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10.さいごに、あいしたひと
夢に堕ちている、その時間だけが幸せだった。
あの日あの瞬間に君の時間は止まってしまって、同時に俺の心の時間も止まってしまった。
夢の中では時間を止めてしまった君が、それ以前のように隣にいてくれて、その夢だけが俺の支えだった。
遠い昔、君の首にかかっていた冷たくて硬いそれは、あの日君によって俺へと渡された。
冷たくて硬い、小さな小さなラブレター。
小さなそれの小さな扉を開けても、文字なんてひとつも出てこなかった。
ただ、涙が溢れただけ。
優しい君の、最期の手の感触を思い出す。
愛しい君の、最期の愛の言葉を思い出す。
恋しい君の、この扉の中を見ていたひどく優しい・・・幸せそうな笑みを思い出す。
たくさん言いたいことがあった。
もっと伝えたいことがあった。
君としたいことが、いっぱいあった。
それでもこの小さなラブレターのおかげで、少しだけ報われる気がした。
遠く青い、空を見上げる。
君が好きだといった、俺の目と対照的な・・・その色。
きっとその色の向こうに、君はいるんだろう。
「君は、幸せでしたか?」
最期の最後に、苦笑とは違う満面の優しい笑みを浮かべた君。
それがその問いの、答えであった気がした。




