センパイ
「やっほォ、鷹良クン♪」
鷹良の隣にはいつも女がいた。
今日もアイツの横には女がいる。
女なんてウザいと言っている割に、嫌な顔ひとつ見せない。
無愛想だけど、心からやめてほしいなんて言っていない。
本当は女が好きなんじゃないのか?
親友の俺が言うのもアレかもしれないが、同じ男として、
嫉妬せずにいられるだろうか。
俺は中学で友達になった時から、ずっと鷹良と比べられていた。
「なんで鷹良、斎汰なんかと居んの?」
「斎汰、鷹良クンと比べ者になんなーい。」
「斎汰に鷹良はもったいねぇよ。」
そう言われ続けてきた。
いや、はっきり言うと、見かけにはソコソコ自信があった。
実際、小学校の頃はモテていたし、イケている男子組だった。
それが、鷹良と出会ってから…
「男の嫉妬は見苦しいぞ、斎汰クン♪」
後ろから頭をポンと叩かれた。
「なッ…」
振り返るとそこには、昨日鷹良にはむかった初の女だった。
「まぁ、斎汰クンかっこいいじゃん。
鷹良ってヤツは、ホンモノの女嫌いだと思うよ!
嫉妬するのも無理ないけどな~
やっぱ、世の中顔かね?そんだったら、あたし評判どうかなぁー
アッ、あたしもね、小学校の頃はモテてたんだよ。これでも!」
ペラペラと喋る女。
まるで俺の心のなかを読んでいるようだった。
いや…
読んでいるとしか思えなかった。
「お前…誰?何組?同学…だよな…」
俺がおそるおそる聞くと、女は笑顔で俺の頭にチョップをかまして、笑った。
「高校2年B組6番、大宮寺蓮菜!
あたしのお父さんが大宮寺 隅で、武道家。知ってる?
趣味:武道‼ ヨロシク★」
そう言って、俺を見ながら走り去っていった。
センパイだったのか…
なんて事よりか、大宮寺 隅といえば、先月も世界チャンピオンに輝いている、超有名な武道家だ。
それがアイツの親父?
よく分からなかったが、ただアイツが危険人物であることだけはうかがえた。
「おーい、斎汰。行こうぜ!」
そうだった、移動教室の途中だったんだ。
俺が鷹良の元へ走ると、不思議そうな顔であの女のことを口走っていた。