」
「僕は、橋本 美紀。京生小学校の6年生です!かぎの色は黄色 よろしくお願いします!」
「俺は・・・」
聞いたことのある声だった。
「山城 聖希ってんだ 桜城学院中1年で13歳。 かぎの色はオレンジ。 よろしく」
その名前に驚いたつばさは、思わず
「山城君・・」
とつぶやいていた。
そしてその声が聞こえたのか、聖希も
「宮野!」
といった。
その時
「そこ! 私語禁止!」
案内人のヤマトが注意した。
「すみません」
「ごめんなさい」
二人がそう言って、自己紹介は再会した。
「私は、佐藤 楓。 山ノ井看護専門学校の4年生で22歳。 かぎの色は、赤です。」
「僕は、櫻 光希。新堂大付属中学3年の15歳。かぎの色は、黄緑です」
「私は、櫻 咲希。新堂大付属中学1年の13歳。かぎの色は、ピンクです」
「俺は、鷺ノ宮 陸人っつうんだ 海島高校3年 18歳。かぎは、水色」
「私は、宮野 つばさ。桜城学院中1年の13歳。 かぎの色は、青 よろしくお願いします」
「俺は、宮野 つかさ。桜城学院中2年の14歳。 かぎの色は、黒 よろしくお願いします」
「私は、優雅 香奈。 立党大2年 20歳 かぎは金」
「僕は、鈴木 一弥。 かぎは 銀。後は 優雅さんに同じ」
全員の自己紹介が終わった。
「全員終わりましたね。 それじゃあ行きましょう。」
「ちょっとまって!」
佐藤さんが言った。
「どうしましたか? 佐藤さん」
ヤマトが行った。
「ここに来た人全員が聞きたいと思うけど、私たちはどうして集められて これからどこに行く気なの? そして何をする気なの?」
みんながうなずいた。
「話してませんでした?」
驚いたように聞いたヤマトに光希は言った。
「なにとぼけたこと言ってるんですか 僕たちは朝起きたら机にかぎとメモが置いてあって、そのメモの指示どうりに6時にこの中央ホールに来てこうやってヤマトさんの言ったとうりに自己紹介しただけなんですよ」
みんなのあきれた顔をみてヤマトはようやく納得したようだった。
「すみませんでした。それではこれから行く世界のお話をしましょう」
張り切っていったヤマトにすかさず光希が口をはさむ。
「これから行く世界って、地球以外の世界に行くつもりなんですか? てかそんな世界あるわけないじゃないですか」
いいきった光希はため息をついた。
「地球以外というか、地球の裏側に存在する世界 いわば裏世界というやつですね。 通称‘自由の世界’と呼ばれる場所
です。 自由の世界は、7つの国からなっています。 平和の国、水の国、木の国、空の国、海の国、未来の国、そして悪の国。
今から皆さんにくじを引いてもらいます。 そしてどこの国に行くか決める。 説明は、ここまでです」
ヤマトが言い終わったとき、みんな黙り込んでしっまた。
しかしヤマトは、その様子がどうしてかわからないらしく、少し困っていた。
「理解できましたか?」
ヤマトは、しばらくしてみんなに声をかけた。
「なんとなくは・・・」
つばさは、言った。
「びみょーだけどな」
つかさも言った。
「それではくじを引きましょう!!」
開き直ったヤマトは言った。
「じゃあ 北山さんからどうぞ。」
直樹は、ヤマトが持っていた割りばしのくじを引いた。
「水の国・・・」
小さくつぶやいた。
「次は、多木さん」
瑞穂もくじを引いた。
「私は、木の国!」
瑞穂がうれしそうに言った。
「橋本さん」
「海の国です!」
「山城さん」
「平和の国・・」
「佐藤さん」
「空の国よ」
「櫻 光希さん」
「僕は、木の国。 多木さんと一緒です」
「櫻 咲希さん」
「私は、未来の国」
「鷺ノ宮さん」
「俺は、海の国。」
「宮野 つばささん」
「平和の国 って山城君と一緒」
聖希とつばさは目が合った。
「大丈夫ですか? 次、宮野 つかささん」
「俺は、水の国。北山さんと一緒です」
「優雅さん」
「未来の国だって」
「じゃあ最後の鈴木さんは 未来の国ですね」
「そうだな」
一弥は、小声で言ったが みんなにはしっかりと聞こえた。
「よし!! それではそれぞれの国に行きますか」
「どうやって行くんだ?それぞれの国に」
「そうだよ どうやっていくかは説明されてないよ」
今度は一弥もはっきりと言った。
「そうですね それでは説明します。 まず 自分のかぎを出して平和の国だったら『seven world平和の国!!』と叫んで
5秒ほど目をつぶってください。 そして目を開けると 叫んだ世界にいけるということです。」
ヤマトは、言い終わると少し笑った。
「ありえない」
つかさの呟きに咲希は素早く反応した。
「でもやってみないとわかりませんよね」
「やってみるか」
陸人が口を開いた。
「みなさんいいですね?」
ヤマトの問いかけにみんなは「うん」とうなずいた。
「それでは、平和の世界の山城さん 宮野さんのペアから行きましょう。
せーの の合図で2人声を合わせてさっき言った掛け声を言ってください」
つばさは大きく深呼吸をした。
「大丈夫か?」
ほっぺたが熱くなったような気がした。
(イケメン君に声をかけられてしまった)
「大丈夫。 ありがとう山城君」
足元を見て言ったつばさに聖希は
「しっかりしろよ」
「うん」
「さて いいですか? 3・2・1 せーの」
「seven world 平和の世界」
つばさと聖希は声をそろえて言った後、目をつぶった。
「どこだここ?」
最初に目を開けたのは、聖希だった。
そして聖希の声に目を開けたつばさは
「すごいホントにきちゃったんだ。」
といった。
「ようこそ! よく平和の国においでくださいました」
ふいに後ろから声がした。
2人が後ろを向いてみると、そこには同じぐらいの歳の女の子がいた。
「えっと・・あなたは・・?」
つばさが聞いた。
「私は、チカ。この国の案内人っていうか自分で言うのもなんだけどお姫様なの」
「えっ・・ お姫様が案内人?」
驚くのも無理はない。 チカによると、何しろ自由の世界ではお姫様が案内社 社長のヤマトの見習いになって、それぞれの国の案内人として働くのだという。
「ってことは、案内人はあなただけじゃないはずよね あっ 私の名前は宮野 つばさっていうの」
「オレは、山城 聖希だけど」
「お名前教えてくれてありがとう。 もちろん案内人はこの国でも私だけではないわ でもヤマトさんにT7時に来るお客さんはあなたが出なさいっていわれたので こうやってお迎えしているのです」
チカは、笑顔で言った。
※中央ホール※
「それでは最後に 未来の国行の優雅さん 櫻さんペア」
「seven world 未来の世界!」
そして2人がいなくなり、中央ホールはヤマトだけになった。
「ショーの始まりだ」
そうつぶやくとヤマトも消えた。
※平和の国※
「それでは ご案内します。 ついてきてください」
そういって前を向き歩き出したチカにつばさと聖希は、後ろからついて行った。
「あのぅ 今何時か教えてくれる?」
しばらく歩いた時につばさがチカに声をかけた。
「この世界に時間は存在しません。 そしてあなたたちが裏世界にいるときは、地上の時間は止まっています。」
チカがあっさりと答えた。
つばさと聖希は、納得できなかったがもう聞かないことにした。
「あっ そうだ」
急にチカが立ち止った。
「どうしたんだ? チカ・・・さん」
聖希が聞くと
「ごめんなさい これから行く場所はこの国での2人の住まいです。
もうすぐ見えてきますよ あと 私は2人と同じ13歳ですので呼び捨てで呼んでもらって構いませんよ」
チカはつばさたちの歳を知っていた。どこかで調べたのだろうか。
「ならチカも敬語やめてよ」
つばさが言うと
「わかった」
と返してくれた。
「それじゃあ 進もっか」
そして3人は歩き出した。
「見えてきたよ あの白い建物」
少したって、マチが指を指した先には白くてっぺんが青い立派なお城が立っていた。
「えっ! あの・・お城?」
おどろいたつばさにマチは微笑んだ。
「そうですよ ヤマトさんから聞きませんでした?」
「この国での2人の位置は、国王と王女ですよ」
マチの言葉に2人はボーっとしてしまった。
そしてお城の前に来た。
「着きましたよ」
「あのさ・・・ やっぱ何でもない」
久しぶりに口を開いた聖希の言いたいことは、つばさにはわかった。
「それじゃあ私はここで 中に入ってね じゃあね」
「マチは入らないの?」
聖希と2人だけでは不安だという内心が外に出ていた。
「ここは神姫、天王しか入れませんから」
そういうと マチは行ってしまった。
「入るか」
「そうだね」
2人は一緒に城の扉を開けた。
城の中に入ると、まず最初に目に入ったのはずらりと一列並んだメイドと執事たちだった。
右には(メイド)女性、左は(執事)男性と、50人ぐらいが並んだ列が2人の歩く道を挟んで並んでいた。
「ようこそ いらっしゃいました」
合計100人ぐらいのメイド 執事が声を合わせて言った。
「ご案内させていただきます ナギと申します」
2人が困惑していると、1番前に並んでいたメイド__ナギが一歩前に出て声をかけてきた。
「それではまずそれぞれの寝室にご案内させていただきます パイお願いね」
「はい」
パイと呼ばれた男性は、執事列の1番前にいた。
「僕は、パイといいます。 それでは 山城様 ご案内いたします。」
そういうとパイは歩き出した。
聖希も 「頑張れよ」と言い残してパイの後ろについて行った。
「じゃあ 宮野様も行きましょう」
聖希たちが階段を上り、見えなくなったとっきナギが言った。
「あっ ええ」
そして、つばさも歩き出した。
赤いカーペットのひかれた階段を上がると、高級ホテルに来たような真っ白な高級感あふれるドアが並んでいた。
右側に行って、4番目のドアのところでナギは止まった。
「ここが宮野様のお部屋になります。 何かお困りのことがありましたら、入ってすぐところにあるコールボタンを押してください。すぐにメイドを行かせますので。 それではごゆっくり」
そういってナギは歩いて行ってしまった。
仕方がなくドアを開けると、まず見えたのがアンティークの家具だった。
「うわっ」
思わず言ってしまった。
「どう思う?」
呆然としていると、後ろから聞きなれた声がした。
つばさが後ろを向くと、予想道理聖希が立っていた。
「山城君!」
「聖希でいいよ 俺の部屋左側の4番目だからなんかあったら来いよ」
聖希は、それだけいって自分の部屋に帰ってしまった。
中に入り一歩進むと右側に洗面所、左側に居間があった。
居間には、机といす 棚の中には お茶セットが入っていた。
居間の1番奥にある扉を開けると、そこは寝室だった。
寝室には、真ん中にセミダブルのベッド、ドアの右側には勉強机が置かれていた。どれも新品だった。
「すごい」
つばさはつぶやいた。
しばらく部屋を回っていると ドアをたたく音がした。
「はい!」
つばさが部屋の奥から扉のほうに声をかけると
「ナギでございます。お夕食の準備が整いました。ご案内いたします。」
と 返ってきた。
「今行きます」
そういって、つばさはドアを開けた。
「それでは参りましょう」
ナギに続いてつばさも階段お降りた。
最初に入った時とは違って誰もいない 広い空間だった。
そして 階段のすぐ横にある部屋に入った。
そこには、テレビでよく見るながーい机が置いてあった。
その1番奥の右側に聖希が座っていた。
ナギは、つばさを聖希の向かい側に座るように 誘導した。
つばさが座るとナギは、奥の扉の向こうに行ってしまった。
「大丈夫か?」
つばさが下を向いていると聖希が声をかけてくれた。
「山城く…あっ 聖希…君」
「呼び捨てでいいって 俺らずっとここで暮さなきゃいけないのかな?」
明るく問いかける聖希につばさも少し元気になった。
「でも ここで何するんだろ だってただ裕福にここで暮せばいいわけではないだろうし」
つばさは、今まで言えなかったことを聖希に伝えた。
2人きりになったからこそ言える 本音だった。
「そうだよなー でも今は何とかなってるだろ 来るなら来い!そうやって来た時に受け止めればいいんだよ それで地球もうまく回ってんじゃないか な!」
聖希は勝ち誇ったように言った。 つばさも同感だった。 今から未来に何があるかわからないものを考えたってしょうがない 今は今の時間を大切にしよう。
つばさはそう心に刻んだ。
「そうだよね 聖希の言うとうりだよ なんか いろいろありがとう」
つばさは 微笑んだ。
「初めてだよ おまえの心から笑った笑顔を見るのは」
聖希も嬉しそうだった。
「最初のディナーになります。ゆっくりお楽しみください」
ナギの言葉と同時に美味しそうなディナーが目の前に出された。
「いただきます!」
※悪の国※
「準備が整いました あと旦那様がお呼びですよ」
悪の国のお城black塔に王子 サイルスはいた
「そうか 準備係には2時間後に行くと伝えろ お父様に会いに行く」
まだ若い声だった。
「了解しました 伝えておきます 旦那様は薔薇の間におりますので」
サイルスの父親であるサフキ王に使えているシンは、そういって 去って行った。
「2年ぶりの顔合わせか…」
そうつぶやくとサイルスは、薔薇の間に向かった。
※薔薇の間※
「2年ぶりか」
サイルスが部屋に入って最初に言われた言葉だった。
「何の用ですか?」
サフキの話しを全く聞いていなかったかのような口調だった。
「ずいぶんと気が早いのも変わってないな それじゃあ望みどうり本題に入ろうか おまえ 戦争を起こすつもりだろ」
サフキはサイルスの考えを見ぬいていた。
「裏世界は平和の世界 戦争は禁止されてるはずだが」
さらに続けた。
「何のことですか?そんなこと考えるわけないじゃないですか!」
サイルスはごまかした。
父親といってもサフキは容赦がない
俺が戦争をするといったらサフキはきっと正道者(裏世界の警察)を呼ぶだろう
もしそうなったら 表世界に連れて行かれ、二度とこの世界に出入りできなくなってしまう
「じゃあ これはなんだ?」
着物を着ていたサフキが胸元から出したのは 1冊のノートだった。
その中には サイルスが書いた戦争計画があった
でもしっかりと自分の部屋に隠しておいたはずだったが…
「それをどこで?」
※平和の世界※
朝になってつばさは考えた。
そうだ 昨日のはきっと夢だったんだ
だって裏世界なんてあるわけないよ
今 目を開けたらいつもの部屋でいつものベッドにいるんだろうな
「つばさー つかさーいつまで寝てるの?」
やっぱり
つばさは目を開けた
いつもの部屋のいつのもベッドの上だった
「そうだよね」
そう言ってベッドから降りた
その時 机の上のメモに気付いた
「まさか!」
メモを開けた メモには
[コレカラモシジハメモデオクル]
「夢じゃなかったんだ」
小さくいって階段を駆け下りた
ダイニングに入るとお母さんとつかさがご飯を食べていた。
つかさは何事もなかったように いつもと変わってない。
今日の朝ご飯はご飯とみそ汁。 なにもおかしいものはない
つばさは お母さんに聞いてみたいことがあった。
「お母さん 今日何日?」
「いきなりどうしたの? 今日は4月9日よ 早くご飯食べなさい 学校遅刻するわよ」
確かに 表世界の時間は止まっていた。
「うん ありがとう」
つばさも 席に着きご飯を食べた。
「いってきます!」
「いってきます」
つばさとつかさは一緒に家を出た。
しばらく何も言わずに歩いていた。
「なあ 裏世界に行ったあとどうなった?」
10分ほど歩いたところでつかさが口を開いた。
「マチっていう姫が出てきて 城に連れてかれた」
「そっか俺は アクアっていう王子だったな」
つかさは 空を見上げた。
「あれは 夢じゃなかったんだよね きっと」
つばさも上を向いた。 雲1つない晴天だった。
教室に入ると聖希はやっぱりたくさんの女子に囲まれていた。
「おはよう つばさちゃん!」
声をかけてきたのは村井 奈々香。 幼稚園からの幼馴染だ。
小学校は別だったが中学でまた一緒になった親友で、同じ1年A組になったのだ。
「おはよ!」
つばさも明るく返した。
「それにしてもすごい人気だよね 山城君」
奈々香は聖希に目を向けた。
「ほんと まっスポーツ万能だしね」
つばさも聖希を見た。
「おはよ!」
いきなり声をかけてきた。
「あっ どうしよう おはよう」
聖希は 奈々香の好きなタイプらしい。
「おは!」
つばさもあいさつを返した。
つばさは授業中も昨日のことを考えていた。
「なあ ちょっといいか?」
2時間目が終わった休み時間。 聖希が声をかけてきた。
「えっ あぁ いいよ」
席を立ったときに見えたほかの女子の目線が痛かった。
廊下に出ると聖希が口を開いた。
「これ オレのポケットの中に入ってた」
そういって取り出したのは、つばさのカギ ブルーキーだった。
「なんで聖希が…これを?」
確かに朝からかぎは見なかった。
でも聖希が持っているとは…
「俺にもをわからない でも返さなきゃって思って」
聖希にも理由はわからなかった。
「ありがとう」
つばさはかぎを受け取った。
「それじゃ」
そういって聖希は教室に戻っていった。
「なんだったの? もしかしてデートの話ィ?」
またきた。
奈々香は、つばさが男子と2人で話すといつもこうやって冷ややかしてくる。
「まっさかー そんなわけないじゃん」
急いでかぎをブレザーのポケットに入れた。
「なんか隠してるぅ 山城君のつばさちゃんを誘う目 すっごく真剣だったよ」
つばさに疑いの目を向ける。
どうも嘘をつくのは苦手だとつばさは思った。
「違うってば~ ちょっと落し物をね」
「そっ…か」
奈々香の表情は、まだ納得してないようだった。
そのあとの授業も集中できなかった。
「じゃあ15ページまでやってきてください。」
田島先生が言う。
「きりつ 礼」
日直の稀一 香澄が言う。
「ありがとうございました」
クラスのみんなが言う。
つばさには 聞こえる音、声のすべてが遠くから聞こえてきた。
「つばさちゃん 今日ずっとボーっとしてるけど大丈夫?」
確かにかぎを渡されてからあんまりよく覚えてない。
「大丈夫… だと思う」
「そっか 一緒に帰ろ」
「うん いいよ」
学校からの帰りは学校から1番近い桜駅で電車に乗って7つ目の南桜駅で降りる。
奈々香は6つ目の山神駅だ。
「あれ山城君じゃない?」
つばさは奈々香が指を指しているほうを見た。
確かに聖希だ。 でもちょっと違う 何が違うんだろう
「でも違う学校の制服着てる」
それだ!
「聖希に兄弟なんていたっけ」
「つばさちゃんいつから山城君のこと呼び捨てにしたの?」
やばい 学校桜城学院中に通い始めてから3日目で呼び捨てはおかしい
「そこは聞かないで 聖希もどきに聞いてみようよ」
それが1番いい方法だと思った。
「あのー」
その人に声をかけた。
「あの 山城 聖希って知ってますか?」
つばさがそう聞くと彼は、すぐに反応した。
「あいつのこと知ってるんですか!?」
聖希のことを知ってるようだった。
「まあ はい 山城君は私たちのクラスメートです」
奈々香が言った。
「すみませんがゆっくり話を伺いたいのでばくの家まで来ていただいてもよろしいですか?」
とても誠実な人だとつばさと奈々香はそう思った。
「大丈夫! だよね奈々香?」
そのあと奈々香からOKをもらい2人で彼の家を訪れた。
「絶対ここお城だよね」
彼の家に着いたときは呆然とした。
超豪邸の家…というより城が立っていたから…
「どうぞ」
案内されたのは彼の部屋だった。
「えっとじゃあまず自己紹介するね 僕は、山城 海人。聖希とは双子の弟にあたるんだけど聖希はそのことを知らないんだよね」
少しさみそうな言い方だった。
「聖希が海斗さんと双子…でもなんで聖希は知らないんですか?」
つばさには不思議でたまらなかった。普通兄弟なら両親と一緒に暮らすものだし…
「それが 僕たちは裏世界と表世界の間に生まれたハーフという存在なんです 裏世界の決まりで裏表のハーフは掟で禁止とされているんです そしてその間に生まれた子供も 血液検査をして、裏世界にしかないUSという血液を測ったんです」
海人は悲しそうだった。それでも[きまり]だけで家族を引き裂いてもいいのだろうかそんなことをつばさは思っていた。
「それで…」
海人はうなずいた。奈々香も悲しそうだった。
「そう 僕だけにUS型が検出されたんです」
なんて言ったらいいか、わからなかった。
「じゃあ聖希と話をしたほうがいいんじゃないの?」
ようやく探し出した言葉だった。
「そうだよ そぐにでもあって…」
「決まりは絶対なんだよ!!」
海人が叫んだ。
「ちょっとまった 裏世界?ってなんのこと?」
奈々香が遮った。
「ごめん 私、ちょっと出てくる」
少し強気で言った。つばさにとって聖希を呼び出さずにはいられなかった。
外に出ると春風が吹いていた。その風はとても気持ちよかったのに何か自分に忠告してるような気分になった。
「もしもし聖希?今あいてる?」
教えてもらった番号に初めてかけた電話だった。
「えっ? あっまあ空いてるけど…どうかした?
「今から朝倉町の和良に来れる?なるべく早く!」
要件は言わずに場所だけ伝えた。
「和良なら今いるけど… 住所教えて」
予想外の答えだった。
その時、
「どうしたんですか?」
海人が家から出てきた。
つばさは急いで聖希にやっぱ何でもないと小声で伝え返事も聞かずに電話を切った。
「ごめんなさい ちょっとお母さんに伝えたいことがあって」
頑張ってごまかした____つもりだった。
「兄さ…聖希にですか?」
つばさがやってはいけないことをやろうとしていたのに、海人はあまり怒った様子ではなかった。
「ごめんなさい」
これ以上嘘はつけなかった。
「部屋に戻りましょう」
つばさの謝罪は海人の耳には入らなかったような感じだった。
こんにちは!宮城 夜月と申します。
まだ小6で初めて世にお披露目です!
私は、小説が大好きでたくさんの物語を読みました。今回難しかったのは、『つばさは、』というようなよく使う言葉を重なりすぎないように注意したことです。趣味にしては考えすぎじゃない?と友達のよく言われますが、私は趣味だからこそ力を入れているといっています。これからもいろんな話を書いていきますので、どうぞよろしくお願いします!