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【書籍化】ホストが異世界の聖王子に転生したら、意外と適性があった件〜現代知識とチート級神聖術で何故か王様になりそうです  作者: 朝月アサ


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42/55

42 ホスト看板つくるよー





 ――ホス看。ホスト看板。それは歓楽街の華。顔面布告の旗。迷えるお姫様を導く星。


「――つまり、黙ってても二十四時間顔を売ってくれる営業広告ツールだ。今日はその会議をする」


 会議室に集まったのはオレ、アマーリエ、クライヴ、画家1アウレリウス、画家2マヌエラ、詐欺師もとい口上師もとい広報担当ベルモンド。


 オレは自分で描いたでっかいラフを前の壁に貼る。


「これが叩き台な。もちろん油彩画でやる。でっかく描いて遠くからでも見えるようにする。んじゃ、とにかく思いつくこと言ってみてくれ」


 ざっくりとシルエットと注釈をつけてある。

 もちろん真ん中にオレの姿。バックは黒。夜桜とかめっちゃ散らす。金箔も散らす。キラッキラにする。


 そしてキャッチコピー。


『ナンバーワンホスト』

『一晩100万ルクスOVER』


「おお、これは正しく芸術と商業の融合……新たな時代を開く扉となりましょう」


 画家アウレリウスが感心したように唸る。

 最初に挙手したのは、アマーリエだった。


「ユーリ様、とても斬新な趣向だと思いますが……ナンバーワンとは何を根拠に?」

「え、いや、売上とか指名数とか?」

「『100万ルクスOVER』もそうですが、そういう数字でアピールするのはいかがなものかと」

「いやいや、数字は安心感の元。こんなに指名されてるなら推して間違いないよ~って感じでの、親切だよ」


 買い物してるとき「いま売れてます!」って書かれてたらちょっと気になるだろ? ああいうの。


「そのために盛って盛って盛りまくらないとな」

「それでは誇大広告になりかねません!」

「……いや、看板なんて煽ってナンボだろ?」

「不健全です! 射幸心を煽る表現は慎むべきです!!」


 なにこいつ。警察? 風営法の擬人化? 異世界だよな、ここ。


「数字を盛って何がダメ? 誰が損するんだよ?」

「損得ではなく、倫理の問題です! ただでさえ厳しい視線を向けられる街なのです。だからこそ、わたくしたちは清廉で真摯でなければなりません!」


 ぐぅぅ……ぐうの音も出ない!

 誰こいつ呼んだの。オレだわ。


「じゃ……じゃあ、『この輝き、神の奇跡』! 『今夜は君だけの聖王子』! 『今夜はキミがお姫様』!! これなら煽ってない! 事実!」


 だって「神の奇跡」はまごうことなき事実だし、「君だけの聖王子」は指名を暗に促しつつも、ふわふわな愛の言葉。


「……『君だけの』が問題です。『神の奇跡』は事実ですが、『その夜は独占的に聖王子を得られる』という誤認を招く表現では?」

「だって本当のことだろ! オレ、今夜はキミだけの聖王子やるつもりでいるし! ただの聖なる自己PRだから! 本人が本当にできることを書くのは問題ないよな?」

「う、ううう……」


 よし、反論できてない。


 ベルモンドが優雅に挙手する。


「――ならば、シエル殿は『その微笑み、すべての夜を奪う』などはいかがでしょう」

「お、ベルモンド。最っ高だなお前。シエルの笑顔は最強だからな。なあ、アマーリエ?」

「……そうですね」


 よし、アマーリエ規制突破。


「ですが、すべての夜を奪う……というのは若干意味不明では? 夜を奪うのは現実的に不可能ですし、奪われると生活が困りますし……」

「細かいことはいいんだよ! 魂で感じろ!」


 めちゃくちゃだからむしろ刺さる! 正しさだけじゃ夜の世界は生き抜けない!


「じゃあ次、ファッションな。何着る? いっそのこと半裸にする?」

「ダメですーーーー! は、破廉恥です!!」

「冗談冗談」


 場をあっためるアイスブレイク的なもん。


「男は着こんでる方が受けがいいしな」

「……どこのリサーチですか、それ」

「どこだったかなぁ~」


 すっとぼける。現代日本なんて言えねぇよ。

 その時、画家のマヌエラが勢い良く立ち上がった。


「全裸に決まっているでしょう!」

「さすがにそれはヤバすぎる!!」

「ご安心ください。想像で描きますから」

「やだ!!!!」


 思わず身体と服をがっしり握って後ずさる。

 勝手にオレの半裸を描いたエロ画家だ。こいつなら本当にやりかねない。


「絶対にいけません! 猥褻物陳列罪です!」


 アマーリエが叫びながら立ち上がる。


「ちょっと待って?! 陳列してねーし!! それに、どっちかって言えば公然わいせつ罪だろ?」


 そもそもここ異世界だよな? な? なんで現代日本の罪の名前が出てくるの? 誰か法律関係者が異世界転生してる?


「そうですね……ユーリ王子は王族ですので、おそらく冒涜罪になりますね……」


 あ、オレ王子だったわ。設定忘れかけてた。


 ――その時、ずっと黙っていたクライヴが静かに口を開く。


「軍用儀礼服が最適化と」

「それだとただの肖像画だろ?!」


 そりゃ軍服好きなお嬢様めちゃくちゃ多いけどさ。着こんでるのかっこいいけどさ。

 軍人募集! なノリになっちゃわない?


「……やっぱ白スーツにするか……?」


 ホストのド定番。

 けどそれだとオレって特別感がないよな。

 せっかく王子なんだから。


「白スーツで、王様みたいなふわっふわで豪華なマントを肩にかけて、王冠をかぶるのとか、なんだか唯一無二っぽくない?」


 王子様でホストってのがビジュアルで伝わる。もう最強。

 その瞬間、アマーリエが真剣な顔になった。


「王冠……ですか。王子は戴冠されていないので正式なものは使えませんが、略式のもの……いえ、演出用のものならば! 作りましょう。ええ、作りましょう。ユーリ様の王冠。わたくしにお任せください」


 アマーリエ、めっちゃノリノリじゃん。

 って、マジで王冠作るの? 看板でだけの演出のつもりだったんだけど。


「だってこれからも使うことになるでしょうし。ふふっ……ユーリ様に、わたくしの作った王冠が……」


 うおお、課金される。めっちゃ課金される予感。


「いや嬉しいけど、王冠って高そうだし……」

「ご安心ください。わたくしの個人資産から出しますので」


 課金されるぅぅ。いやいやお前、オレの肖像画だって自分の個人資産から出してたよな。


「それって大丈夫なの……?」

「はい。ちゃんと投資も回収もしていますから。ユーリ様にはお金の心配をせずに、好きなことをしてください」


 うわああああああ! しごでき侯爵令嬢!! 今度めっちゃ肩揉むわ。


 まーそんなこんなで王冠とマント作成とホスト看板作成がほぼ同時進行で始まることになった。マジか。





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