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第6話:「胎動⑥」

「ほぅ、オレの一撃を受けるとはな、なかなかやるじゃないか」

槍を真っ直線に地面につけながら男は不敵にわらう。どうやら闘いをたのしむ(たぐい)のようだ。


「このまま何もしないってんなら命だけは奪わないでやるよ」

「断る、軍人としてお前たちの蛮行を許すわけにはいかない」

「そうかそれは残念だ」

男が槍を水平にかかげる。またあの一撃が来る。つぎ食らえば確実に致命傷は避けられないだろう。そう思わせるだけの気迫が男にはあった。覚悟を決めなくては。


瞬時、俺は右目に意識を集中させる。瞳は色形を変え、深紅の五芒星がその目にやどる。体中の血がわき返り、肉体が活性化するのを感じる。気のせいかゆっくりと時が流れるように思えた。


全身の神経を研ぎ澄ます。すると、ちょうど右目の死角あたりに黒いモヤがあらわれる。と同時に顔の上から首の方、手のひらから肩へと向かって黒く太い線が走っていく。向かう先は心臓へむかって。力には代償

が伴う。強い異能の力は術者の精神、魂を大きく削るのだ。心臓に黒線が到達したとき俺は死ぬ。その前に決着を付けなくては。


死角に現れた黒く大きな穴のなかに黒く覆われつつある右腕を俺は勢いよく突っ込んだ。すると、投擲

態勢に入っていた槍使いに左側、俺から見て右側の何もない空間から禍々しいまでに巨大な|腕《かい

な》が出現する。


異形の生物の姿を想起させるそれは槍使いの腹をがっしりとつかむ。ミシミシと木のきしむような音にあわせ、握りつぶされようとする槍使いのうめきがあたりに響く。ここからは時間との勝負だ。


一人を拘束した俺はもう一人の男の方へ視線をむける。するとさっきまで瞑想するかのように目をとじていた男のひとみがゆっくりと開き、こちらを見据える。


「そんな馬鹿な、ありえない、・・しかしあの()、・・それにこの異形のうで・・間違いない・・この男」

独りごちるような男の声は小さくてよく聞きとれない。やがて意をけっしたかのように重い口をひらいた。


「少年よ、ひとつ取引きをしよう」


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