表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/27

大江山の鬼達

天文14年(1545年) 11月 

丹波国 氷上郡、多紀郡の境界付近


「ええ、我ら大江山衆三百名、貴方様にお雇いしてもらいたく存じます…」


その声は、まるで感情の籠っていないようだった…


「おいおいちょっと待て。いきなり雇えと言われても…まず、お前達の話を聞きたい。話はそれからだ」


そう言うと


「はっ…されば聞いてくだされ」


と返し、その声は滔々と話し始めた…


「まず、千熊丸様は酒呑童子はご存知ですか?」


酒呑童子…この丹波にある大江山を拠点にして京で暴れてた鬼だ…となると大江山衆ってのはやっぱりそこから来てるのか…


「うむ、もちろん知っておるが」


そう言うと今度は少し嬉しそうな声で


「我らはその酒呑童子と郎党の末裔にございます」


と言ってきた。鬼の末裔?酒呑童子は人だったのか?そういえばどっかで酒呑童子は丹後に漂着したシュタイン・ドッチとかいうドイツ人が由来とかいう変な説を聞いたことがあったな…


「ほう?では酒呑童子は人であったと?」


俺は気になって聞いてみると


「はい。京の雀共は酒呑童子を鬼と言っておりますが実際はただの人に御座います。ただし、背丈が七尺あったという話が伝わっております」


七尺…大体210センチか…確かに平安時代にそんな大男がいたら鬼と勘違いされても仕方ないな…


「そんな酒呑童子ですが、源頼光公に討伐された後、我らは一時衰えます…」


源頼光…その単語を言う時だけすごい声が暗くなったな…おそらく一族の間でトラウマになってるんだろう…


「ほう?それでその後は?」


「その後は六波羅探題の北条様に仕えておりましたが、等持院様(足利尊氏)の挙兵により我らも等持院様の家臣であった高師直様に仕え、重用されたのですが、観応の擾乱の折に高一族が族滅の憂き目に遭い、更にその後は丹波守護であった仁木氏に仕えたのですが、その仁木氏も専横が仇となり…」


うわぁ…すごいハードモードな一族だな…


「故に、我らは今度こそ良い主人に雇ってもらいたいのです…」


なるほどな……あれ?それじゃあ俺じゃなくて良くない?筑後守の叔父上の方が絶対良いと思うんだが…


そう尋ねてみたら…


「いえ、あの方は既に忍びを雇っているので…」


ああ、そりゃそうか…松永久秀も忍びを使ってたし…


うん…結論が決まった…


「よし、わかった……お前達を雇うことはできない」


「えっ!?」


今度はめちゃくちゃ驚きを含んだ声が聞こえた…話を最後まで聞いてほしいな…


「話を最後まで聞け、俺は『雇わない』と言ったのだ」


「と、言いますと?」


そう言いながらも、薄々気づいてそうだな。俺が何を言いたいのか…


「お前達、俺に雇われるのではなく仕えないか?禄は…八千石でどうだ?」


八千石…俺の領地の約二割だ。流石にこれ以上は無理。突っぱねられたら潔く諦めるしか…


そんなことを考えようとしたら、突然啜り泣く声が聞こえ始めた…


「どっ…如何した!?やはり八千石では不足か?」


俺は焦ってその()に聞いた…


「…いいえ、むしろ多過ぎる程に御座います…」


あ…嬉し泣きだったのね…


「では、仕えてくれるということで良いのだな?」


俺は今度は焦らず、そう聞いた…


「っ……はっ!喜んで!我ら一同、貴方様に仕えさせていただきます!」


ふぅ…なんとか仕えてくれたな…


「されば顔を見せてくれ、覚えておかなければならんからな」


「…はっ…然らば失礼いたします…」


そう言うと同時に、いきなり後ろの陣幕が捲れ、人が入ってきた。声は前からしてたと思ったんだが…


そうして入ってきたのは丈が短い黒の小袖を着た女、それも面頬をしてるのと夜なのもあってよく顔が見えないが、見えた目元とその体型から、かなりの美人だと言うことなのは分かった。歳は十代後半から二十代前半ってところか…


「ところでお主、名は何と謂う?」


「…酒上天子(さかがみそらこ)と申します」


「そうか、天子、これからよろしく頼むぞ」


俺が笑顔でそう言うと、天子は面頬の上からでも分かるほど顔を赤くしながら


「はっ!よろしくお願いします!」


と応えてくれた。にしても遂に我が家にも忍者が…とりあえず氏綱達に紹介しないとな…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
便利よなw高兄弟w
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ