第3話:「胎動③」
「我々はある依頼を受けてここにいる」
「依頼?」
「ここラーンの町で騒ぎを起こせとな」
「依頼主は誰だ?」
「さあな、オレも詳しくは知らん。他の奴らもそうであろうよ。・・ただ、恰好から察するに教団関係者・・だと思う」
アストレア教は帝国領内で広く信仰され、帝室ともつながりが深い。いうなれば特権化しているのであって、軍部もなかなか手出しがしずらい。教団か。なるほどな。平時より黒い噂の絶えない教団なら十分にあり得る。だとすれば問題は・・
「もおいいだろ、知ってることは全部はなした、とっとと殺せ」
思索に耽る俺の思考は弓使いの嘆願によって遮られた。まずはこいつらを何とかしないとな。
「アイズ」
短い問いだったが意図を察したアイズはすぐに俺のとなりへとやってくる。俺は刀を鞘に納めながら、
「こいつと、後はそいつ、二人の治療をしてやれ。もちろん拘束も忘れずにな」
「カイザー、あなたは」
「俺は聖堂へと向かう。此度の一件、震源地はどうやらそこらしい。まぁ、彼らの言を信じるのであれば、だが」
「殺さないのか」と言う弓使いの方には目もくれず、立ち止って微動だにしない一団へと俺は水を向ける。目の前の光景が受け入れられないという彼らの瞳は、一瞬だが俺をいらだたせる。本当にふざけないでほしい。
「シン、それにレン、お前らはほかの部隊と合流しろ。一秒でも早くだ。わかったか。それとな、よく聞け、仲間を死なせたくないと思うなら敵を斬れ。いいな」