第1話:「胎動」
ラーンにて反乱の兆しあり。
報告を受けた俺たちは急ぎ、現場へと向かう。その数100。手に負えない事態であれば、援軍が来ることになっている。卒業を控えているとはいえ俺たちはまだ軍人ではない。割り当てられた仕事は比較的軽いと思われた。
いくつかの部隊にわかれ町を捜索する。折り悪く、俺たちの部隊が敵に遭遇した。その数三名。皆黒のマントを羽織っており背中には十字に剣の文様。革命軍のあかしだ。
隣をみやれば、シンは剣を持つ手が震えている。ほかの連中も同様だ。やはり実戦は違うようだ。
「なんだ、まだ子供じゃないか、」
敵の一人が剣を持ち、俺たちに歩み寄る。後ろの一人は弓を番え、もう一人はなにやらつぶやいている。魔法の詠唱だろう。
「この程度おれ一人で十分だ」
男が後ろを振り返ったその刹那、俺は男との距離を詰め、懐に入り込み、手にもつ刀で男を切り裂く。倒れこむ男に、視界はひらけ、俺は勢いそのまま突進する。と、その横顔を弓矢がかすめた。
まずは弓使いの腕を切り飛ばし、その足で魔法使いの心臓をひと突き。洗練された無駄のない動きに敵はなすすべがなかったようだ。まだ敵はいないかと周囲を見渡すと、視界の端に同期たちをとらえる。アイズをのぞいて、皆一様に怖気が走ったように体が硬直しているみたいだ。そのまるで人殺しを見るような視線には違和感を覚える。
「・・・おい」
金縛りから一番先に開放されたレンが、俺に声をかけるが、俺はそれに取り合わない。任務は未だおわっていない。