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49 肖像画?違うよホス看






 ――祭り本番7日前。


 二人の画家――アウレリウスとマヌエラから、注文していたホスト看板ができたと聞いて、急遽会議室でお披露目会をすることになった。


 会議室に入ると、でかい絵が二枚、布がかかって並んでいる。


「お待たせしました。ユーリ殿下のホスト看板、完成です!」


 声を張ったのは、画家アウレリウス。

 となりにはおなじみの狂気画家、マヌエラさん。


 二人してやたら満足げな顔をしてる。これは……なんか……ヤバいやつの予感。めっちゃドキドキしてきた。


 部屋には画家二人とオレ、アマーリエとクライヴ。そして何故かいるガルナード伯。


 ……誰が呼んだんだ?


「なんでガルナード伯がいるの?」

「チェックだ。前の所業を忘れたわけではあるまいな?」


 前に半裸の肖像画をお嬢さんに見せちゃったからな……

 そりゃ監視もつくわ。


「では、不肖アウレリウスより参ります」


 アウレリウスが布をゆっくりと外す。


 ――現れたのは、王冠をかぶり、マントを羽織った白スーツ姿のオレ。豪奢な椅子に片肘をついて座り、決め顔でこちらを見据えている。


 光も影も絶妙で、背景の重厚な色使いも文句なし。


「おー……いい感じじゃーん!」


 こんな豪華なホスト看板ないぞー。


 あとは仕上げに金箔めっちゃ散らして、文字入れるだけだな。


 でもこの油彩画に文字を入れるって、なんかめっちゃ芸術を冒涜しているような気がしてくるな。いやいやこれは肖像画じゃなくてホスト看板。


 ……にしてもこれ、グッズ展開しても売れそうな気がする。そんなパワーを感じる。


 やっぱ、あの企画進めるか。

 オレの肖像画の複製のブラインド販売。中身が見えないようにして売るやつ。

 祭りの記念に一枚~とか売り込むの。当たりは直筆サイン入り、とか。


「何たるふてぶてしさ……だがこれがあなたらしさか」


 隣のガルナード伯がぼそっと呟いた。

 え、まさか褒めてくれてる……? だよな? だよな?? よーし、伯爵も認めた!


「それでは、私の方の作品を」


 マヌエラさんが、満面の笑みで二枚目の布に手をかけた。


 ――嫌な予感しかしない。


 しかし、止める暇もなく布がふわりと舞い上がる。


「「ぎゃああああぁぁ?!」」


 オレとガルナード伯と悲鳴が重なる。重なりもするわ!


 なんで全裸なんだよ?! そういや会議中「全裸に決まっています!」とか宣言してたけど、実行してんじゃねーよ!!

 いや完全に全裸じゃないけど! マントと腰に布と王冠はしてるけど!!


 そしてめっちゃいい顔してる!!


 黄金の光を背に、微笑む顔は自信満々。

 筋肉の描写が妙にリアルすぎる。影の落とし方がえろすぎる。直視できない。


 その絵面、どう見ても光の変態。ド変態王子。


「落ち着いてください。まだ途中ですので」

「あ……これから服描くんだな……?」


 キミ、身体部分に肌色を乗せてから服を描くタイプ?


「いえ、服は描きません」

「何言ってんの?! これじゃ裸の王子様じゃん!! 超えちゃいけないライン考えて?!」

「むしろこの腰布を取りたいのですが」

「絶対だめぇぇぇぇ!!」


 アウト寄りのアウトから一発退場レッドカードになっちゃう!!


「ユーリ王子、きさまぁぁぁぁ!!」


 ガルナード伯爵が顔を真っ赤にして迫ってくる。助けてクライヴ。


「なんでオレが怒られてんの?! オレ被害者!! 想像で変態にされてる被害者!!」


 まさに芸術が爆発してる。この暴走特急、マジで誰か止めてくれ。


「――マヌエラさん、これはさすがにいけません」


 出た! 風紀委員の擬人化!!

 さすがアマーリエ。と、オレが安堵しかけたそのときだった。


「ですがこれは正しく芸術……わたくしが個人的に保管します」

「ちょ、ちょっと待って!? 保存すんな! 誰にも見せるな! 火ぃつけてくれ!!」


 思考が追いつかない。なんでそんな堂々と保存宣言すんの!?


「ご安心ください。わたくしも公の場に出すつもりはありません……」

「なら何に使う気だよ?!」


 問い詰めるオレに、アマーリエはほんの少しだけ唇を緩めて――


「……秘密です」


 ひぃっ。


 乙女の秘密、怖!!


 助けを求めて周囲を見渡したそのとき、にゅっと背後からチルチルが現れた。


「部屋に飾るんだよねー?」

「きゃああああ?! チ、チルチルさん、何を――」


 アマーリエ、顔を真っ赤にして慌ててチルチルの口をふさごうとする。

 チルチルはひらひらそれをかわしながら、オレのところにやってきた。


「マイクの納品だよー」


 そう笑って肩にかけていたカバンからいろいろごそごそ出してくる。


「こっちが入力用魔道具、こっちが出力用魔道具」


 入力、出力、なるほど……って、これ、めっちゃ本格的じゃん!

 入力用魔道具はまさにマイクって感じ。

 出力用は完全にスピーカー。


「スイッチを入れて話しかけると、こっちから増幅された音が出るよ」

「最高かよ!」


 すげー、異世界でマイクとスピーカー再現できちゃってるよ。


「集音レベルの調整はこれね。最大感度だとひそひそ話も拾っちゃうよ」


 うわー、技術力高すぎて怖えー

 もうシャンパンマウンテン捧げたいレベル。


 すげえな。これで衣装、ホス看、マイク、パレード準備が整ったってことか……


 どんな祭りになるか、楽しみになってきた。




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